ストーリー・ウォーズ――マーケティング界の新たなる希望

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761729

作品紹介・あらすじ

6500万人の心を動かした稀代のマーケターが明かす「神話×欲求」の次世代ストーリー戦略。

感想・レビュー・書評

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  • たわいもない雑談でキャンベルの神話母型の話を持ち出したら強く勧められた本です。実践と事例とキーワード、さらには著者の情熱がページに満ち溢れています。コトラーのマーケティング4.0と完全にシンクロしていると思いました。しかし、マーケティングの大家が自己実現のマーケティングを、進化と捉えているのに対して、バイラルムービーの勇者は従来のマーケティングを「ダークアート・マーケティング」と否定し、「エンパワーメント・マーケティング」の時代であることを饒舌に語ろうとしているところに迫力を感じました。さあ、日本はCSVを取り込むことが出来るか?キーポイントは2020年であることは間違いない?!

  • ストーリーを活かしたマーケティングをおこなうといいと。実践的にどのように構築すればいいのかの演習付き。神話の時代から通じるストーリー、元型(アーキタイプ)、など。古くは女性にタバコを吸わせるマーケティングから、スターウォーズ、アップル、オバマまで幅広く事例を取り上げている。途中のアメリカの政治の話など、わかりにくい部分もありだれる感じだが、後半盛り返すので、そのおつもりで。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:675//Sa12

  • ブロードキャストコミュニケーション vs. オーラルコミュニケーション

    ミーム(リチャード・ドーキンス)
    人の心から心へコピーされる情報

    オーラルコミュニケーション・モデルの文明において、無傷のまま生き残った情報=物語

    物語とはコミュニケーションの一つの形態で、語りの世界観をオーディエンスに伝えるための手段である。そのために語り手は、実在または架空のキャラクターを舞台に上げ、彼らの身に何が起こるのかを示してみせる。個々のキャラクターは自らの価値観をもとにゴールを目指すが、語り手の世界観に従い、ゴールまでの過程で困難に出会ったり、成功を手にしたり、挫折したりする

    物語の明確な真理
    ストーリーウォーズの勝者は必ず、物語の鍵となる教訓、説得力のあるメッセージを一つだけ伝えている。優れた"真理"はシンプルで、語りやすく、記憶に残りやすい。
    cf.厳しい監視の目は、人権侵害を防止できる(アムネスティ)
    強い意志を持ち、勤勉であれば、誰もが驚くべき成果を達成できる(ナイキ)

    物語のヒーローと悪役、そして両者の対立


    物語を殺そうとする5つの大罪
    ①うぬぼれ
    語り手がオーディエンスとそのニーズに焦点をあて、ニーズを満たす"助っ人"の立場に回ったとき、物語は展開しはじめる
    Coke is it! → Open Happiness
    The choice of New Generation → Refresh Everything
    ②権威主義
    ③虚栄
    普遍性の欠如
    "子どもを喜ばせよう"と思わないことを、絶えず念頭に置いている(ピクサー ネイト・スタントン)
    ④偽装
    ⑤下手なユーモア

    神話の構成要素
    ①象徴性
    ②物語と解説と意義
    ③儀式

    宗教や科学やエンターテインメントができなかったこと、つまり、新たな神話を語って経済の発展を促すことを、マーケターに要請した

    神話の持つ象徴性の力。通常なら否定するはずの象徴的な物語を、人々は広告という形で見せられるとつい信じてしまう

    マーケターの語るストーリーは必ず、世界を物語り、解説し、意義を示すという神話の役割を果たしている

    ダークアートマーケティング
    フロイト→エドワード・バーネイズ(PRの祖)
    1920〜50年代 未充足マーケティングの誕生
    人は不完全なのだと伝えることで、強欲や虚栄、不安といった未熟な感情を呼び覚ます。その上で、そうした感情に対する不快感を排除するために、ブランドへの帰属や消費を促す
    人の心に未充足感を生み、未熟な欲求を呼び覚まして、そうした否定的な感情を消費によって和らげようとした
    ①不安の創出 「あなたは、○○ではない」
    ②魔法のソリューションの提示
     象徴性と親和性
     幸福はコーラを買うことで、ステータスはキャデラックに乗ることで、セックスアピールはロレックスを着けることで

