- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862481047
感想・レビュー・書評
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「近頃はやるのは、タイアップの曲ばかり……なんだかつまんない」
なーんて思ってる人はいませんか(つーかオレだよ)。そういう人は、即刻、認識をあらためてください。日本の「歌謡史」をたどってみれば、「昔っから」、はやるのは「タイアップの曲ばかり」だったのです……とゆーことがよーくわかる本でした。
たとえば『リンゴの唄』は映画『そよ風』の主題歌。『青い山脈』も『憧れのハワイ航路』は同盟の映画の主題歌。フランク永井の『有楽町で逢いましょう』は、まず関西の百貨店・そごうの東京進出キャンペーンの一環としてのポスターがあり、さらにそごう提供による同名のテレビ番組があり、その人気をあてこんだ小説までつくられてから、歌ができている(のちに映画までつくられた)。
興味深かったのは、歌番組黎明期のナベプロの役回り。フジテレビ開局の59年、ディレクター・椙山浩一(ドラゴンクエストの「すぎやまこういち」)が手がけた『ザ・ヒットパレード』は、ナベプロ・渡辺晋の協力を得て大成功する。「1年間ギャラはいりません」とまで言った渡辺のねらいは、テレビを“宣伝媒体”として利用することにあったというから、先見の明というべきだろう。また、同プロ所属の植木等による『スーダラ節』にいたっては、初めて原盤制作に進出。それまで旨味を独占していたレコード会社から権利をもぎとったことで、ひとつの楽曲の版権を複数の企業が分け合う現代のタイアップ手法にまでつながっていく。
「CMソング→イメージソング→タイアップソング」という変遷も興味深い。CMソングは、商品のPRのためにつくられる音楽で「コカ・コーラを飲もうよ♪」みたいなやつ。イメージソングはCFから独立したかたちでレコード会社から市販されるもので、『君の瞳は10000ボルト』『時間よ止まれ』などを生み出した資生堂の“イメージソング戦略”に端を発している。そして、基本的には広告業界・スポンサーサイドから提案されるイメージソングとは異なり、レコード会社サイドから「使ってもらえれば、値引きしますよ」的な売り込みがされるのがタイアップソング。「じゅわいよくちゅーるまき」とかのあたりから始まる、ビーイング黄金期を支えたのがこの「タイアップソング」だった。
どーして日本人は、こーまで「タイアップ音楽」が好きなのか? これについては「米国では放送局が音楽出版を持つのは禁止されているのに、日本では許されているので、テレビ局としては自分の子会社が権利を持っている音楽をかければ収益になるのが大きい」というコメントが紹介されている。そもそも日本の「放送の歴史」と「音楽の歴史」は分かちがたく結びついていて、タイアップ的な手法は40年来の既成事実であることが、この本では如実に示されている。
「タイアップとか、そーいう商業主義的な音楽は聴かんもんね」みたいなことは、日本ではちょっと無理っぽい。てゆーか、ここまでみんながみんな「タイアップ」になっちゃうのって、付和雷同とかカラオケ大好きとかそーいう「日本人の習性」が影響しているとしか思えない。あるいは反対に、テレビがそーいう習性を教育してきたともいえるかも。「現在のポピュラーミュージック、歌謡曲の歴史はタイアップや広告との関わりを抜きにして語ることはできない」という終章の一節は、まことにごもっともだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2011/07/01 購入
2011/07/03 読了 -
レビューは<a href="http://badtzmaru.blog34.fc2.com/blog-entry-477.html#more">こちら</a>
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200702 CM/広告代理店などの仕掛け人/音楽の関係が良く分かる本。