世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

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著者 : 入山章栄
  • 英治出版 (2012年11月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761095

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティアの感想・レビュー・書評

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  • 昨年末から勤務先近所の書店で平積みされていて気になっていた本だったのだが、アカデミック色が強いのかと思って敬遠していた。しかし、クライアントさんが新年の目標を考えるために読了したとfacebookで報告していたので、それでは読まないわけにはいかないということで読んでみた。
    冒頭述べた「アカデミック色」というのはまったくないわけではない。というのは、筆者は非常にリファレンス豊富でさすが学者という感じ。しかし、文章のテンションが著者も言うとおりエッセイ風であったり統計などの難解なものについてはわかりやすく(かなり端折ってが正しい)書かれているので、経営学初心者でも十分読みやすい。

    さて、内容はというと、大変実務にとっての示唆に富んでいて、ビジネスマンであれば一読の価値がある。経営者よりもマネジメント業務についている方々が読まれるといい気がする。というのも、経営者としての意思決定よりもう一歩現場に落ちたところでの参考になるものが多いからだ。

    個人的には第5章のトランザクティブ・メモリーと第6章の見せかけの経営効果、第15章のRBVが非常によかった。
    トランザクティブ・メモリーの考え方は恥ずかしながら初めて目にする理論であった。RBVは私が修士論文を書く際に援用した理論枠組みであったため、それを否定する理論があることを知り、非常にワクワクしながら読むことができた。

    筆者も書かれているが、それぞれの理論やフレームワークはもちろん立派なことであるが、経営学の限界としてはそれらを一般化して各企業に落とし込んだところですべてが理論どおりに成長企業になるわけではないことだ。ここが経営学が難しくておもしろいところなのではないかと再認識させられた。

    筆者は今後は早稲田MBAの教授になるなんていううわさもあるが、こんなに過激に書いて大丈夫なのだろうか?(笑)

  • マイケルポーター
    SCP
    structure conduct performance.競争しないポジショニングを取る事。

    組織論
    学習にはlearning curveがあり、経験の蓄積により、ある一定レベルまでは急速に生産性、効率性が向上し、これは組織でも同様に言える。

    組織では同じ事を全ての人間が学ぶのではなく、各スタッフがそれぞれの専門性を磨き、記憶の分担共有(transactive memory)を行う事が肝であり、この時、「誰が何を知っているかwho knows what」を認識する事が重要。

    知の探索explorationと知の深化exploitationの両利きambidexterityを組織的に整備する事。業績が良いと、知の深化を重視した組織創りを進める一方、知の探索を怠りがちになり、知の近視眼化myopiaが起こりやすい。
    中長期的なイノベーションが停滞するリスクが企業組織に本質的に内在する。これをcompetency trapと言う。

    類似する「イノベーションのジレンマ」は経営幹部個人の認知問題として捉えているが、competency trapは問題の本質を組織に求めている。


    Social capital
    人と人の繋がりそのものが資本であるという考え。


    strength of weak ties
    弱い繋がりの方が強い繋がりよりも新しい情報を得やすい。
    強い繋がりの人間とは住む世界がほぼ同じであろう為。


    Structural hole
    ソーシャルネットワークのハブの事。


    パンカジュ ゲマワットによる海外進出の留意点
    "CAGE"
    Cultural 国民性
    Administrative 政府
    Geographic 地理(本国からどれだけ遠い?)
    Economic 所得格差


    ホフステッド指数(国民性を数値化したもの)
    以下の6項目で全世界のIBM従業員からリサーチしている。
    Individualism = Collectivism
    Power distance
    Uncertainty avoidance
    Masculinity
    long term orientation
    rentraint = indulgence


    日本人と最も近いのはハンガリー人、次いでポーランド人。
    最も遠いのはオランダ人、スウェーデン人。


    born global firm
    生まれながらの国際ベンチャー


    新事業投資時のCriteria
    小額投資をしつつ、不確実性を明らかにしていくReal option手法。
    1、全ての不確実性を洗い出す。
    2、上記を外生的、内生的に分類する。
    3、それぞれの楽観ケースと悲観ケースを想定し、戦略オプションを検討する。
    4、段階的な投資に基づいて、それぞれのケースの収益性を評価する。
    5、事業開始後、洗い出した不確実性を定常確認する。


