渡辺京二傑作選② 神風連とその時代 (新書y)

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  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862487681

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  • 明治9年に熊本でおこったいわゆる不平士族の反乱を、同郷の著者が題材にしている。原著は1977年刊行。

    神風連の乱は、端的に言ってしまうと、時代にどうしても迎合できなかった人々の行き詰った末の愚行。しかし、彼らがなぜそのような行動を取るしかなかったのかをしつこく考察する。著者は歴史的事件をグッと自分の問題意識に引き付けて書いているので、その論考のアクの強さに対しては賛否があるだろう。その点を心して読めば面白いと思う。

    ・林櫻園・・・重症の根本病患者とも言えるのではないか。和魂洋才の不可能を予見していた。
    ・元敬神党から民権党へ転じた者も多い。この点は敬神党の性格を物語る。
    ・敬神党は当時ですら異端視されていた。しかし、蜂起後の家族の対応を見ても、現代とは違う価値観も背景にあったことは間違いない。
    ・尊皇攘夷だけ言えば、敬神党も保守派士族一般も異ならない。名分、すなわち封建社会の内側の理屈で生き死にするのが士族一般、思想により生き死にするのが敬神党。
    ・敬神党が呪術的なのは下級武士であるための基層民への近さから来ている。儒教の教養がある上士からはバカにされる。
    ・著者の市民社会への違和感が本書を裏で貫くテーマ。

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著者プロフィール

1930年、京都市生まれ。
日本近代史家。2022年12月25日逝去。
主な著書『北一輝』(毎日出版文化賞、朝日新聞社)、『評伝宮崎滔天』(書肆心水)、『神風連とその時代』『なぜいま人類史か』『日本近世の起源』(以上、洋泉社)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞、平凡社)、『新編・荒野に立つ虹』『近代をどう超えるか』『もうひとつのこの世―石牟礼道子の宇宙』『預言の哀しみ―石牟礼道子の宇宙Ⅱ』『死民と日常―私の水俣病闘争』『万象の訪れ―わが思索』『幻のえにし―渡辺京二発言集』『肩書のない人生―渡辺京二発言集2』『〈新装版〉黒船前夜―ロシア・アイヌ・日本の三国志』(大佛次郎賞) 『渡辺京二×武田修志・博幸往復書簡集1998~2022』(以上、弦書房)、『維新の夢』『民衆という幻像』(以上、ちくま学芸文庫)、『細部にやどる夢―私と西洋文学』(石風社)、『幻影の明治―名もなき人びとの肖像』(平凡社)、『バテレンの世紀』(読売文学賞、新潮社)、『原発とジャングル』(晶文社)、『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』上・下(亜紀書房)など。

「2024年 『小さきものの近代 〔第2巻〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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