グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ]

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862760135

感想・レビュー・書評

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  • ■概要
    バングラデシュで生まれ、アメリカでベンチャー・キャピタリストとして活躍していた36歳の起業家イクバル・カディーアが、貧困に苦しむ祖国の発展のために携帯電話サービスを立上げ、企業や投資家を動かし、事業として成功させるまでの険しい道のりを、丁寧に描いたドキュメンタリー。

    アジアやアフリカの発展途上国、未だ固定電話はおろか電気さえ通っていないような農村地域で、携帯電話が急速に普及している。それも、利用者は、1日2ドル未満の所得で生活するBOP(Bottom of the Pyramid:貧困層)にまで及ぶという。利用方法は通話に留まらず、クレジットカードの代替であったり、携帯電話を元手にしたビジネスであったりする。

    礎を築いたのが、カディーアが設立した、グラミンフォン。同じくバングラデシュにてマイクロファイナンスを行うグラミン銀行の総裁、ムハマド・ユヌス(ノーベル平和賞受賞)とノルウェーの電話会社、他多くの関係者から協力を得て、1997年に事業を開始した。今や1千万人以上の加入者、10億ドル以上の売り上げを誇る。

    1億4800万人の国民のうち、多くは農村部に住み、約半数が1日1ドルで生活しているバングラデシュ。80%の家庭に電気が通っておらず、識字率はわずか37%。普通に考えたら、携帯電話は嗜好品であり、それより先に解決すべきことに着手しそうなものである。しかし、カディーアは、「つながることは生産性である」という自身の信念と、「援助でなく融資を通じた自立の促進」をうたうユヌスのマイクロファイナンスに着想を得て、新しい事業を立ち上げる。小額融資を受けて携帯電話を購入した各村のテレフォンレディが、村人に電話を使ってもらい、手数料収入の一部をローン返済にあてるという、持続可能なモデルである。これにより、村人に多くの富と利便性をもたらしただけでなく、識字率や電力といった社会問題解決への取り組み、事業の横展開、健全な競争の促進、新たな需要の創出といった好循環につながっている。

    ■仕事に活かせる点
    「私には戦略がなかった。ただ、次にすべきことをやってきただけだ。・・・銀行と反対の行動をとること・・・。銀行が金持ちに貸すのなら、私は貧乏人に貸す。男性に貸すなら、女性に貸す。担保を要求するなら、私は無担保だ。多くの書類を求めるなら、私は文字が読めない人でも利用しやすいローンにする。あなたを銀行に行かせるのではなく、私の銀行が村々に行く。」 ユヌスによる、逆張りの戦略。(千)

  • 昨日までそこに存在しなかったもの。存在出来るなんて1mmも思われてなかったもの。誰からも必要だと思われなかったもの。それでもやってみる。
    その情熱の源泉は強烈な体験から、自己の信念から。
    つながることは生産性。
    だれもが持つ根本的欲求。

  • YOU CAN HEAR ME NOW:
    HOW MICROLOANS AND CELL PHONES ARE CONNECTING
    THE WORLD'S POOR TO THE GLOBAL ECONOMY ―
    http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2013 ,
    http://www.youcanhearmenow.com/

  • バングラディシュでの電話の発展とともに、本来の電話の役割、あるべき姿が書かれており、感動した。

  • バングラディッシュでの携帯電話普及に向けた社会起業の話。<br />発展途上国への進出の壁、トップセールス、起業の情熱、など刺激を受ける。

  • 従来、貧困層は「情報」を買うために高いコストを支払っていました。例えば遠い市場まで徒歩で言って、「この薬はありますか?」「野菜を買ってくれる人はどこにいますか?彼らはいくらで買ってくれますか?」的な感じに。仮に市場までの往復時間が半日かかるとすれば、彼は半日分の機会費用を支払って「情報」を買っていたわけです。

    で、携帯電話はこの往復時間を節約します。仮に電話代が10円だとすれば、

    10円≦半日分の機会費用

    ならば、貧困層は同じ情報をより低価格で購入することができます。

    そんなメカニズムから途上国の貧困層で携帯電話が爆発的に広まったというお話。BOPを知る上ではいい本かと思います。

  • これは学術書に入るんか?
    きっと入らないでしょう…

    目から鱗の話が色々ありました。
    言えることは、
    アフリカは十分マーケットになり得ます。
    これからはアフリカ株もアツいかも笑

  • 2部構成。
    前半は、グラミンフォンの創設の物語をカディーアという起業家を中心に描いている。後半は、ケータイが貧困撲滅にいかに貢献するかを各国のケータイ浸透の様子が描かれる。特に、各国のモバイルバンキングの浸透の仕方は日本のモデルとはかなり違っており興味深い。
    全般に、ビジネスによって利用者(ここでは貧困層)のスモールビジネスを後押しするポイントが具体的に書かれておりわかりやすい。
    ステージとしては、情報通信や電力など社会インフラに関わるビジネスがメインであり、サービスまではいっていないことがよくわかる(モバイルバンキングはサービスに近いが、レベル的には社会インフラ)。
    社会インフラの構築が、利用者のスモールビジネスの展開に役立つのは、ある意味自明なので、サービスの提供によって同様のモデルが成り立つのかは思った以上に不確定だといえそう。

  • イクバル・カディーアXユヌス(グラミン銀行)☆援助ではなく投資を。☆ITX現地企業家X外国人投資家。

  • バングラデッシュのBOP(ボトムオブピラミッド)に携帯電話を普及させたグラミンフォン。

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