    ドゥシュニツキー、レノックス「リサーチポリシー」2,289企業30年の調査で、CVC投資が多いほどイノベーションパフォーマンスが高まる。企業価値が高くなる。

    理由1
    DDの時点で技術を知る事ができる。

    理由2
    ボードメンバーになる事で、技術やビジネスモデルの情報を知る。

    理由3
    スタートアップの業績で事業の将来性を判断できる。



    M&A
    買収プレミアムについて、アメリカは平均35.6%、日本は平均19.9%のプレミアムが支払われている。
    新興国が先進国の企業を買収する場合、平均16%のプレミアムを払っている。


    コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)
    CVCはR&D予算の1-3%。

  • ○この本を一言で表すと?
     経営学を経営学者の視点から考える経営学の本


    ○この本を読んで興味深かった点
    ・「経営」と「経営学」の間に壁があること、その壁自体の存在や、壁を超えて「経営学」を活用すべきだという問題提起など、読みやすい文章で様々な分野の最近の経営学に触れることができて良かったです。これまで経営に関する本を何十冊と読んでいても、「経営学者」の視点では読んでいなかったのだなということを知ることができ、新鮮な気分でした。

    ・ドラッカーは日本でしか読まれていないというのは知っていましたが、アメリカで経営学者として扱われてすらいないということは初めて知りました。ハーバード・ビジネス・レビューは学術誌ではないということは、私はまさに学術誌だと思って読んでいたのでショックでした。(第1章 経営学についての三つの勘違い)

    ・経営学者も学者である以上、理論とその検証が必要というのは、経営学も他の学問と同じであることを目指しているということで、私が法律や会計について書かれた本を読んで「専門書を読みました」と言えても、経営について書かれた本を読んだ時は言いづらかった、その感覚の原因を突き止めることができたような気がしました。(第2章 経営学は居酒屋トークと何が違うのか)

    ・日本の経営学の本と海外の経営学の本は別分野と言ってもいいくらいに違いを感じていましたが、演繹的アプローチと帰納的アプローチの違いだとこの本で書かれていて、なるほどと思いました。この本を読んだ後に「新しい市場のつくりかた」という日本人が書いた経営の本を読み始めましたが、帰納的に考えを導き出したとはっきり書かれていました(書かれたのがこの本より後なので意識して書いているのかもしれません)。(第2章 経営学は居酒屋トークと何が違うのか)

    ・経営学の本といってもかなり内容は様々で「経営学」と言っただけでは本の内容がイメージできないくらいに曖昧でしたが、三つのディシプリン(経済学、認知心理学、社会学)や企業とは何かの四つの視点(効率性、パワー、経営資源、従業員のアイデンティティ)というように分かれていて、それぞれがかけ離れているという説明でその理由が納得できた気がします。(第3章 なぜ経営学には教科書がないのか)

    ・ポーターの競争戦略論を持続的競争優位を目指した守りの考え方、現在では持続的競争優位を保てる企業は全ての企業の内数%しかなく、ハイパー・コンペティションの時代で一時的な競争優位を繋いでいく攻めの考え方が重要、という対比は面白いなと思いました。(第4章 ポーターの戦略だけでは、もう通用しない)

    ・「組織全体の知」に関する話はいろいろな本ででてきますが、「組織の記憶力」に関する話は初めてでした。トランザクティブ・メモリー(誰がそのことについて詳しいかについての記憶)が重要という考え方は、PCの仕組みと同じような捉え方で面白いなと思いました。トランザクティブ・メモリーを検証するための、カップルと他人の実験もよく考えられているなと思いました。私は読んだ本の内容を逐一憶えているわけではないですが、聞かれた時に「あの本のあそこに書かれていたな」と頭の中の索引に引っ掛かることがありますが、これも少し似ているかなと思いました。(第5章 組織の記憶力を高めるにはどうすればよいのか)

    ・内生性の問題は別の本でも読んだことがありますが、より詳しく知ることができてよかったです。特にモデレーティング効果(触媒のような効果)はそういった存在の仮説をまず立てないと検証できなかっただろうなと思い、この発見はすごいなと思いました。(第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには)

