逆説の軍事論

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著者 : 冨澤暉
  • バジリコ (2015年6月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862382191

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逆説の軍事論の感想・レビュー・書評

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  • 元陸上幕僚長が軍事をテーマに著わした一冊。
    ①軍事とは何か、軍事の歴史。②各国の動き、③日本の軍事の三部構成。
    ①の歴史では、朝鮮戦争で核兵器が政治的に使えない兵器となり通常兵器の時代になったとある。これまでには全く持てなかった視点だ。③では集団的自衛権と集団安全保障が繰り返し解説される。似た言葉だけにあいまいに理解していた。
    とかく日本では、軍事はタブー視、忌避されてきただけに、我々のような一般人とって、政治や経済に比べてその知識は大いに劣っている。中国の軍事的膨張、米トランプ政権の発足等、環境変化は著しく、これからは思考停止ではいられない。
    著者は大学の先生も務められたとのこと。本書は素人向けにも分かり易く解説され視野が広がった

  • 陸上幕僚長(陸上自衛官の最高位・陸軍参謀総長に相当)を務めた著者は言う・・・

    物事を考察するときの視座(立場)はひとつではありません。
    軍事についても同様です。
    視座が異なれば軍事に対する認識も自ずと異なってくるはずです。
    また、同じ視座であっても、人それぞれ異なった考え方があるでしょう。
    どのような視座であろうが議論する対象の本質、およびその現実的位相に関しての最低限の知識は必要です。
    なぜなら、対象に関する正しい知識を持たない議論は、例外なく空論や暴論に陥るからです。
    ましてや軍事とは、いつの時代においてもきわめて現実的かつ重要な概念です。
    空論や暴論に導かれた運用は歴史が示す通り、大きな災厄を招くことにもなります。
    と・・・

    現場を知っている著者による、現実の軍事に関する最低限の知識を提供してくれる一冊・・・

    軍事力があるから戦争がなくならないんじゃない?
    世界中から軍事力を排除すれば平和になるでしょ?
    いやいや、ミサイルとか戦車とか銃がなくても戦争って起こるんです・・・
    20年以上前のルワンダ紛争・・・
    ありましたよね?映画にもなってますね・・・
    敵の組織的殺戮と家(などの資産)の破壊といった戦争の物理的実態からすると、ルワンダ紛争って紛れもなく戦争です・・・
    あれ、10万人以上が鉈とか棍棒で殺戮されているんですね・・・
    普段の生活で使う刃物とか車とか、火とか、そういったものは軍事力を構成する武器、兵器と同等の機能を持ってます・・・
    ということは軍事力をなくす、って・・・
    つまりそれら生活に欠かせないものすらなくさないといけない、ってことまで突き詰めないといけなくなります・・・
    これって詭弁?いや、真理ですよね・・・
    ではそれらをなくせるか?いや、それは無理ですよね・・・
    ということは戦争ってなくならないよね・・・
    では現実的にできることは何か?
    できることは戦争が起こらないようにする(戦争を抑止する)ための仕組みをつくり続けることぐらい・・・
    で、実際、軍事力こそがその戦争を抑止するために大きな役割を果たしているのが現実・・・
    納得いかなくても世界を滅ぼしかねない核兵器によって・・・
    20世紀の前半、2つの世界大戦の時より後半の方が戦争の死者は少なくなっている・・・
    相対的に、まだマシ、まだ平和・・・
    納得いかなくてもそれが事実・・・

    それから・・・

    戦後70年、日本は平和でしたね?
    自衛隊は軍隊ではなく、憲法9条のおかげで軍隊がなくても日本は平和でしたよね?
    いやいや、他国からしたら自衛隊は明らかな軍隊だし、戦後、日本に軍隊が存在しなかった時代はない・・・
    これも事実・・・

    ここまでが導入部分でございます・・・

    そして・・・
    本書の著者の考えの中心ですが・・・
    日本は集団的自衛権の行使というよりは国連の集団安全保障を軸に、世界の平和に積極的に貢献していくべき。
    集団安全保障は基本的に国際社会全体のため、グローバル・コモンズ(世界の共通益、下記参照)のためのものである。
    集団安全保障への参加は国際社会に生きる各国の義務といえる。
    戦後の(相対的な)世界の平和は、日本に極めて大きな恩恵をもたらし、驚異的な復興と経済成長を遂げた。日本も独立国として、アメリカを中心に諸外国とともに平和を推進していかなければならない。
    というもの・・・
    日本の安全保障は世界の平和に必ずしも結びつかないことは確かだけど、世界の平和は日本の平和と安全保障に確実につながる、とも言っております・・・
    世界の平和あってこその日本の平和、っていうのは皆様どなたもご納得ではないですかね?
    そりゃそうだ、って話だと思いますが・・・
    鎖国してて自給自足しているならば、世界の平和?知らないねぇ、と我関せずでも良いと思うけど、そうではなく恩恵を受けている立場ですからね・・・
    著者の考えは御尤もと思いますが・・・
    いかがでありましょうか?
    まぁ、(アメリカとの関係は決して単純ではないけれど)国連自体がアメリカ一極の世界秩序を守るためのものであり・・・
    そして、安保理が割れて集団安全保障が機能しなくて・・・
    結果、現実的には多国籍軍や有志連合による集団的自衛権行使になったり、っていう問題はありますが・・・
    なるべく集団安全保障の枠組みの中で、世界の平和のために積極的に貢献していく、というのは、それはその通りだと思います・・・
    ええ・・・

