- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862380241
作品紹介・あらすじ
江戸時代の有閑マダム、豪商の内儀三井清野は、羽州・鶴岡から日光、江戸、伊勢、京都、大坂、そして故郷へ、総距離二三四〇キロ、総日程一〇八日の大旅行を敢行している。江戸藩邸の見学遊郭見物関所抜け買い物三昧…そのゴージャスでスリリングな「大観光グルメ旅行」を、遺された旅日記をもとに解読、追体験する。清野さんとともに、だんだんと山を越え峠を下ってみよう。
感想・レビュー・書評
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えーと、今風にいうと
〈セレブなマダム清野の日本グルメ旅〉か?
山形・鶴岡の豪商の娘、三井清野さん、31歳。
娘婿をもらって子供も手を離れ
さてお伊勢参りでもしようかしらん…と
3月23日から7月11日まで108日間
山形→日光→江戸→伊勢→京都→彦根→新潟→山形と
途中、善光寺にまで立ち寄って
約2,352kmの旅に出たのでした。
江戸時代なので、さすがに一人旅とはいかず
奉公人二人を伴ってはいるものの
結構きままに観光してるなぁ!
清野さんが書いた原文だけではわかりにくいので
著者が読み下したものと
当時の風習などもあわせて書いてくれてます。
中でもおもしろいのは
珍しく女性の手になる旅行記ということ。
男性が書いたものは
例えば『東海道中膝栗毛』風なものがあるらしいが
視点が違ってて、史料としても良いそうですよ。
(女性が通過しにくかった関所を超える
裏手口とか載ってんの)
特に清野さんったら
グルメでファッションに敏感な人だったらしく
旅先で「あれがおいしい」「これが食べたい」とか
やれ「どこそこの遊女の髪型がすごい」
「着物がハデだ」なーんて、かなり書きたい放題。
世が世なら、女流エッセイストになっていたかもね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今回の旅日記は
鶴岡の豪商の跡取り娘『三井清野(きよの)さん』
1代目が伊勢から鶴岡に住まいを写し,豪商となる。
三井姓は、松阪の豪商三井家にあやかってか?!
娘や息子が大きく成長し,手がかからなくなり
婿であり、店主の夫『四郎兵衛』が25歳の時,
同じように124日間かけて,旅をして良かったことを
勧められ、旅に出た。
コースは,鶴岡〜日光〜江戸〜東海道〜伊勢〜奈良大阪京都、
〜北国路〜鶴岡
普通に旅すれば68日間ほどで,できるが
清野たちは、108日間六百里というゆっくりした旅。
もちろん女一人では旅はできない、
家柄も同等で旅慣れた『部吉さま』と
荷物持ちの下僕『八郎治』
鶴岡に育っている清野は方言もつよく、
しばしば日記の中の言葉も訛りがある。
三井家は相当な豪商だったらしく、
日記に全てとは言わないが,家計簿のように、
経費を物と価格を記してある。
江戸や大阪,京都では買い物も多くしている。
そして,多くなった持ち物は、都度に家や
次に止まる旅籠に送っている。
こうしたことも、便利と引き換えに財力が
あるものでないと、できない。
また清野の日記の面白いことは
その好奇心!
女でありながら、トイレが付いていない
船旅を決行したり、
関所破りをしたり、
吉原などにも出向いている。
三井家は鶴岡藩にかなり財力で貢献してるらしく、
江戸に出ているときは江戸藩邸の内部まで
わざわざ人をつけて,招待されてもいる。
何にでも好奇心があり,健啖家でもあったようで
場所場所の名物なども食べている。
美味しいものには目がないようで、
多少高くても,そこでしか味わえないものをしっかり経験!
現代までも残っているようなものも多く、
実に面白い旅日記となっている。 -
山形 鶴岡の豪商の妻 三井清野(30歳) が金にあかして 江戸の旅。
日光→江戸→東海道→伊勢詣り→大阪→京都→北陸と2340キロ 108日のお供二人を連れた物見遊山。
買い物し放題だし、女郎屋にも行くし、江戸時代でも女性が時代を謳歌していたという証拠です。 -
きよのさんが豪放磊落な人なので一緒に旅をしてて楽しかったです。お金にけちけちせず、江戸時代の旅をとっぷり堪能したいときに。
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江戸時代。山形の商家の奥様が「お伊勢参り」を兼ねて日本をぐるり大旅行しちゃった時の日記を解説付きで読んでみようという本。
地方都市のお金持ちの奥さんの尺度で語られているので、観光はもとよりファッションの話とかお買い物した話とか飲み食いしたものの話とか現代に置き換えても「おばさん旅」って変わらないのかなぁと思いましたね。
それにしてもこんな豪勢な旅はなかなかできないんだろうな。
というか3ヶ月半(108日)も旅に出してくれる旦那っていうのも太っ腹かも。
(旦那本人も何度か行ってるらしいし)
いいよねー、かねもちたび。
↑真意はそこか; -
「入り鉄砲に出おんな」と言われ江戸時代には女性の旅行などもってのほかと言う思い込みがあったが、なんとこの「きよの」さんはお供は連れているものの亭主を家に残してお伊勢参りの旅に出る。手形は一応持ってはいるが、面倒な関所は地元の住民を手先にして裏山の間道などを抜けて関所破りをしている。名所旧跡などを見る目も、美味い物に舌鼓を打つ口も現代人のそれとなんら変わりはない。江戸に対する感覚がかなり変わった。イザベラ・バードが東北を旅した時に村中が見物のために押し寄せて呆れたのは女性だからではなく、外国人だからだったわけだ。