    ・「ブラック・スワン」で出てきた講釈の誤り(ものごとの原因の一部を説明する講釈でそれが全てだと納得してしまう)で内生性を見逃すことは多そうです。(第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには)

    ・よく情報システムの導入の効果がわからないという話や企業が宣伝する効果が嘘くさいという話を聞きますが、この章で書かれていたミラー論文の影響分析(P.115)のように展開できれば説得力のある効果を示せるのかなと思いました。(第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには)

    ・問題を解決するには知識の広さと深さの両方が必要だという話はいろいろな本で書かれていますが、イノベーションに求められる要素でも「知の探索」と「知の深化」というのがあるというのは面白いなと思いました。そこから「コンピテンシー・トラップ」という考え方、有名な「イノベーションのジレンマ」が経営陣に焦点を当てているが、組織の本質が「知の深化」の身に集中しがちだという反論に繋がるというのは面白いなと思いました。(第7章 イノベーションに求められる「両利きの経営」とは)

    ・イノベーションについて「技術革新」という訳語を作ってしまったがためにより「知の深化」の方に走ってしまったというような話が「新しい市場のつくりかた」に書かれていました。(第7章 イノベーションに求められる「両利きの経営」とは)

    ・「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」という言葉は、以前にロシアを分析した「新興大国ロシアの国際ビジネス―ビジネス立地と企業活動の進化」という本を読んで著者の造語かなと思っていましたが、一般的な言葉だったのだとこの本を読んで初めて知りました。「関係性の」ソーシャル・ネットワークの話で、強い繋がりより弱い繋がりの方が効率的だということは別の本でも読みましたが、改めて面白いなと思いました。(第8章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(1))

    ・前章でソーシャル・キャピタルという強い繋がりのメリット、関係性のソーシャル・ネットワークという弱い繋がりのメリットが挙げられていて、それらは環境によってどちらが良いのかが異なるというある意味当たり前な結論を、半導体企業と製鉄企業で比較して検証したという話は面白いなと思いました。(第9章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(2))

    ・最後の「構造的な」ソーシャル・ネットワーク、ストラクチュアル・ホール(ネットワークの隙間、異なるネットワーク同士の連結点)の話は、人脈づくりの本などでは当たり前に語られていそうですが、これも経営学の分野として取り上げられていることに驚きました。(第9章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(2))

    ・国民性の距離という観点で海外進出のリスクを測るという考え方はカントリー・リスクを考えるということで昔から当たり前だったと思いますが、その距離を数値化するという考え方は面白いなと思いました。集団主義だからこそ他の集団や文化には馴染めない、個人主義だからこそ他の集団や文化に馴染もうと努力する、という考え方は納得できるなと思いました。(第10章 日本人は本当に集団主義なのか、それはビジネスにはプラスなのか)

    ・距離の近さがやはり重要という話、経済地理学の話、超国家コミュニティの話はこの本でも紹介されているアナリー・サクセニアンの「現代の二都物語」「最新・経済地理学」の両方を読んだことがあるのでその内容の概要が書かれているなと思っただけでしたが、日本もそういった方向でがんばっているということが書かれていてよかったです。(第11章 アントレプレナーシップ活動が国際化しつつあるのはなぜか)

    ・「リアル・オプション」という名前は何度も聞いたことがあり、名前から大体このようなものかと推測していましたが、分散投資によって不確実性を利益に変える方法だということは初めて知りました。この章の後半の、仮定は仮定に過ぎないということ、不確実性を内生的なものと外生的なものに切り分け、内生的なものはリアル・オプションで考える前にできるだけ抑え、外生的なものを対象にリアル・オプションを考えるというやり方は理にかなっているなと思いました。(第12章 不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか)

    ・買収プレミアムの実態が、「思い上がりプレミアム」「あせりプレミアム」「プライドプレミアム」という経営者の心理的なものが大きいということと、その検証方法が面白いなと思いました。こういったことも経営学の対象だとすれば、本当に広範な学問だと思いました。(第13章 なぜ経営者は買収額を払い過ぎてしまうのか)

    ・事業会社がベンチャーキャピタルのように投資をするCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)という分野が研究されていることを初めて知りました。買収ほどのリスクをとらずにさまざまな便益を得られ、買収の前段階としても機能するリアル・オプションとしての効果もあるなど、なかなか面白い分野だなと思いました。(第14章 事業会社のベンチャー投資に求められることは何か)