    あと、その他気になったところをメモとして・・・
    ・現代では軍事力は、軍隊を実際に使う『力の行使』よりも『力の存在』によって敵を抑止することに重点が移っている。
    ・安全保障は外交と軍事が両方大事。軍事がなければ安全保障は機能しないし、軍事だけでも安全は確保でないし、弊害もある。
    ・国益や主権は自国で守るものだけど、他国と協力した共同防衛、集団安全保障の形で守るのが、現代の安全保障に関する考え方の主流。
    ・世界各国の協力で守るべきものをグローバル・コモンズ(全世界の共有物・共有権限)という。
    ・アメリカのミサイル防衛(MD)戦略は発言力が増すロシア以外の核保有国を牽制するとともに、さらなる核拡散を防ぐことを目的としている。
     お前らの持ってる(持とうとしている)核で脅そうとしても無駄だよ。撃ち落しちゃうから。というもの。
     あくまでアメリカ主導の秩序(平和)維持のためのもの。
    ・核戦争の末路は世界滅亡だけど、通常兵器による戦争は人類滅亡まではいかない代わりに、果てしない混沌と無秩序を世界にもたらしかねない。
    ・朝鮮戦争は北朝鮮・中国・ソ連対アメリカが国連決議で編成した(朝鮮)国連軍の戦争である。有事の際に出てくるのは米軍だけではなく、国連軍も再結集される。
    ・朝鮮半島有事には大量の難民が発生すると思われる。その難民にテロリストやゲリラが紛れ込み、日本にいる協力者とともに日本国民をパニックに陥れ、日本を基地とする米軍、国連軍への支援にブレーキをかけようとするだろう。
    ・尖閣諸島で侵略行為が発生した場合、まず日本自身が戦わなければ、アメリカも国連もおそらく動かないだろう。アメリカ軍には、日本の領土を自衛隊に先んじて守る責務はない。
    ・中国は文攻武嚇の国であり、三戦(広報宣伝戦・心理戦・法律戦)を実施している。
     文攻とは外交やメディア、友好的な人脈を使い、相手国内に混乱や分裂をもたらし、最終的に相手国を弱体化、衰弱させるという手段。
     相手を支配するのではなく、あくまでも相手を無力化し、中国にとって有利な状況をつくりだすこと。
     武嚇とは武力を直接行使するのではなく威嚇に使うこと。状況によっては武攻に切り替えることも。
     日本は中国の術中に嵌ることなく、同じく文攻と、アメリカをはじめとする各国と協力して、『やんわりと』囲い込んでおくくらいでいい。
     そして防衛(軍事)交流を活発にし、軍同士の信頼関係を醸成することが特に重要。
    ・現代の軍隊はIT化、機械化が進んでいる。技術化、専門化が進む現代の軍事情勢から徴兵制は政策として求められていない。
    ・世界平和の維持とは世界秩序の維持である。秩序とは現在のこの秩序のこと。つまりはアメリカ一極の秩序ということ。
     これに不満を持ち、この秩序を変えようとしている国や集団にとっては、平和の維持は目標にならない。
    ・国の自衛の三要件は急迫性と違法性、必要性、相当性と均衡性。個人の正当防衛と一緒。
    ・個別にせよ集団にせよ、自衛権の行使は国連の安保理が必要な措置をとるまでの間。攻撃を受けたら直ちに安保理に報告。安保理が措置をとった後は、自衛行動を中止して国連軍・多国籍軍の一部に組み込まれる。
     自衛権は自然権と言われるけども、集団安全保障システムの中で特例で認められたものと認識しておくべき。そしてあくまで権利である。
     権利なので、行使するかどうかは自由。自分だけで余裕なら個別的で良いし、どこかと共同で守る方がより効果的で、効率的で、有利ならば集団的自衛となる。
    ・自衛隊が集団的自衛権を行使してアメリカ軍に寄与する機会はほとんどないだろう。それよりアメリカが本当に求めているものはPKOや多国籍軍が必用とされる場面での協力だろう。
    などなど・・・

    軍事の基本的なこと、歴史的な変遷や、アメリカ、中国、ロシア、EU、その他地域、集団的自衛権と集団安全保障の違い、そして自衛隊についても書いてあり、非常に濃密・・・
    内容としてはあまり小難しく書いてないので、素人のボクでも読みやすく、なるほどなるほどとアタマに入って来た・・・
    最初に著者が言う通り、これがベース、これを最低限の知識とした上で、安全保障どうするの?と考えていかないといけませんね、ってことでオススメちゃん!

  • 感想未記入

  • 帯は五百旗頭先生。
    タモさんとかヒゲ隊長とかがこれくらい頭良かったら、もっと国民の議論も良いものになったのではないかしらね。

  • 元陸幕長やって大学教授やってた冨澤さんの本。
    そもそも軍事とは何か、平和とは何かといったところの話から始まり、国際情勢と日本の防衛について論述されている。
    大学教授やってただけあって軍事の現実一辺倒でなく社会学の知識とかも織り交ぜられてる。戦争がクラウゼヴィッツから現代へどう変遷したかも。
    集団的自衛権と集団安全保障についても気合いをいれて詳述。日本一国平和主義ではなく、集団安全保障として自衛隊を外に出す必要性等に触れている。

  • 現在の自衛隊が求められている任務は①アメリカ主導の1極秩序を維持するためのバランスウエイト(重石)、あるいはバランサーとなること②各国との共同による世界秩序を崩す勢力の排除③世界秩序が崩壊したときの準備。

    防衛には「個別的・集団的自衛により直接身を守る直接的防衛」だけでなく「集団安全保障によって世界平和を作り、その恩恵を享受する間接的防衛」の2つの形がある。

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逆説の軍事論の作品紹介

なぜいま集団安全保障なのか。左翼の夢想と右翼の妄想を排したリアル軍事論。

逆説の軍事論はこんな本です

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