集団的自衛権の思想史──憲法九条と日米安保 (風のビブリオ)

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著者 : 篠田英朗
  • 風行社 (2016年7月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862581044

集団的自衛権の思想史──憲法九条と日米安保 (風のビブリオ)の感想・レビュー・書評

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  • 集団的自衛権が戦後の日本でどのように論じられてきたかを丹念に分析し、現在の安保法制(安全保障関連法)がどのような位置にあるのかを示したものである。非常に難解な憲法学者たちの議論も丁寧に取り上げられている分、自分も副務素人にはハードルが高いように感じた。

    しかし、「今や日本国憲法の国際協調主義は、瀕死の重傷を負っていると感じる。このまま死に絶えてしまう恐れすらあると思う。なぜこんなことになってしまったのか。」という問いかけは充分に共感できるし、その歴史的プロセスの解読が重要だということもよくわかった。

    また筆者は政府が結局採ることのなかった2008年安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)報告の意義を評価する。たとえば「集団的自衛権行使を違憲とする見解により、『北朝鮮ミサイルを追尾する日米イージス艦の共同行動が行われているが、その際、我が国の海空自衛隊がこれを掩護できない』問題などを指摘し、日米同盟の信頼性の維持のために対処が必要だと論じ」たことを指摘している。

    今まさに集団的自衛権行使の瀬戸際にある状況で憲法9条と安保体制の思想史的分析がいかなる力を持ちうるのかはわからないが、たとえば「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」という根本規範を擁護するという「立憲主義」に基づく国際協調主義が求められることはまさにその通りであろう。

  • 本書は憲法を相対化するのでなく、憲法解釈を相対化する。憲法学者が演繹的な解釈世界を作り上げてきたことに対しての挑戦状である。
    新憲法が日米安保とパッケージ化されてきた歴史、英米法的条文を意図的にか大陸法的に読み込もうとしてきた経緯などが述べられる。国家を統治権の主体として見たがる憲法学者に対して、本書のように国民の信託による機関とみた方が、イデオロギーの戦いが終わった現代において、極めて自然に感じる。
    また、他にはあまり聞かない議論に、沖縄返還と集団的自衛権の公式化が期を逸にしていることの指摘がある。それは様々に解釈できるだろう。もし在日米軍の他国への武力行使=日本の武力行使と見做されることを回避するための布石であれば、かつて小泉純一郎が「自衛隊が派遣される場所だから非戦闘地域だ」と言い張ったことと同程度の詭弁であり、憲法学者がそんな帰納的な解釈の産物を後生大事にしてきたとはなんとアイロニカルだろうか。
    著者は国際協調の視点から、新たな憲法解釈の可能性を提示する。何かに協調するということは、一方の何かには協調しないことである。協調すべきものの選択基準が、本書の批判するところの専門の学者の恣意的解釈とならないことを願う。

  • 憲法9条に照らした自衛権解釈が時代によって変遷する様子がよくわかる。

    サンフランシスコ講和条約発効時、防衛力は駐留米軍しかなく、集団的自衛権は当たり前の前提だった。

    憲法9条=個別的自衛権となったのは、ベトナム戦争への巻き込まれリスクのあった1972年。
    その後明らかに集団的自衛権の行使である日米安保条約と、個別的自衛権に縛られる憲法解釈の板挟みとなる。

    結局内閣法制局の憲法解釈は、政治状況に左右されるということだろう。

    憲法学者は師弟伝来の教義に縛られ、憲法は国の原理を定めるものではなく、国民が国家権力を縛るものだと言い続ける。
    憲法学者に未来はない。

  • 安保法制は、従来の日本の安全保障のあり方を固定化するものであるとし、その際にキーワードになる、憲法9条、集団的自衛権といった概念が、日本の安全保障において、どのような立ち位置にあったかについてまとめた本。
    著者は、平和構築を専門家にする国際政治学者であり、憲法学者ではない。そのために国際政治学からの立場から憲法や概念の変遷がまとめられているのは貴重である。

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