    ・リソース・ベースト・ビューは経営学を全般的に載せている本では必ずと言っていいほどのせられている考え方ですが、それが「経営学的に」理論と言えるかどうかを攻撃されているという話はいかにも学問的で面白いなと思いました。(第15章 リソース・ベースト・ビューは経営理論といえるのか)

    ・経営学者が経営学やその学界について問題提起していて面白いなと思いました。ヘンリー・ミンツバーグの「戦略サファリ」は最近新しい版のものが本屋で並んでいますが、古い方を読んだことがあり、経営学のバラバラさに改めて驚いた記憶があります。(第16章 経営学は本当に役に立つのか)

    ・前章で挙げた問題について、それを解決しようとしているエビデンス・ベースト・マネジメント(理論を必要としない経営学)やメタ・アナリシス(研究を研究する経営学)、一般的に使われる統計学とは違った方法で調査する手法などが模索されている話は、今後が楽しみな話だなと思いました。(第17章 それでも経営学は進化しつづける)


    ○つっこみどころ
    ・第1章の「よい授業をしても出世できない」というのは日本と一緒で他の二つに比べると勘違いですらないのではと思いました。三つにしたかったので無理やり膨らませたのでは?と思いました。

    ・第4章のタイトル「ポーターの戦略だけでは、もう通用しない」は言い過ぎかなと思いました。ポジショニングやファイブ・フォース、バリュー・チェーンはハイパー・コンペティション下の一時的な競争優位を重ねることにも有用だと思います。

  • 米国の最先端の経営学者達が、『何に関心を持ち、どんなテーマについて、どのような手法で研究しているのか』が分かりやすく書かれている。

    まず、経営学についての3つの「勘違い」から始まる。経営学者は、日本では大人気のドラッカーの本を読まない。これは自分自身の経験からも十分実感できる。MBAレベルにおいても、ドラッカーの著作や論文はほとんど登場しないから。まして、それを超えるレベルでは当然だろう。ドラッカーが「経営学のすべて」であるかの如く演出されていた日本の「ドラッカーブーム」に、著者も相当な違和感を覚えていたことだろう。

    ドラッカーの本は、経営学というよりも「名言」や「経営哲学」の集積である。「名言」だから解釈の幅は広く、人によって解釈も異なる。これは科学とは言えない。だからといって、「経営哲学」に意味がないわけではない。「経営哲学」はとても重要だ。

    ハーバードビジネスレビュー(HBR)は学術誌ではないというのも納得できる。経営者や経営管理者向けに、(最先端の)研究成果を分かりやすく紹介することが同誌の目的だから。もっとも、MBAレベルではHBRを読む機会はかなり多いし、世の中一般水準からみれば相当学術的ではある。

    最後に、ビジネスクールの教授の評価の基準は、良い授業をすることでなく、権威ある学術誌に載せる論文の数だという。ビジネスクールもアカデミックな世界であるから、こうした評価基準は分かるが、行き過ぎてしまうと、現実の経営問題との関連性が希薄になる危険がある。

    著者は、先端経営学の主流が演繹的アプローチに偏りすぎているという点に危惧を抱く。演繹的アプローチとは、仮説を設定し、膨大なデータを統計的なアプローチによって分析し、理論を実証するという方法である。また、研究(理論)の新奇性が重視されるため、90%以上の理論仮説が、その後研究者によって実証研究されていないという。放置された理論が山ほどあるということだ。

    (老婆心ながら)一点注意すべきなのは、Porter(あるいはMintzbergやBarneyなど)の理論が、今では全く役に立たなくなっている、あるいは、学ぶに値しないということではない。定番理論の「他に」も注目すべき経営理論や研究は沢山ある、経営学は日々進歩している、だからこうした最新の動向にも目を向けるべきだ、ということを著者は主張しているのだ。

    定番理論をきっちり押さえるのがいわばMBA教育である。本書の主張の多くは「その上のレベル」の話であることに注意すべきだろう。本書は非常に分かり易く書かれているので、国内外で経営学に関する基礎的な教育を受けていない人にも十分読める内容だが、逆に、(途中のMBAレベルの話が省略されているため)誤解を招く可能性もあるような気がする。

