人でなしの経済理論-トレードオフの経済学

  • バジリコ
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862381323

作品紹介・あらすじ

かかる費用とそこで得られる便益をはかりにかけて、意思決定するのがトレードオフの考え方。でもこのトレードオフ、経済方面だけでなく、社会のさまざまな問題についても応用できる。人命の価値は金額に換算するといかほどか?移植用の臓器を強制摘出できるように法律で決めたらそのメリット、デメリットは?HIV検査の普及は逆にエイズの拡大をまねく可能性があるから抑制したほうがいい?…経済学者はときに血も涙もないシミュレーションを試みる。「正しいかまちがっているか」より費用と便益が問題なのだ。よりよい社会政策、行動のための、人でなしの発想から入る費用便益分析入門。

感想・レビュー・書評

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  • 人間の命を経済的に換算した場合どのような行動が経済的に最適なのかモラルを切り離して考えるみたいな話だったかな?

  • 図書館
    挫折

  • あまり読み易くない

  • 原題:Trade-offs: An Introduction to Economic Reasoning and Social Issues
    著者:Harold Winter
    訳者:山形浩生

    【私甩メモ】
     6章では喫煙の費用・便益についての議論が扱われている。著者は案の定(反骨的かつ露悪的スタンスを本書を一貫させているので)、「喫煙の便益が世間や学会では過小評価されている」と述べて〆る。
     しかし本書のこの見方は、経済学の主流見解ではないと思う。喫煙者のアンビバレントな心理(例えば、コストを認識しつつ正当化をしてしまうことな)や不合理な行動(タバコ増税の容認や、買い置きの回避)は既に観察されている。そして行動経済学や健康経済学の分野でも喫煙・禁煙について多くの蓄積がある。
     著者はそれらをまともに参照していないか意図的に無視していると思われる。


    【内容紹介】
    『人でなしの経済理論──トレードオフの経済学』
    定価:1,500円(本体)+税
    ISBN:978-4-86238-132-3
    発売日:2009/4/3
    内容:「経済学者はいかにして人の神経を逆なでするか」

     かかる費用とそこで得られる便益をはかりにかけて、意思決定するのがトレードオフの考え方。でもこのトレードオフ、経済方面だけでなく、社会のさまざまな問題についても応用できる。人命の価値は金額に換算するといかほどか? 移植用の臓器を強制摘出できるように法律で決めたらそのメリット、デメリットは? HIV検査の普及は逆にエイズの拡大をまねく可能性があるから抑制したほうがいい? ……経済学者はときに血も涙もないシミュレーションを試みる。「正しいかまちがっているか」より費用と便益が問題なのだ。よりよい社会政策、行動のための、人でなしの発想から入る費用便益分析入門。訳者・山形浩生による解説も秀逸。
    http://www.basilico.co.jp/book/books/9784862381323.html


    【目次】
    目次 [003]
    はじめに――ぼくのお世界へようこそ [005-009]
    謝辞 [011-013]

    1 社会問題へのアプローチ 015

    2 人命の価値っていかほど? 027
      フォード・ピント
      人命の値打ちはどのくらい?
      希少性
      追加の考察

    3 取引しようか? 045
      細胞売ります
      臓器の強制徴用を合法化したら?

    4 おまえのものはオレのもの 063
      価格づけ入門
      著作権保護:古典的なトレードオフ
      保護なんか必要なの?
      フェアユースは効率的か?
      医薬品と特許

    5 持っているなら吸ってはいかが 087
      孤立した人間
      何をご存じ?
      中毒になる選択
      コマーシャルの功罪
      若き喫煙

    6 人に迷惑をかけないとは? 115
      太陽の季節
      お話にならない人々
      煙が目にしみる(鼻にものどにも)
      早死には三文の得?
      真実をもとめて
      くすぶるまとめ

    7 規制と行動の変化 145
      シートベルトはしないほうが安全?
      太陽がいっぱい
      カナダのホッケー
      子供には安全でも大人には危険
      生兵法はけがのもと
      モラルの悪化
      守勢の医師たち

    8 警告――製品に注意 165
      設計の想定外
      欠陥があるのは仕方ない?
      損害賠償責任を認めないのが最高のルールか?
      警告しましたよね?
      損害賠償は是か非か

    9 解決策などない? 189
      あるのはトレードオフだけ
      私見では?
      敢えて夢を

    訳者あとがき(2009年正月 プノンペンにて 山形浩生) [203-213]
      トレードオフの基礎
      人命の価値――人間は平等か?
      主観的価値と市場価値など
      謝辞その他

  • これぞ経済学という感じ。みんなが当然と感じていることを費用便益分析から覆していくのは個人的には痛快。

  • "トレードオフ”、簡単に言うと”あっちが立つとこっちが立たない”。。。そんな事けっこうありそうですよね。
    ビジネスだけでなく色々な場面を想定できそうです。

