ローベルト・ヴァルザー作品集〈2〉助手

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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862653055

感想・レビュー・書評

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  • 『タンナー兄弟姉妹』のジーモン君に比べると、本作のヨーゼフ君はそれほどふらふらしていない。なにしろ正社員だ。それでもヴァルザーの小説に出てくる若者たちはまだ何も成し遂げていなくて、でも彼らの未来は開けており空は青く空気は透明で、かなしいようなやさしいような気持ちになる。自分はその時期をもう通り過ぎてしまったからこその愛おしさ。

    雇い主一家は癇癪持ちだし気位が高いし給料は遅配だし、理想からは程遠い。衝突を通じてヨーゼフ君のなかに準家族のような感情が育っていくけれど、彼らの人生行路は同じ方向を指していないから、いつかはさよならを言わなくてはならない。でもそれはそんなに悪いことではないのだ。ヨーゼフ君の未来に幸あれ。

  • ブルジョア発明家一家の斜陽を、助手として寝食を共する青年の眼差しが描写する。他愛ない日常が綴られているだけなのにこれが面白い。瑣末な事柄を入念に思考し、大きな流れには諦念をもって物見遊山をきめこむ達観ぶり。その意識の切り替えが特異なリズムとなって躍動する。それになんてったって自然と風景の描写がすばらしい。青年の淡々とした語り(ユニークで魅力的!)が一躍リリカルに燦きだす。この差異こそヴァルザーの潜在意識、俗世間への嫌悪感の表出なのかもしれない。彼の生涯と併せて考えると、たまらなく愛しさがこみあげてくる。

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著者プロフィール

ローベルト・ヴァルザー(Robert Walser)
1878-1956年。ドイツ語圏スイスの散文作家。長編小説の他、多数の散文小品・詩・戯曲を発表。1933年以降は精神療養施設で過ごし、1956年のクリスマスの朝、散歩中に心臓発作で死亡。同時代において、カフカ、ベンヤミン、ムージル、ヘッセに愛読されたその作品は、現代では、W・G・ゼーバルト、E・イェリネク、S・ソンタグ、J・M・クッツェー、E・ビラ=マタス、G・アガンベンらの作家、思想家に愛読されている。

「2012年 『ローベルト・ヴァルザー作品集4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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