    本書では、参考文献(論文)が随所に紹介されているのが嬉しい。特に、内生性、ソーシャルキャピタル、不確実性などが興味深い。RBVも改めて読み直す必要がありそうだ。論文をダウンロードして、時間を見つけて読んでいきたい。

    (経済学もそうだが)、社会科学である経営学は、現実の企業経営に役立つ知見を提供すべきものであり、「象牙の塔」の中の論理に支配され、研究のあり方が歪められてしまっては意味がない。今後の経営学の方向性に注目したい。

  • 日本人が知っている経営学と最先端の経営学のギャップを埋める本。それぞれのトピックはサラっと触れる程度だけど、視点の勝利と言える。もっとこういう本出て欲しい(^-^)/。

  • 世界の経営学の潮流の一端がつかめる。
    著者のセレクションが素晴らしく、興味の湧くテーマが多かった。
    統計的な取り扱いとか、数式ではなく自然言語定義によるトートロジーなど、学術チックな話は個人的には面白いと思った。
    学際領域故の経済学・社会学・心理学のどれを基本思想とするかで、事象の捉え方が異なるというのも興味ふかい。
    確かに、自分が比較的取り扱う人材や組織というテーマは心理学や社会学をベースにしている気がするが、たまに扱う戦略やマーケ、営業改革などは経済学にベースとする部分が多い気がする。

    実務の観点から見ると、最新の理論は、ちょっと高尚すぎて現場から乖離しているような気がしないでもない。
    現場の悩みはもっとプリミティブなものだという感覚だ。
    個人的には、経営学の理論がもう少し統一されて、現場のリテラシーが高まれば、最新の理論にチャレンジできる機会も増えるかなと思う。
    とはいえ、経営学の一般法則は、やはり●●の産業においてとか、●●の経済状況においてとか、●●の競争環境においてとかの非常に細かい前提において成り立つものなのだと思う。

  • 視点拡大にはなかなかよい。
    ポジショニング戦略競争優位の長さが短くなっているのが実際に観察されているというのはおもしろい。

    【世界の経営学者はいま何を考えているのか読了 ★4つ】
    http://www.amazon.co.jp/dp/4862761097/

    基本的に「実務にオードドックな内容をしっかり押さえていることが重要」と考えているので、主食本としてはお勧めしないが、副食、引き出しを広げる本としてはよいかも。
    あまり知られていない、経営学の最先端がわかる。「最先端」っていってもここ10年20年の話なので、普通の人が知っているのは、それよりさらに昔の経営学ということになる。

    個人的に、記憶に残ったのは、以下2つ。
    ・「戦略の賞味期限、持続的競争優位の期間が短くなっている」というのは、よく言われるが、それが、統計的に検証されているところ
    ・あと、積極的に攻撃的戦略を仕掛けていっている企業の方が好調というのも、統計的に検証されているらしい。

    感覚とはあいますね。

  • 早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏が書き下ろした本。これからMBAを考えている方には必見。学問で経営学のポジションニングや流派、そしてトレンドについてとても簡潔にかつ分かりやすく書かれている。

    第一章:日本人が抱えている経営学の3つの勘違いがある。
    第一にアメリカの経営学者はドラッカーを読んでいないのであるといういこと。それは名言であっても科学ではないから。
    第二に世界の経営学は科学を目指している。経営学者の仕事は「企業経営を科学的な方法で分析し、その結果得られた成果を、教育を通じて社会に還元していく」こと。また「科学」とは「世の中の真理を探究すること」である。
    第三にHBRは学術誌ではないということ。HBRは現実に応用しやすいように組み直した「意思決定・企業分析のためのツール」が紹介されている。科学的な仔細が報告されているわけではないため。
    世界の経営学は科学を目指していが、発展途上の学問である。

    第二章:経営学は居酒屋と何が違うのか。
    経営学は他の化学分野と同様に理論分析と実証分析を行う。理論分析は「なぜそうなるのか」を理論的に説明し、「仮説」を導き出す。そして「仮説」が世の中の企業に一般的にあてはまるのかをテストする必要がある。これが実証分析。
    欧米の経営学者は「理論仮説を立て、それを統計的な手法で検証する」、いわゆる「演繹的なアプローチ」。他方日本の経営学者は一社かあるいは数社の企業を選び、たんねんに観察されるケース・スタディ(事例分析)のアプローチ、いわゆる「昨日的なアプローチ」。
    現在の主流は演繹的アプローチだが、統計分析はビジネスの表層的な部分をとらえがちである。しかし企業の内部に入り込んで、定性的に深く分析することも重要。

