幸せな牛からおいしい牛乳

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著者 : 中洞正
  • コモンズ (2007年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861870309

幸せな牛からおいしい牛乳の感想・レビュー・書評

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  • 私は23歳の頃10日間、京都の酪農家にホームステイしていました。
    130頭程を牛舎で飼う酪農家さんでした。
    滞在中は毎日酪農を実習させていただき、大変お世話になりました。
    この家には私と同世代の息子さんがいました。

    ある晩、牛舎の屋根に登り夜空を眺めながら、
    未熟な二人で酪農についての想いを語るとなしに語らったものです。
    その時の彼の言葉が今でも忘れられません。
    “俺たちの牛乳を、頼むから安売りしないでくれ”
    僅か10日の実習でしたが、朝から晩まで毎日休みなく働く酪農の大変さは
    身に染みていました。だからとても重い言葉でした。

    岩手の酪農家の中洞さんが書いたこの本からも同じ思いを感じました。
    乳業に携わる者として日本の酪農業のあり方について改めて考えました。

    現在主流で量販されている牛乳は、次のような牛乳です。
    散歩以外1日のほとんどを牛舎で過し、
    乳脂肪分が高くなるトウモロコシ、小麦、大豆粕など輸入モノの濃厚飼料を食べさせ、
    殺菌能力は高い替りに130度の超高温で殺菌された牛乳。
    値段は紙パック1リットル1本170円前後。

    一方、中洞さんが生産、推奨する牛乳とは、次のような牛乳です。
    牛本来のライフスタイルに最も近い自然放牧で牛を飼い、
    輸入飼料ではない牧場に自生する牧草を食べさせ、
    生乳本来の風味・組織を損なわないノンホモ・低温殺菌で製造した牛乳。
    味は上質のケーキを食べた後のようなフレバーとスッキリした甘さ。
    値段はビン詰め1リットル換算1本1,000円(製品は720ml720円)。

    それぞれ消費者にとって好ましい点好ましくない点がありますが、
    中洞さんは、自然の酪農から離れた今のあり方はなくせと言います。
    日本の国土条件に見合った山地酪農、自然放牧で育成・搾乳し、
    少量生産、適性売価(高価)で販売すべきだと主張されます。
    そうでなければ日本に酪農はなくてもよいとさえ言っています。

    私は両方あってよいと思います。
    中洞さんの主張も牛乳も素晴らしいし、実践されていることは本当に凄いと思います。
    でも720ml1本720円の牛乳では飲みたくても買えない人が出てきます。

    牛乳はカルシウムだけでなく、成長に必要なビタミン、ミネラルといった栄養素が
    消化吸収しやすい形で含まれており、“完全栄養食品”と呼ばれています。
    こんなに栄養豊富な食品を、お金持でなくても、全国どこに住んでいても、
    誰もがみんな手に入れることができる世界は素晴らしい世界だと思います。

    ただ酪農家、乳業メーカー、量販店の全てが無理をして実現させている価格なので、
    もう少し値段を上げないと今の酪農業界は成り立たないとは思っています。

    中洞さんの牛乳があって、今の牛乳があって、更に新しい価値観の牛乳が出てくる…。
    選択肢が拡がることは購入者にとっても、業界にとっても良いことです。
    この本を読んで、今の仕事の意義を改めて考える、いいきっかけになりました。

  • 進路支援図書「はたらく人びと」
    2009/7/8更新 010号 紹介図書
    http://www.nvlu.ac.jp/library/workers/workers-010.html/

  • 酪農の本来あるべき姿と、そうでない現状についてわかりました。

    印象に残ったところを何点かピックアップ。
    ・現在日本に出回っているほとんどが、牛舎に閉じ込められた不健康な牛から搾られている。
    ・日本で牛乳が一般的に飲まれるようになったのは高々数十年前から。
    ・自然放牧している牧場はごく少数で、CMのような広い草原にいる牛の姿はイメージづくりのもの。(実際は牛舎内の不健康な牛からとれた牛乳)
    ・そもそも日本に酪農は無かったのだから、自然放牧できないくらいなら日本でやらなくてよい。
    ・現在手つかずの山地を放牧に使用すればよい。

    確かに言われてみると、おいしい牛乳ってあんまり飲んだ記憶がありません。

  • 現在の日本で行われている酪農の異常性が一冊の本を通して(特に1章で重点的に)記されている。そこからは筆者の強い憤りを感じる。
    それと反対に、中洞牧場で実践している自然放牧酪農がいかに、本来のあるべき酪農の姿であるかも分かる。
    また、自然放牧酪農が牛のためだけでなく、日本の森林荒廃なども防ぐ多面的な効果を果たすことも述べられている。
    日本の酪農が、生産性重視の牛を使った牛乳生産工業から、小規模の有機的な酪農という道も選択肢に入れてみるべきだと感じた。

  • 岩泉町で山地酪農をやっている中洞さんが、山地酪農と日本の牛乳の裏側を取り上げた本。
    この本を読むまでは、日本の"不自然な"酪農業界に対してのアンチテーゼ的な存在としての山地酪農という側面を知らなかったです。現在の日本の酪農に関しては、いろいろ農協やらが関わってくるのですが、そちらの方はおそらく新書『黒い牛乳』にもっと書かれていると思うので、そちらの方も読んでみたいです。

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