  • トレードオフの関係、当たり前だけど、なかなか物の味方を変えて考えるのは難しいかな。どこでバランスを取るかは考え方次第だから、正しい方法は一つとは限らないというか、人によって異なるってことだ。

  • 本書の面白いところは、あるものに対してトレードオフ的な視点で考えるときに、軽妙な語り口を交えたうえで「これはこうだよ」までで費用や便益についての見極めを止めている点で、決して○○はこういう点で良くないから別の選択肢を選ぶべきだ、と押し付けをしていないところ。
    要はあくまでもトレードオフ的な思考のための入門書なのであって、そのための人でなしな思考を身に着けるための訓練をさせてるのが目的なところかなと。
    それは結局、人でなしになれ、ではなくて、あくまで公正な判断を下すためには人でなしな視点からも物事を見る必要があるということ。

    本書を読んでいると、随所に散りばめられたトリックや自分の楽観性も相まって、いかに主観的な判断ばかりで理論的なトレードオフ思考が身についていないかを思い知らされる。

    道徳心をもって市場に臨むための価値基準を設けるためにも、本書により学べることはたくさんありそう。

  • 「解決策などない、あるのはトレードオフだけだ。」

    人の命や健康、愛なんかの
    いわゆる経済学にの題材にしづらい内容や
    いくらなんでもトレードオフの関係はねぇだろうと思われる
    泥棒などの犯罪もトレードオフや損益で語る経済学者は
    確かに人でなしと言われるかもしれない。

    でも、ほら経済学的に言ったらだからね。
    愛しい人アメリカ人が死んだ時にあぁ、5億の損害やとか
    愛しい人ドイツ人が死んだ時にあぁ、2億の損害やとか
    言わないから。多分。

  • 一方を立てると他方が立たずというトレードオフのお話。
    どんなものでもトレードオフがなりたつということで話をしているのだけど、わかってる人には「そうだよね」という話。

    著者であるハロルド・ウィンター氏が「個人的にはどっちでもいい」という意見をしているが、同意できる。経済学的思考だ。
    さらに言うと、このトレードオフの両側の重要度をどう認識するかで立ち位置が変わる。経済学なんてそんなもんだと再認識させてくれる良書。

    できればゲーム理論(囚人のジレンマ)あたりと組み合わせた紹介を一節触れて欲しかった。

  •  何かこういう文章読んだことある、同じ著者かな?と思って奥付を見たら、著者は別人だったけど訳者が同じだった。文体はやはり原作よりも訳者の影響を色濃く受けるのだと実感した次第。

     人命は地球より重い、とか、喫煙は周囲の人を害するから絶対悪だ、とか、社会通念上は信じられている事柄も、費用と便益の視点から見直せばまた違う論理を構築することができるということを説明している。政策立案をする上でのトレードオフを十分考慮する必要性を訴えているのだが、各事例について、どちらの便益が大きいか、とか、どういう政策で対応すべきか、という部分にはあえて全く触れていない。

     そういうわけで、トレードオフという概念を十分に理解していると思う人は、あえて読む必要はないだろう。読んでも特に新しい知識は得られないだろうし。でも、この著者の好ましいのは、経済学者にしては謙虚で、タバコの煙の臭いが嫌いだから禁煙反対!という個人的嗜好による判断や、人の命をものみたいに扱うな!という感情的反応による判断を、完全には否定しないということを表明していることだろう。

  • 人の命をお金に換算すると・・・?

    シートベルトを締めると致死率が上がる?
    喫煙者の早死には三文の得?
    日焼け止めクリームは皮膚ガンを助長する?

    リコールでかかる費用が莫大になる資産が出て、
    かといって事故が起きて賠償することになっても
    リコール費用>賠償金額となればとるべき対応は?

    経済学者が独自の視点でよむ人間社会。
    まともに読むと怒り出す方もいるでしょうが、新たな視点を学ぶことができる
    とても面白い経済本でした。

  • (1)「シートベルトの持つ技術的な安全は、ドライバーたちの運転が荒くなるという行動反応によって相殺(オフセット)されるということ」(p147)というオフセット理論がわかりやすく紹介されていて、おもしろかった。どこかで説明するときに使えるかもしれない。

    (2)アメリカで大規模停電が起こったときに、その解決策としてメディアで語られたのは(a)電力業界を規制緩和して技術開発への投資を増やす、(b)逆に規制をもっと強めて停電を防止する、の2つだった。

    しかし著者は「ぼくが提起する問題はたった一つしかなかったはずだ。―最適な停電の頻度ってどのくらいだろう?」(p190)と問題提起する。そして「何十億ドルもかけて停電の頻度がごくわずかしか下がらないなら、停電頻度低下による期待便益は、設備投資よりもはるかに小さいかもしれない」(p191)として、「何もしないこと」を解決策として提示するのである。この発想は面白かった。何か問題が起きると「解決」したくなるのが人情なんだけど、経済学の知見は「何もしないことが最大の便益である」ということを教えてくれる。言われてみればあたりまえなのだけど、こうやってバチっと例示してくれると、感心する。