    第三章:なぜ経営学には教科書がないのか。
    経営学はマクロとミクロに分かれており、「ミクロ分野」とは企業内部の組織設計や人間関係を分析する研究領域で、「組織行動論」。たとえば人事制度・人間関係・グループ編成・リーダーシップ。「マクロ分野」は企業を一つの単位としてとらえ、その行動や、他企業との競争関係・協調関係・組織構造のありかたを分析。たとえば「経営戦略論」。
    3つの理論ディシプリンがある。①経済学ディシプリン:経済学に基礎をおく。「人は本質的に合理的な選択をするものである」という仮定におかれる。マイケル・ポーターやRBVやリアルオプションもこのディシプリン。
    ②認知心理学ディシプリン:認知心理学に基礎をおく。古典的な経済学が想定するほどには人や組織は情報を処理する能力がなく、それが組織の行動にも影響を及ぼしているという考えを出発点。サイモン教授・野中教授やイノベーション経営の「知の探索・深化」・トラんザクティブ・メモリーというコンセプト。
    ③社会学ディシプリン:人と組織がどのように「社会的に」相互作用するかが研究されており、その理論を応用。一貫した仮定をおかないため、論理にあいまいな部分があるが影響力は絶大。ネットワーク理論やソーシャル・キャピタルがこのコンセプト。

    第四章:ポーターの戦略だけではもう通用しない。
    企業の目的は「持続的な競争優位」を獲得することである。SCPでは優れたポジションをとることで持続的な競争優位を獲得できることであり、とくに「競争が少なく、新規参入が難しく、価格競争が起きにくい産業が望ましい」とされている。したがって、ポーターのSCPは「差別化戦略」が重視され、逆に差別化がないまま、価格だけで勝負するのは避けるべきということ。
    ウィギンズとルエリフの三つの発見。①アメリカでは「持続的な競争優位」を実現する企業は存在するが、2-5%ぐらいにすぎない。②近年持続的な競争優位を実現することは難しなっている。③競争を優位と失ってから再び獲得する企業の数が増加している。「一時的な競争優位の連鎖」。
    ダヴェニはハイパー・コンペティション下では理論的にはより積極的な競争行動をとる企業のほうが高い業績を実現できるといった。
    まとめると、
    ・ポーターの競争戦略論(SCPパラダイム)とはライバルとの競争を避けるための戦略、いわば守りの戦略のことである。
    ・ウィギンズとルエリフの分析によると、ハイパーコンペティションが進展している。
    ・ハイパー・コンペティション下では攻めの競争行動が有効になる。

    第五章:組織の記憶力を高めるにはどうすればよいのか。
    組織のラーニング・カーブは実在し、学習効果の高い企業の利益率も高くなる傾向があり、もっとも高い産業の上位三つはコンピュータ産業・医薬品業・石油精製業であり、低い産業は革なめし業、製糸業、製紙業。トランザクティブ・メモリーとは人の記憶と組織の記憶のメカニズムの違いを説明する考え方。大事なのは、Who knows what、「知のインデックスカード」が重要。グループのパフォーマンスにプラスの影響をもたらすことが分かり、中でも「専門性」と「正確性」が重要。ただし、互いを知ることで自然に形成されるトランザクティブ・メモリーを強制的にゆがめると、むしろ組織の記憶の効率は落ちる可能性がある。

    第六章:「見せかけの経営効果」にだまされないためには。
    多くの経営効果は過大評価されている可能性がある。経営戦略論では回帰分析が多く使われている。これは計量経済学という分野で飛躍的に発展してきたものであり、AがBに影響を与えている可能性があるか、を統計的に分析する手法。計量経済学には「内生性の問題」があり、あたかも因果関係があるかのように過大評価してしまうことがある。経営学ではこの対応が遅れてきたが、現在は内生性の問題を排除することは必須である。惑わされないためには、因果関係図を描く、業績が低迷している企業も対象に加えること。