    現在と、そして近い将来において考えるに値する唯一の神話は、地球について語ったものです。都市とそこに住む人々についてではなく、地球とそこに生きる全ての人々について語る神話です。未来の神話に関して考えるとき、主に念頭にあるのはその点です。そういう神話が生まれるまで、私たちは何も持ってはいないのです(ジョーゼフ・キャンベル)

    コピーライター ジョン・パワーズの戒律
    ①刺激的であること
    ②真実を伝えること
    ③伝えるべき真実がないなら、現状を見直して、真実を生み出すこと。言い換えるなら、真実を実践すること


    物語の核
    物語の真理が暗示する"価値"

    エンパワーメント・マーケティング
    マズロー 欲求階層説
    ジョゼフ・キャンベル ヒーローズジャーニー
    マズローの理論に基づいて、メッセージやブランドやオーディエンスに合わせた有意義な普遍的価値を見出し、キャンベルの「ヒーローズジャーニー」にならい、その価値を物語の真理へと転換させ、物語の骨組みを築いて、オーディエンスのなかにある英雄的精神をアピールすればいい

    真実を伝えること。さらに言うなら、人間の本質は基本的欲求を満たすことだけではなく、もっと崇高な何かを求めている、という真実を伝えること。これが、ストーリー戦略の基盤となり、コミュニケーションとブランドに新たなブレークスルーをもたらす

    戦術① 未充足マーケティングの嘘を暴く
    VW "Think Small"、
    Dove "Real Beauty"
    物語の真理:理想の美などというものはない、本当の美は真実から生まれる
    コアバリュー:女性はみんな満足していい

    戦術② 子どもではなく、英雄に語りかける
    NIKE ”Courage" あなたが求めるものは既にあなたの中にある
    APPLE "1984"

    戦術③ 消費者ではなく、市民に語りかける
    バラック・オバマ "Yes, We Can"

    マズローの欲求階層
    基本的欲求(生理的、安全)→欠乏欲求(帰属、愛情、承認)→成長欲求(自己実現)
    全体性
    完全性
    正義
    豊かさ
    単純性
    美しさ
    真実
    独自性
    遊び心

    エンパワーメント・マーケティング・ストーリーは、成長欲求と存在欲求を利用する
    エンパワーメント・マーケティングは未充足マーケティングのように、充足感を与えることを重視しない。大切なのは、オーディエンスの価値観と、彼らを激励すること。オーディエンスの欠乏欲求を満たすのではなく、人が成長する上で重視する価値をベースにストーリーを語る。エンパワーメントマーケターは理想へとつながる普遍的価値を提示し、オーディエンスを激励する ー 嘘を見抜け、自分の力を信じろ、過去の過ちを乗り越えろ、複雑性にひるむな...

    このマーケターは重要な真実を語っている、重要な価値観を共有している、と感じたとき、オーディエンスはマーケターのメッセージからパワーをもらっている。そしてオーディエンスは、そのパワーを友達と共有しようとしてメッセージを周囲に広める

    追求したい価値 ブランドを定義する9つの価値(マズローの欲求階層がベース)

    全体性 何か大きな存在の一部として他者とつながっている満足感を覚えたい、自己の利益を超えたものを追求したいという欲求
    完全性 勤勉と努力によって、技術や職業面での熟練を達成したいという欲求
    正義 高い倫理的価値に従いたい、倫理的な社会を実現したい、圧政を妥当したいという欲求
    豊かさ 人生のあらゆる複雑さや多様性を知りたい、新たな経験をしたい、偏見を克服したいという欲求
    単純性 物事の根底にあるものを理解したいという欲求
    美しさ 美的な喜びを経験したい、作り出したいという欲求
    真実 現実を曲げることなく経験し、表現したい、偽りを排除したいという欲求
    独自性 才能や創造力、個性を発揮したいという欲求
    遊び心 楽しい経験がしたいという欲求

    ・ブランドストーリーが伝える価値
    ・製品やサービスが伝える価値
    ・リーダーが掲げる価値
    ・オーディエンスに最も響く価値

    ステージ① 現実の世界/猛犬への招命
    意外な主人公の誕生 オーディエンスがヒーローになるとき
    ブランドヒーローは辺本なのが特徴
    マーケターの仕事は、彼らにヒーローになる方法を示すこと

    見て見ぬフリをするという選択肢 最初の一歩はヒーローが踏み出すもの
    未充足マーケティング=オーディエンスに不満を感じさせ、ブランドをヒーローに仕立てて、消費を促す
    エンパワーメント・マーケティング=ブランドではなく1人ひとりのオーディエンスをヒーローに仕立てることで、より説得力のある物語を語ることができる。真のヒーローは、必要性に迫られてではなく、内なる衝動に駆られて冒険の度に出る
    冒険への招命 住み慣れた快適な場所を離れて、成長と成熟へとつながる価値を追求せよ cf. もっと有意義な仕事をしたい、もっと自己表現したい、信じるもののために立ち上がりたい...

