■太極拳はなぜゆっくり動く?
ゆっくり動くことが武術としても、健康法としても重要
ゆっくりできてこその上級者、初心者は速くなってしまう
・緊張筋
速く動く時と、ゆっくり動く時では使う筋肉が違う
①相性筋
速く動く時の筋肉、白筋とも言う
トレーニングして肥大化する
速い動きや瞬発力を必要とする動きに使われる
②緊張筋
ゆっくり動く時の筋肉、赤筋とも言う
太極拳ではこちらを重視してトレーニングする
抗重力筋とも言い、重力の働きに対して姿勢を保つ筋肉
曲芸師のように絶妙なバランスを可能にする
鍛えても肥大化しないが、使わないと筋繊維が減ってしまう
しばらく入院していると立てなくなるのはこのため
無意識で動くのが緊張筋、火事場の馬鹿力
太極拳はゆっくり動くことで緊張筋を鍛え、
微細なバランス感覚といざという時のパワーを養うことができる
■手足の虚実
実の足:体重が乗っている足
虚の足:体重が乗っていない足
実の手:実の足と反対側の手
虚の手:虚の足と反対側の手
重心が右足にある時、
実の足は右足となり、虚の手は左手となる
虚の手はバランスをとるために身体からやや離す
■中腰姿勢
太極拳の動作はほぼすべてが中腰姿勢
中腰の姿勢が人体にとって自然な姿勢
腰を"曲げる"ではなく、"たわめる"ことが大切
立位では背骨は自然なカーブを描いている
これは頭の脳に振動を伝えないクッションの働きをしている
人間は直立することで、背骨をカーブさせ、
このことが首のこり、呼吸や心臓への悪影響、腰痛をもたらしている
背骨がカーブしていると、太極拳に必要な背骨の強さが得られない
中腰姿勢をマスターするには、背骨のカーブを消すこと
・たんとうこう(無極しょう(木へんに庄))
背骨のカーブは背骨の緩み、動き出す準備ができていない
たんとうこうの姿勢の「きょれいちょうけい」
頭頂を軽く引き上げ、軽くあごを引く、首の後ろを伸ばす
尾骨の先に重りがついていて、背骨が垂れ下がる意識
会陰を引き上げ、腹直部を引き締め、足の指先を全部持ち上げる
すると重心が後ろに移動する、それから指をつける
両手でボールをかかえるようにして、中腰姿勢になる
これが気孔の出発点でもある
たんとうこうの姿勢は胎児が母親のお腹の中にいる姿勢と同じ
外界の気が体内にチャージされる
■天の中心軸、地の中心軸
人体の中心軸は身体を貫く地の中心軸。正中線、センターとも言う
身体のすぐ前に伸びる垂直線を天の中心軸
地の中心軸と、天の中心軸を分けることにより、
背骨全体が弓を引き絞った状態になり、腰に力がチャージされる
その腰から太極拳の動作はスタートする
■左右対称でない動き
太極拳の動作は左右で違った動きをする
これは人間の身体上の構造に由来する
人間は左足に体重を乗せて立つことが多い
そのため太極拳では逆に右足に体重を乗せることでバランスを調整する
■太極拳の呼吸法
腹式呼吸と逆腹式呼吸
逆腹式は腹をふくらませるのが通常と逆
太極拳の呼吸は逆腹式呼吸で行うとうまくいく
さらに完全腹式呼吸で肺の機能を最大限に引き出せる
呼吸筋の働きがよくなり、気が全身に巡ってくる
■鶴と蛇
太極拳の動作にはすべて名前がついており、鶴と蛇が登場する
鶴と蛇の争いから太極拳ができたとの伝承あり
鶴とは手足を広げた翼のような両手の動きのこと
蛇とは?
太極拳の動きは蛇が獲物に絡みつくように全身をリズミカルい、
不思議な揺らぎで波打たせる
ゆっくりとした波をめぐらせると真綿で包むようなやわらかな動きに、
瞬時にめぐらせると発ケイという爆発力となる
発ケイを身につけると、動きは自然とゆっくりになる
速いスピードで使い続けると、
そのパワーが脳と身体に負担をかけてしまう
■太極拳の練習は何のため?
「陰陽開合の理を悟るため」と老師曰く
兼子さんは背骨のカーブを取り戻すと言っているが?