    第七章:イノベーションに求められる「両利きの経営」とは。
    「イノベーションを生み出す一つの方法は、すでに存在している知と知を組み合わせることである」知識はほどほどに広ければよく、多様すぎてもダメ。企業組織というのは中長期的に「知の深化」に偏りがちで、「知の探索」をなおざりにしがちである。中長期的なイノベーションが停滞するリスクがあり、これを「コンピテンシー・トラップ」と呼んでいる。

    第八章:経営学の三つの「ソーシャル」とは何か。(1)
    ①ソーシャル・キャピタル:人と人が関係性を持つことそのものが資本になりうるという考え。「自分が相手に良いことをすれば、いつかそれが何らかの形で自分に返ってくる」という合理的に信頼できるようになる。深い人間関係がメリットをもたらす、という考え。学力向上にも寄与する。
    ②関係性のソーシャル・ネットワーク
    有用な情報は「弱い結びつきの強さ」からもたらされる。クリエイティブな成果にも寄与。

    第九章:第八章:経営学の三つの「ソーシャル」とは何か。(2)
    「深い」情報は強い信頼関係から入手、「クリエイティブ」な情報は弱い結びつきから入手。半導体やコンピュータ業界は進歩が速いため知の探索が必要であり、弱い結びつきが有効。一方鉄鋼産業は知の深化が重要で、強い結びつきが有効。
    ③構造的なソーシャル・ネットワーク
    情報を自分のところで留めてそれを利用する人が出てくる、ということを考える。ストラクチュアル・ホールを活用する。

    第十章:日本人は本当に集団主義なのか、それはビジネスにはプラスなのか。
    海外進出時のリスク評価指標「CAGE」①国民性(Cultural)②行政上(Administrative)③地理的(Geographic)④所得格差(Economic)で自国との距離を把握する。「ホフステッド指数」とは国民性の概念は①その国の人々が個人を重んじるか、集団を重んじるか②その国の人々が権力に不平等があることをうけいれているか③その国の人々が不確実性を避けがちな傾向があるか④その国の人々が
    競争や自己主義を重んじる「男らしさ」で特徴づけられるか。GLOBE指数もある。
    調査の結果、アジアでは日本は個人主義の傾向が強い。国民性が近いのはポーランドやハンガリーでオランダやスウェーデンは一番遠い。アメリカのような個人主義は外部を一番信用しやすい。

    第十一章:アントレプレナーシップ活動が国際化しつつあるのはなぜか。
    スロヴェニアのスタディオ・モデルナ、シンガポールのアジア・リーナル・ケア、インドのテジャス。一般に起業家やVCは一定の地域に集中する傾向がある。理由は知識は飛ばないためである。リソース入手、ネットワークなどのメリットがある。人と人の直接のコミュニケーションが重要であり、「人に根付いた」深い知識やインフォーマルな情報を求めるため。1知識は人に根付いたものであること、2知識を持つ人が一つの地域内にとどまれる環境があれば知はそこに集積されていくこと。
    VCも飛ばない。平均距離はわずか94キロ。
    アメリカで教育を受けて母国に帰ってたりして、特定の国とインフォーマルなコミュニティが形成されつつあり、インターネットでは手に入らない情報が行き来している。これを「超国家コミュニティ」と呼ぶ。人の移動は逆方向の知識移転も起きており、「頭脳の循環」が起きている。著名なVCは、サンブリッジ代表アレン・マイナー、DCMの伊佐山元、八木博。

    第十二章:不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか。
    経営戦略論の研究者は①コンテンツ派「どのような戦略をとるべきか」②プランニング派「どういうやり方で戦略を立てるべきか」の二種類いる。プランニング派は落ち目。アンゾフの「計画主義」は不確実性の時代には通用しない。ミンツバーグの考える前にまずやってみるべきという「学習主義」。この橋渡しが事業計画法のリアル・オプション。段階的な投資で、将来望ましくない状況が実現した場合のリスクをおさえることができる。また望ましい環境になったらその機会を取り逃がさない。さらに学習ができる。不確実性が高くなるほど上ぶれのチャンスが大きくなる。リアル・オプションで注意する点は、仮定は仮定に過ぎないことを念頭に、「仮定のチェックリスト」を作る。そしてマイルストーン分析で過程の検証する。もう一つは不確実性を仕分けること。コントロールできること、できないことを明確にする。