    そのほか、人命の価値、喫煙の擁護(ただし個人的感情ではなく経済学的に)、など、卑近な話題が多くて、面白く読めた。

  • 公共政策を提言したり、実行するなら絶対に政策目標が必要。

  • 費用とそこから得られる便益をはかりにかけて、物事を決めるという考え方がトレードオフ。
    トレードオフは社会問題に応用できる。喫煙、臓器移植、人命の価値はいかほど?シートベルトを締めると事故が増える?
    医薬品が高すぎてもOK?みんながハッピーになれるわけではない。誰か得をすれば誰かが損をする。モラルや道徳、正しいか間違いかで判断するよりも費用と便益に注目する。

    全てを費用便益で判断する経済学者はやっぱり人でなし。でも読んでいておもしろい。そう思う俺も人でなし?

  • ト、2009.9.4-9.5

  • トレードオフ。著者や訳者が言うほど人でなしの話ではないのでは?

  • いろんな費用便益分析をしているだけ、な本だけど、語り口調が面白いのでつい読まされてしまう不思議な本。タバコの害で人が早死するおかげで、年金とかの支払いが減るっていうプラスの効果もあるんじゃない?ってのは僕は多いにうなずけるし、この本が取り上げてない環境の議論にも応用可能。そんなに「人でなし」じゃないじゃん、と思った僕は既に人でないんだろうか。

  • トレードオフって結局、経済合理性の話だし。個人もしくは集団が行う意志決定を数字に落とし込んでいこうと思えば、非合理な部分なんかなくなる。もちろん、その際、一定の前提が必要なのだが。本文中に示されている具体例はたしかに理解の助けになるのだろう。

  •  トレードオフという考え方は割と重要だと思うのだけど、個人的な感情からそこを切り離す必要がある為、世の中的には余り受け入れて貰えない事が多い。例えば情報セキュリティに関して一般の人からは「絶対の安心」を期待される。でも、当時の上司から一番最初に教わったことは「絶対はありえない」という事だった。でも、大抵お客さんは納得してくれない。そこでこんな事を話す。「1万円札を守る為に幾らまで払えますか?」

     本書でも停電の例で触れられているが、何かを行う為にかかる費用とそこから得られる便益を比較して、それが理に適っているかを見極める必要がある。

     例えば、以前ここにも書いた「500億ドルでできること」。あれも色々と物議を醸したが、様々な問題の費用と便益を検討した結果、500億ドル自由に使えるお金があれば、環境問題にお金を割く事より他にするべき事があるよ、という結論だった。

     本書では、喫煙問題や臓器移植の問題、著作権の問題や日照権の問題等を通じて問題には必ず費用と便益があり、そのトレードオフの見極めが重要な事が語られている。

     ただ内容は全体的に薄味だと感じた。もう少し数字や数式が飛び回るものを想像していたのだが、割とあっさり。訳者のあとがきにも書かれているが日照権の話や、臓器移植の話を「どっちでもいい」と投げているのは前述の「500億ドルでできること」などを読んでから本書を読んだ人などにとっては肩透かしされた感じがすると思う。

     それでも、トレードオフの考え方と言うものを理解するのには役立つと思う。本書の最後の方で著者が述べている「自分は最近はどちらにも肩入れしない」という言葉と、著者が引用している「解決策など無い。あるのはトレードオフだけ。」という2つの文に集約されていると思う。

     「500億ドルでできること」の問題は何に幾ら使うのが、費用/便益の考え方に於いて適切かを議論した結果の本なので問題の結論が出ている(勿論、反証も)。それはあくまで、費用/便益分析を道具として適切な分配を考えるのが目的だからだ。本書は費用/便益分析の考え方を学ぶ事が目的なので、個々の問題に何かしらの数値が入るのは余りよろしくないのだろう。

     薄味ではあるし、もう少し突っ込んだ議論が聴きたいとは思うが、本書の目的を考えると良いバランスだったのではないか。本書で満足出来なかったり、本書で得た費用/便益分析を用いた議論を読みたいのであれば、「500億ドルでできること」を読むと良いと思う。

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著者プロフィール

ハロルド・ウィンター(Harold Winter)
オハイオ大学(オハイオ州アセンズ)経済学教授。著書に、Trade-Offs: An Introduction to Economic Reasoning and Social Issues, 2nd ed., University of Chicago Press (2013), The Economics of Crime: An Introduction to Rational Crime Analysis, 2nd ed., Routledge (2019)などがある。

Ohio University Collefe of Art&Science Department of Economics Professor Economics
Education:Ph.D.,University of Rochester

「2020年 『やりすぎの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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