- Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862721327
感想・レビュー・書評
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この言葉にカラダがあるのならば、脆く薄いガラスの皮膚の内側に沸点の低い硫酸めいた透明で濃密な血液が流れているのだろう。人差し指でそっと触れただけでも、伝播する熱のせいで私の血までが濃縮されていくので息苦しさを覚えることがあった。
毎朝、地下鉄の駅のホームで少しずつ読んだけれど、列車が到着するたびにふるえる熱気とおよぐ冷気が入れ替わり、私の内で言葉溜まりが蒸留されていくように感じられた。
地上に出たとき、精製された結晶が夏の烈しい陽射しを受けて一斉に乱反射し合う。ひとつひとつの光線が真っ直ぐに胸を貫いてゆく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歌集を読むのは穂村弘さん「短歌ください」以来。それは入門編としていろいろな人の歌が載っていたけれど、個人の歌集として読んでみたいと思ったのは初めて。読書好きさんのレビューに魅かれて。
五・七・五・七・七の並ぶ言葉で鮮やかにその場面を映しだす。その一文で一気にどこか過去のような想像の先のような場所に立たせてくれる。
改めて短歌ってスゴイと感じた。
ちょっとした畏怖を感じるくらい。
私のお気に入りは「パンシェへの流れを見せる先生の胸の廃墟にうつる夕空」
「コントミンその軽やかな名を持ちてわたしのなかの私を奪う」
「甘いだけの恋がしたくて口腔でどろどろ溶けていった絹糸」
まだまだあるけれど。
言葉は、自分で思っているより記憶と繋がっているんだな。
野口さん第二歌集の「夏にふれる」も読もう。 -
最初、ほむっぽい、と重い、あかるくかわいい歌風なのかとおもっていたら、途中からどんどん病んでいった。
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第一歌集。十代の持て余し気味のエネルギーや、意味もなく楽しくなったり、無邪気になったりする感じが垣間見れて、読んでいて楽しい。無邪気さの中に、醒めた視線、漠然とした不安を感じさせるところも、作品の魅力になっていると思う。