    第十三章:なぜ経営者は買収額を払いすぎてしまうのか。
    「思い上がり」、「あせり」、「プライド」

    第十四章:事業会社のベンチャー投資に求められることは何か。
    投資額はR&Dの1-3%ぐらいだが、オープンイノベーション戦略である。スタートアップに投資を行うことで業績を高められるのは、投資審査でその技術を知ることができる、技術やビジネスモデルの深い情報が得られる、仮に失敗しても学ぶことが多い。

    第十五章:リソース・ベースト・ビューは経営理論といえるのか。
    RBVとはパフォーマンスを発揮するには、内部リソースに注目すべき、という考え。命題①ある企業のリソースに価値があり、それが希少な時その企業は競争優位を獲得する。②そのリソースが模倣不可能で、代替するものがないとき、その企業は持続的な競争優位を獲得する。
    反証不可能なものは理論命題とはいえない。科学理論にとって重要な条件はその命題が反証可能であること、「その命題が正しくない可能性が論理的に存在すること」である。理論命題は反証が可能なときだけ、それが現実世界で正しいか正しくないかを実証分析できる。

    第十六章:経営学は本当に役立つのか。
    課題①経営学者の理論への偏重が理論の乱立化を引き起こしている。②おもしろい理論への偏重が重要な経営の事実・法則を分析することを妨げている。③平均にもとづく統計手法では、独創的な経営手法で成功している企業を分析できない可能性が残っている。

    第十七章:それでも経営学は進化しつづける。
    エビデンス・ベースト・マネジメントとは、多くの実証研究で確認された経営法則、すなわち「定型化された事実法則」を企業経営の実践にそのまま応用していく考え。「外れ値」企業の分析は定性的な手法(ケース・スタディ)に再注目したり、ベイズ統計を活用する。
    「競争戦略」ポーター1980年、「国富論」アダム・スミス1776年、「雇用・利子および貨幣の一般理論」ケインズ1936年。まだまだ赤ん坊。

  • 読み終わった素直な印象。「経営学って、若い、人間臭い学問だなぁ。でも、だから面白い。」その人間味さえも科学的に分析、解明しようとしている人がいる、っていうのは凄い。

    数学を使う経済学者が数学の基礎をみっちり鍛えるように、自然言語(母国語、英語)を使う経営学者も論理学、科学哲学の基礎を鍛える必要がある、というのは納得。そこが弱いと、命題や仮説に論理の破綻や飛躍、トートロジーが生じてしまう。

    どこまで「目新しさ(interesting)」を追求するか。その理論的仮説が、検証まで落とし込まれていなければ(実学としての役割が果たされていなければ、現実の経営問題を解決する際に役立っていなければ)、これからの経営学を実践の場で活用できない。

    社会科学には、①実証性(事実、現象、分析etc)と②規範性(価値判断、良し悪し)の二面性があることを理解し、区別すること。


    各章の再読項目は、他のレビューにそれぞれ詳しくまとめてあったので、省略。気になったキーワードを何個か。

    ・経営学の三代流派は、①経済学 ②認知心理学 ③社会学

    ・ポーターの「SCPパラダイム」:製品、サービスによる差別化、ポジショニング
    ⇔ワーナーフェルトの「RBV」:資産ベース、知識ベースでの企業リソースそのものの価値、希少性による差別化

    ・統計分析の限界 と 定性分析の必要性

    ・筆者の意味する「世界の経営学」
    =「世界 中のすべての経営学者が必ずしも使っているわけではないけれど、それでも多く の 国で急速に標準化が進んできている 経営学」

    ・①弱い結びつき ②リアル・オプション ③CVC に共通する低リスクでのメリット

    ・苦労のわりに実際に成果に結びつくかが不確実な「知の探索」が、これからのイノベーションには必要。(大)企業は、「知の深化」にこの「探索」を掛け合わせる必要あり。イノベーション促進への手だてとして挙げられる例の一つとして、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)投資。

  • 学生に時の経営学を学び、ドラッカーも読んだが、経営学がいかに論理の学問かがあらためてよく分かった。著者が最後に書いている、エビデンスベースドマネジメント、メタアナリシスに期待します。どちらも医学統計ではよく使われています。

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