ワンダーワード: 柴崎友香漫画家対談・エッセイ集

著者 :
  • 小池書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862253071

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  • 柴崎友香がインタビュアーを務めている対談集を読みながら、結局はインタビューを受ける側の人の方ではなくてインタビューをしている彼女の発言の方が気になっている自分に気付いて、あらあら、と思う。改めて柴崎友香を気に入っていることを思い知らされる。まあだからこそこの本を手に取っている訳ではあるけれども。

    くらもちふさこを除けばインタビューの相手となっている漫画家は誰一人として自分の中で認識できない。どんな絵を描くのかイメージも、もちろんできない。漫画はそれ程きちんと読んでいる訳ではないけれどやっぱり絵から入る方である。だからちょっともどかしい。その代表作の一コマが紹介されていればとも思うのだが、きっとそんな必要の無い位有名な人々なんだろうとも思う(例えばくらもちふさこの漫画が一コマすら紹介されていないっていうのは自分でもその必要性のなさがわかる)。

    それでも面白く対談を読めてしまうのは、インタビューされる漫画家たちに影響を与えたという世代の漫画を辛うじてイメージできるからかも知れない。その人たちが自分の中でその漫画をどう解釈しているのかを知るのは、単純に面白い。まあ、あるいは柴崎友香の発する疑問に余りにも柴崎友香色が濃くのっているのが嬉しくて面白いと勘違いしてしまうだけなのかも知れないけれど。

    対談のおまけのようなものも充実している(そこがまた少女漫画雑誌のようであるけれど)。例えばタバゾー氏とのコラボレーションは「いつか、僕らの途中で」で既にお馴染みではあったけれど、「いつか」がエッセイ風であったのに対して、柴崎友香が漫画を描いてみたいという思いだったというこの収録作は、圧倒的に物語風である。そして漫画的であるところが実は新鮮。柴崎友香の小説を「動かしたら」(と言っても漫画だから映画のように本当に動く訳ではないけれど、かといって「きょうのできごと」のように行定作品になってしまうとそれはそれで柴崎友香から少し断絶し独立した作品という印象になるので映像にすることで柴崎友香の小説が動いたというような気には余りならないのだ)こうなるんだろうなあ、という作品である。しかも発表された時の媒体が特殊だったのでお目に掛かることはないのかなと覚悟していただけに単純に嬉しさ倍増。

    でもこの本の中で一番嬉しくなったのは「りぼん」をめぐるガールズトーク(若干、男子一名を含む)の章である。自分がりぼんを読んでいた最大の理由は清原なつのを読みたかったからなのだが、当然ガールズの語る漫画もイメージくらいはできる(本当は一世代違う筈なんだけど、彼女らが小学生で読んでいた時に高校生で読んでいたのでシンクロする部分も結構あり)。但し彼女らが熱くなるポイントは自分の熱くなるポイントとずれていたんだなあ(清原なつののコアなファンには男子が多いとも言うし)、と読んでいる内に気付いて、少しさみしくなる。ああ、どうやら彼女らは清原なつのについては語らずに終わるんだなあ、と思ったせつな、最後の最後で柴崎友香が、でも今になって気になるのは清原なつの、という発言があり、そう!そうでしょう、やっぱり!と何がそうなのか全く意味の通じない一人相槌を激しく打つことになる。

    やっぱりね、柴崎さん、あなたなら清原さんを好きになると思っていましたよ、って好きだとは言っていないんだけれども、どうしてもそう伝えたい気持ちになった。ヘンな読みですね、まったく。

著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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