    ステージ② 招命への辞退/メンターとの出会い
    違いを生むメンター ブランドがメンターになるとき

    メンターは名を明かさなければならない WWJD(What Would Jesus Do?)を座右の銘に

    ブランドメンターを理解する ユングの元型

    ブランド価値が遊び心なら、自然の限界を超えて不可能を可能にする「魔法使い」という元型が活用できる。独自性がブランドの価値なら「反逆者」という元型が適している

    ステージ③ ドラゴンの巣窟への接近/宝物の発見
    異世界を旅する ブランドが生む新たな可能性

    敵との遭遇 悪役とは、ヒーローになれなかったヒーローである
    高次の価値を追求するとき、最大の敵は他者のように見える。だが、実は、内なる恐怖や弱さこそが真の敵なのである。この内なる弱さと向き合う全てを見つけたとき、私たちは初めて、外なる敵に立ち向かうことが可能になる

    メンターからのギフト ブランドの独自性を生むものは何か?
    物語では、メンターのギフトは魔法の杖「出エジプト記」、真っ赤な靴[オズの魔法使い」、魔法の剣「アーサー王伝説」であるが、マーケティングでは、ブランドを強く印象付ける、忘れがたいコンセプトやビジュアルがギフトになる。「これさえあれば、きっと何とかなる」とオーディエンスに思わせる、力強いコンセプトやビジュアル

    未充足マーケティングは、オーディエンスの不安をかき立ててから、それを和らげるモノを与えるアプローチに対して、エンパワーメント・マーケティングは、すべてはあなたの努力しだいだとヒーローに委ねるアプローチ。ブランドギフトは不可能に思われた冒険を可能だと思わせる単なるツールであって、ヒーローはあくまで自力で冒険に挑まなければならない。オバマはオンラインツールを活用したが、それでキャンペーンが楽になった訳ではなく、むしろやるべきことは増えただろう。アップルだって、従来にない発想をユーザーに提示したりはしない。ユーザー自身が新たな発想ができるよう、美しいツールを作るだけだ

    ステージ④ 帰路/復活/帰還
    宝物を携えての帰還 ブランドはどんな恩恵を社会にもたらすか?

    ヒーローが異世界で獲得した宝物はヒーローのものではない。コミュニティで共有すべきものだ。冒険の度はつまるところ、ヒーローが世界をよりよい場所にしようとして自らを犠牲にする、無私無欲の行為なのである。ブランドが社会にもたらす恩恵、言い換えるなら、ヒーローを励まして異世界から持ち帰ってこさせた社会へのギフトとは何であるかを理解する。それによって、マーケターは、ストーリー戦略をさらに磨き上げ、心に響く物語を語って、物語がバイラルに拡散する可能性をいっそう高めることができる cf.Dove "Real Beauty"

    真実の開示 物語の真理を明らかにする

    ・物語の構成要素
    ブランド・ヒーロー
    ターゲット・オーディエンスを具現化したキャラクターのこと。ターゲット・オーディエンスを"未来のヒーロー"あるいは、"物語の主人公"として描くことでオーディエンスに行動を促し、彼らにパワーを与え、そして、未充足マーケティングのメッセージから遠ざけることが可能になる

    ステップ① ブランドヒーローに命を吹き込む
    Dove "Real Beauty" 自分の身体に自信が持てずにいる一人の女性。自信が持てないのは、何らかの外的要因のせいだと感じている。ただし、その外的要因が具体的に何なのかを考えることはめったにない

    ステップ② ブランド・ヒーローが、壊れた世界に向けて手紙を書く
    手紙の内容は、ヒーローが属する壊れた世界について。 cf.ハリーポッター

    ステップ③ ブランド・ヒーローの特性をまとめる

    ブランド・メンター
    ブランドを具現化したキャラクターのこと。このキャラクターを明確に造形し、深く理解することで、一貫性のあるメッセージを作り、ブランドに独自性を持たせることが可能になる。ブランドはヒーローではなく、あくまでもヒーローの背中を押す存在だ。このことを理解して初めて、ブランドはオーディエンスに行動を促すことができる

