いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと
- 英治出版 (2009年4月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760500
感想・レビュー・書評
-
今日の学生たちは、メディアが言うのとは反対に、だれよりも「アメリカに恩返しがしたい」と思っています。欠けているものがあるとすれば、それは共有できるスピリット、そしてミッションです。
■評価項目
粘り強さ/コミットメント/誠実さ/口頭でのコミュニケーション能力/熱意/繊細さ/独立心と積極性/組織のなかでの働ける能力/自己評価する力/生徒に認められなくても行動できる力/概念的な能力・知性
初年度を通して私が自信を失わずにいられたのは、何かの奇跡のように思える。 なぜ、ストレス や仕事量に打ちのめされなかったのだろう。必要な応募者を集められないとか、新人教師を雇うよ う学区を説得できないとか、必要な資金を集められないなどと考えて、断念しなかったのはなぜだ ろう。私が持ちこたえられたのは、私のアイディアが持っている力を盲目的に信じていたからだと 思う。失敗の可能性が現実的にあるのか、実のところ私には、よくわからなかった。ただ、そうし た考えがふと心をよぎったことは数回あった。
重要なのは、あなたが子供たちから尊敬され、賞賛される力があるかどうかです。子供たちは、私たちの真の思いやりと関心を必要としています。つまり、子供たちのことを考えているということ、そして彼らを信じているということを示さなければならないのです。
ニックは、本部と各地のオフィスのあいだに生じていた「こちら側 対 あちら側」という雰囲気を和らげるよう、両者の関係を改善する方法も教えてくれた。彼の提案は、「本部にいるリーダー全員が、担当する分野の展開については、本部でも各地のオフィスでも責任を持つ」というものだった。これにより、各地のオフィスからの情報や関心が、本部の方針にも確実に反映されることになる。
「よい文章、思考、話し方」「責任」「継続的学習」「素直さ」「達成」「効率」「誠意」
これまでの年月で、私は重要なことを学んだ。第一に、ティーチ・フォー・アメリカのミッショ ンの力強さだ。当初から私はティーチ・フォー・アメリカのアイディアに確信を抱いていたが、敢育における課題の大きさを考えはじめたときに、わき道にそれてしまった。結局、私は戻ってきて、教育における不平等が存在する限りティーチ・フォー・アメリカは不可欠だと考えるようになった。私たちは、今日成長しつつある子供たちを助けるだけでなく、変化を起こそうという思いを持った、民間のリーダーを大勢育成している。このリーダーたちが今後成し遂げるであろうことは、私が新たな活動を形成して達成できることよりも、はるかに大きい。
また、ニック・グローバーが以前私たちに言ったように、プログラムと資金調達の面のバランスを保つことがいかに重要であるかも学んだ。お金がなければ計画を続けていくことはできない。同時に、限られた資金を何に使うかに関して、戦略的に考えることのメリットも学んだ。資金面でのむずかしい選択を迫られたことで、私たちのプログラムは強化された。
そして、ここ何年かで学んだなかでおそらくもっとも重要なのは、有能な組織を懸命につくりあげることによってのみ、ミッションを遂行できるということだ。ティーチ・フォー・アメリカは、私がよいマネジャーになる方法を学んで初めて、力を発揮できる。そして私はそのための多くを学んだ。能力のある人たちで私の周りを固め、明確な目標を定めてともに働き、そして彼らの能力を伸ばすことがいかに重要か。私は、自分がスタッフのどこを評価するかを学び、評価に値する価値を身につけてもらうにはどのような文化をつくればいいかも学んだ。
要するに、私が学んだのは、ミッションを実現しようとするのであれば、理想的なビジョンに加えて、それ以上のものが必要だということだ。最終的には、大きなアイディアは重要だし不可欠だ。だが、それを実行するための基本となる部分に十分に注意を払わなければ、アイディアは実現しない。この教訓を活かせば、この先ティーチ・フォー・アメリカをさらに強化していくことができるだろう。また、有能なコープ・メンバーや卒業生はどうしたら誕生するのか、そして、すべての子供たちが真の力を発揮できるような教育システムを立ち上げるには何が必要かを考える際にも、この教訓を活かしていくことができるだろう。
だが、さまざまな学年でさまざまな科目を教える、傑出した教師たちと出会うなかで(声の小さな人も大きな人も、クリエイティブな人も分析的な人もいた)、私はよい指導とはカリスマ性の問題ではないと気づいた。魔法のようなものでも、説明のつかないものでもない。傑出した教師たちは、生徒に対して明確な目標を設定し、人々を(この場合は生徒とその家族を)目標に向かって努力するよう動機づけ、目標を達成するためひたむきに努力し、指導の効果を常にチェックして実績をあげていく。要するに、よい教師とは、よいリーダーなのだ。
理想の芽を育てる「大地、太陽、水」は、つまり「未知のアイディアに目と耳を傾けるオープンさ」であり、「そのアイディアをリスクを取って支援する寛大さ」という「アメリカ的」姿勢にほかならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「生まれた場所によって受けられる教育の質に差があってはならない」
そう思いたち、優秀な大学を卒業した学生が、卒業後2年間、貧困地域や学力の低い地域に派遣され、教育改善を行う仕組みを作りました。
それがティーチフォーアメリカであり、最近では日本でもティーチフォージャパンの取り組みが進められています。
本書は、その立ち上げから、ムーブメントを起こすまでの10数年間の記録です。
ベンチャー企業の起業物語としても読めるし、教育やまちづくりなどに携わっている人にも示唆のある内容となっています。
とにかく読んで勇気のもらえる書籍です。 -
すべてのNPO関係者必読の書。アメリカ式NPO経営、特にファンドレイジングの具体例が満載です。成功だけでなく失敗の経験もちゃんと書いている点が評価できます。具体的で共感を呼びやすいミッション、ビジョン、Theory of Changeをたずさえていれば、NPOはここまで影響力を発揮できる、素晴らしいお手本です。
-
ウェンディ・コップ本当にすんげえ!!Respect!!