    ステップ① ブランド・メンターの元型を明らかにする

    <開拓者>
    コアバリュー: 豊かさ、独自性、真実
    シャドウ:独立心に富む開拓者は、新しいことや冒険にやみくもに挑もうとする。そのため、時間をかけて価値を追求する辛抱強さに欠ける一面がある
    cf.リーバイス、パタゴニア、サムスン

    <反逆者>
    コアバリュー:正義、独自性、真実
    シャドウ:反逆者は破壊者と間違われやすい。破壊者とは、創造的破壊ではなく虚無的な無秩序を志向するキャラクターである
    cf.(初期の)アップル、ウォール街占拠活動、ハーレー、ヴァージン

    <魔法使い>
    コアバリュー:遊び心、完全性、美しさ
    シャドウ:魔法使いは謎に包まれたキャラクターだ。そのため、ペテン師と誤解されることがある
    cf. ピクサー、メイクアウィッシュ、トムス・シューズ

    <道化師>
    コアバリュー:遊び心、正義、単純性
    シャドウ:道化師は軽薄に走る傾向がある。人生の美しさや人の可能性を、笑いのネタにしたくなる誘惑に負けないように注意しなければならない
    cf. ベン&ジェリーズ、イエス・メン、ガイコ、ザ・マペッツ

    <指揮者>
    コアバリュー:全体性、完全性、真実
    シャドウ:指揮官は常に、オーディエンスに命令したい、威張りたいという誘惑に負けないように注意しなければならない。この誘惑に負ければ、指揮官はいとも簡単に暴君となってしまうからだ。
    cf. オバマフォーアメリカ、ナイキ、リブストロング、Newt2012

    <守護者>
    コアバリュー:正義、完全性、全体性
    シャドウ:守護者はどんな社会にもなくてはならない存在だ。しかし社会が譲歩したときにも、過去にこだわりつづけて変化を受け入れようとしない頑固さがある
    cf. グリーンピース、共和党、ボーイスカウト

    <女神>
    コアバリュー:美しさ、豊かさ、独自性
    シャドウ:女性の慎ましい人となりは確かに貴重だ。しかし場合によっては受け身になりすぎて、必要とされているときにも影響力を発揮できなかったり、声をあげられなかったりする
    cf. レゴ、イケア、Etsy、ホームデポ、(最近の)アップル

    ステップ② メンターをヒーローに引き合わせる
    ヒーローはなんと言って招命を拒むか?メンターはどうやってヒーローの勇気を引き出すか?

    現実世界における冒険への招命
    アップル Think Different
    ナイキ Just Do It
    オバマ Yes, We Can
    VW Live Below Your Means(分相応の生活をしよう)
    リーバイス Go Forth


    ブランド・ギフト
    ブランドを特別なものにするツール。ブランド・ヒーローにとっては、ブランドとの関係構築を通じて高次の価値を追求できると信じるきっかけともなる

    感情に訴えかける何かが備わっていなければ、オーディエンスの心にブランドを強く印象づけることはできない

    ・メンターの元型を参考にする
    女神ブランドのギフトなら、デザイン性に優れた製品など、視覚的な美しさが考えられる。魔法使いブランドなら、革新的テクノロジーなど、それまで存在しなかった何かがギフトになり得る。指揮官ブランドなら、オバマのネットキャンペーンなど、優れた戦略がギフトとして考えられる

    ・すでに持っている差別化要因をギフトにする
    差別化要因やUSPはギフトに最適。単なるブランドポジショニングはギフトにはならない
    cf.コカコーラ Joy、リブストロング 黄色のブレスレット、ターゲット デザイナーとのコラボ事業


    物語の真理
    あらゆる物語がときにさりげなく、ときに公然と伝える中核的なメッセージのこと。真理は、物語の筋、キャラクター、物語の形式などを介して示すことができる。意義を伝えていること、ブランド・コミュニケーションとの一貫性があることが不可欠である

    ブランドの恩恵
    ブランド・ヒーローが社会にもたらす恩恵のこと。エンパワーメント・マーケティングのアプローチは、ブランド・ヒーローに自らの成熟を促すだけでなく、ヒーローが属する社会をよりよいものにする義務を果たすものである

    ステップ① ヒーローがメンターに手紙を書く
    ヒーローが世界に持ち帰ろうとした知識やアイデア、モノを明確に。このビジョンこそが、"ブランドの恩恵"となる
    cf. VW ステータス獲得競争からの解放