Think Bigが半端なくてメチャクチャカッコいい!
勿論TFAの事業にも非常に共感した。
物凄く熱い思いと、その実行の苦労がビンビン伝わってきた。
One day, all children in this nation will have opportunity to attain an excellent education.
ただ内容は素晴らしいのだが、訳の問題か元の文章の問題かはわからんが、なぜかスラスラ読みにくい気がした。 -
こういった運動が、アメリカの新卒で行きたい企業ランキング10位になるという、本当に素晴らしいことだと思います。
アメリカンドリームといわれてはいるものの、社会のために生きる、とはこのことかなあと考えさせられる本でした。 -
私の中の No.1 心が揺さぶられた一冊。
読み始めると まるで 映画を観る感覚で 最後まで一気に読んでしまう。
(初めてパリーポッターを読んだときのような ある種の 興奮状態)
読み終わったあとも アツイオモイ が全身をはしる感動本。
読むまでは 自分にとって こんな一冊になるとは 思っていなかった。
どんな人にも 読んでほしい “一冊”
いつか映画化にもなるんじゃないか。。。
もうなってるかな ?
…この本を薦めてくれた 人生の若き先輩 に… “感謝” -
アメリカの一流大学の一大学生が、将来について悩み、就職活動が(幸運にも?)うまくいかず、自分が立てた無謀な計画を実行し、アメリカを代表するほどのNPOになるまでの物語。すげえ。
-
TeachForAmericaの仕組みは無謀だと思った。
自分の信念を貫いてTFAを大成させたウェンディーコップには感服。
彼女のような強い女性になりたい。
TeachForJapan,絶対成功させたい!! -
久々にレビュー
本書はアメリカの非営利団体、「Teach for America(TFA)」の創設者によるTFAの設立と発展の歴史を記したもので、タイトルはステキですが、内容は全く生易しいものではなく、いろいろと考えさせられました。
活動内容は簡単にいうと、貧富の差が激しいアメリカで教育の不平等を是正するべく、アメリカで優秀な大学の新卒者を集め、2年間低所得地域(教師の質も低く、人数も不足している地域)に派遣して教師をしてもらう、というもの。
詳しくは他の方々のレビューにもありそうなのでここでは省きますが、
教育という、その人の未来を決定付けるものに対して優秀な若者たちが
貴重な2年間を使って、愛国心を持って貢献していくというアイディアは
本当に画期的だと思います。
※ なんとNPOなのにアメリカの学部学生の就職先人気ランキングの10位!!
実はまだ読み途中ですが、読みながら思ったことが二つあります。
■日本はこの国には絶対に勝てないな、ということ。笑
口では「自由と平等の国アメリカ」とか言っていますが内実は
決してそのようなことはなくて、アメリカの歴史は差別とその是正の
歴史なんじゃないかと思ってしまいますが、そのようなお国レベルの
欠陥を民間の、NPO団体が、来週支払う賃金もままならない状況で
全てを賭して改善する仕組みを作ってしまう、それは信じがたいことだと
驚愕しました。
日本の場合はそもそもまだアメリカよりはほぼ全てのひとに平等な教育がされているのでそのようなムーブメントを起こす必要も無い訳ですが、では日本の教育事情に問題がないかというと勿論そんなことはない訳で、教育以外の面でも社会的な問題が起きたときに市民が団結して対応する能力断然低いのではないかと思います。
■何か新しいことを達成することは、生半可なものではないということ。
この本を読んでて驚くべきこと、冷静に考えれば当たり前かもですが、
かなりのページをTFAのコンセプトや組織づくりではなく、資金集めに
ついて書かれているということ。
アメリカは日本と違って起業家を育てるような風土があるので、
社会起業家も含めて日本よりもずっと生まれやすい、
とよく耳にしますが、そんな甘いことは全くない!!!!
ということがよく分かります。
そもそも設立者のウェンディさんが学生組織運営の経験は
あっても社会に出て継続できる組織作りをする知識は全く
なかったようで、素人目に見ててもハラハラさせられるような
綱渡りをして過ごしていたようです。そんな状態だから
見返りの無い出資は断りたいと思うのは当然の反応で、
出資者に時に泣きつくようにして助けてもらったりして、
なんとか組織を少しずつ改善して安定した形になっていきます。
この人が天才だとか、優秀だとか言われたら正直首を
傾げてしまうけれど、粘り強さを筋を通して最後まで
実行する力こそが、誰にも負けない強さなんだと思います。
自分は個人的にも何かを始める上ではそれなりに準備しないと
なかなか実行できない、その勇気を持てません。
むしろ国民性かもしれませんが、ノウハウがなくて、案の定
どん底の苦労をしながら暗いトンネルを這って行って
出口にたどり着く。
それが賢いのかどうか、分からないけど、事実としてアメリカの
教育業界にムーブメントを起こした「ティーチ・フォー・アメリカ」を
現在も力強く活動を続けているということが、全てを物語っている
といえるのかもしれません。