    ステップ② 物語の真理を見つける
    ヒーローがメンターとともに獲得した知恵、それこそが"物語の真理"。
    cf. Dove 真実は美しく、人はみな美しいというのが真実である
    パタゴニア 地球に与えるダメージを最小限に食い止めながら、人生を思いっきり楽しむ。そのとき人生は最も輝く


    グレートストーリーに必要な3つのデバイス
    刺激的な物語を作るための最高の道具

    ①異形のもの
    見知らぬ顔、それは、アダムにとって危険信号だ

    人間の中枢神経系は、予期した世界と予期せぬ世界に、異なる反応を示すように進化を遂げてきたと思われる。そして情報が予期せぬものであればあるほど、その処理には多くの時間が費やされる(認知心理学者 ジェローム・ブルナー)

    物語の主な機能の一つは、社会状況に対する私たちの理解を深め、予期せぬものとの出会いに備えさせること(ブライアン・ボイド)

    物語のテーマが気候変動対策であれ、より使いやすいボールペンの開発であれ、オーディエンスの興味を引くには、事実や問題点を指摘するだけでは不十分である。彼らの心をつかむには、まったく思いがけないキャラクターを登場させる必要があるのだ。オーディエンスは、それがいったい何者なのか、異形の者は次にいったい何をするのか、早く知りたくて意識を向けるのである
    cf. Old Spice イザイア・ムスタファ

    ②馴染みのもの
    パロディ cf. Old Spice 既存の化粧品CMのスタイル

    ③裏切りもの
    愛他主義を実践するための堅固な権力構造が存在しなかったころ、私たちは社会的期待の重要性を物語を介して伝え、期待に背く者は罰を与えられるのだと自分たちに言い聞かせていた
    cf. Old Spice カレが女性用のボディウォッシュを使っていること
     ベッド・イントルーダーソング


    物語を構築する
    ブランド神話を構築するのに必要な3つの物語

    ①創世の物語
    企業の設立を語る物語

    ②象徴的な物語
    架空のキャラクターやシンボル、シチュエーションなどを使って、深い真実を語る物語

    ③ドキュメンタリー
    現実の出来事をメッセージとして伝える物語

    舞台の設定
    ステップ① 物語の種類を選ぶ
    3種類の物語から、どれを作るかまず決める

    ステップ② 物語の主役を"馴染みのあるもの"として描く
    ブランド・ヒーローの部族の特徴を主役に与える

    ・主役に「ブランド・ヒーローの属する世界と同じように、主役の属する世界も壊れている」と宣言させる
    cf. ウェンディーズ "Where's beef?"

    ・ブランド・ヒーローが主役に自己投影しやすいよう、主役の暮らしをリアルに描く

    ・主役が英雄の旅の出発点にいれば、ブランド・ヒーローが感じているためらいや疑念を共有しているはずだ。反対に、主役がすでに英雄の旅を終えていれば、かつては一般市民だったことがわかる

    創世の物語
    物語の主人公は一個人か少人数のグループで、地図も明確なプランもないまま、よりよいアプローチで何かを成し遂げる方法を探しに出かける。主役は情熱家で粘り強く、リスクを恐れないが、超人ではない。より人間くさい方が、オーディエンスには馴染みのある存在に感じられる

    象徴的な物語
    ゼロから造形。ただし、いかにもブランド・ヒーローの投影像といったタイプの主役にはしないこと。オーディエンスに馴染みのあるポップカルチャーのパロディ、主役やその属する世界を、よく知られたキャラクターやシチュエーションになぞらえることでも、オーディエンスに馴染み深さを与えられる

    ドキュメンタリー
    ブランドが個人の生活をどのように改善するかを描くことが不可欠

    ステップ③ 物語の主役を、"異形の者"として描く
    ヒーローの予想を覆す属性を主役に持たせることで、ヒーローの関心を引く
    cf. 「美女と野獣」の野獣、ハリーポッターは子どもなのに世界を救う、「フォレストガンプ」はうすのろだが人生の教訓を教えてくれる

    ステップ④ 物語の主役を"裏切り者"として描く
    もはや機能しなくなった社会規範に背こうとする主役

    創世の物語
    愛他精神に満ちた世界を目指す反逆行為としてブランドの誕生を描くことが出来れば、物語の共鳴性を大きく高めることが可能
    cf.グラミン銀行、Wikipedia

    象徴的な物語とドキュメンタリー
    現実の、または架空のキャラクターが主役となり、壊れた世界に抵抗している

    ステップ⑤ 敵を造形する
    cf. アップル-IBM、マイクロソフト
    VW-ステータスを売る自動車メーカー
    ベン&ジェリーズ-ハーゲンダッツ

    ステップ⑥ トーンを決める
    ブランド・メンターとして選んだ元型を参照する。個々の元型には、特定のトーンが備わっている。メンターのトーンを正しく理解し、そのトーンで語ることが重要
    遊び心に富む元型 ユーモア、奇想、意外な対比、皮肉、パロディ
    シリアスな元型 誇り、楽観主義、怒りなどのシンプルな感情を呼び覚ますような語り
    指示的な元型 メンターとして相手に明確な道筋を示し、指示する語り口
    インスピレーショナルな元型 オーディエンスが自ら旅の道筋を見つけられるよう、行動を促す

    ステップ⑦ 物語の下絵を描く

  • 2013年8冊目。

    自社本のため割愛。

  • 商品の良さを間接的に訴えるソフトセルや
    商品の良さを直接的に訴えるハードセル、そのような広告手法が従来は一般的であった。

    しかし、これからの時代は、違う。
    今迄は違う見るものに共感を与えるストーリーこそが
    広告に使われるべきだとこの本は主張していた。
    今までとは違う手法が、実践で使えられるように、
    こと細かく記載してあり、大変参考になった。

    ★KEY point
    ・物語とは語り手の世界観を伝えるための手段
    ・物語の最初の構成要素は"真理"
    物語の大事なポイント
    ・具体性:必要な情報を提示して、コンセプトを具体的に示しているかどうか。
    ・共感性:キャラクターの価値観に、オーディエンスが共感できるかどうか。
    ・没入性:オーディエンスが物語を追体験できるかどうか。
    ・記憶性:オーディエンスが無意識のうちにメッセージを記憶できるかどうか。
    ・感受性:オーディエンスがメッセージを心で感じ取れるかどうか。
    ・ストーリーマーケティングは自己実現の欲求を満たす。
    「アブラハム・マズローの欲求階層」
    ・(上位から)自己実現の欲求→承認の欲求→愛情や帰属の欲求→安全の欲求→生理的な欲求

  • 一言でいえば、色々と示唆を与えてくれる良書である。

    この本は、マーケティングでも、何らかのプロジェクトでのリーダーシップでも、実際に何らかの創作活動でも、ストーリーを生み出すことが必要な人へ「定石」を示してくれる。
    どんな活動でも「定石」があり、それを基本的には使いこなしているのは周知の事実だし、うまくいっているものは、多かれ少なかれそういうものだ。

    この本を読んで色々と考えたのは、「リーダー」のことである。次のリーダーに必要なのは、以下の4つのポイントだと考えるようになった。

    * 語るためのビジョンと言葉
    * 感性に訴えかけるUX
    * 技術に対する広い知見
    * 収益獲得とコスト削減アイデア

    この本には、「ビジョン」を「言葉」として他者に伝えるノウハウがたくさん詰まっている。

    現実は複雑なのに「水戸黄門」のようなシンプルな表現で興味・共感を作ろうとするのが今のマスコミなのだと気が付いた。教育の中で創作活動の比重が減っているのもこういう「作っている側の論理」を理解できない人を増やしているのだと思う。せっかくのネットという道具を我々は得たのだから、コンフリクトがある世の中でよりよい議論と決定をしていくことが大事だ。

    「人を動かす力強い魔法」は良い魔法使いだけが使うべきだ。

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著者プロフィール

フリー・レンジ・スタジオ共同創業者兼CEO。社会的イシューをテーマとするバイラルビデオの制作プロデュース、ソーシャルブランドや社会貢献プロジェクトのストーリー戦略立案を手がける。2005年にジョージ・ルーカス公認の『スター・ウォーズ』パロディ・ドキュメンタリー、「グロッサリー・ストア・ウォーズ」で注目を集める。その他にも「ミートリックス」「モノ物語」などの伝説的バイラルビデオで延べ6500万人以上のオーディエンスを獲得。手がけた作品は、世界的なメディア・カンファレンス「サウス・バイ・サウスウエスト・インタラクティブ・フェスティバル」において、「最優秀賞」を3度受賞した。

「2013年 『ストーリー・ウォーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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