チームが機能するとはどういうことか──「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
- 英治出版 (2014年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862761828
作品紹介・あらすじ
「チーム」から「チーミング」へ。これまでの「チーム」とは、スポーツチームや音楽家のグループのように、物理的に同じ場所にいて、信頼を築く時間がある、固定された集団だった。しかし現在はどうだろう。メンバーは世界中にいて、目的達成とともに解散する、流動的な集団へと変わりつつある。-いま、チームを機能させるためには何が必要なのか?病院、工場、役員室、被災現場…。20年以上にわたって多様な人と組織を見つめてきた著者が、「チーミング」という概念をもとに、学習する力と実行する力を兼ね備えた新時代のチームの作り方を描く。
感想・レビュー・書評
-
チームが機能するときに内部で何が起きているかを詳細にまとめた一冊。
例えば、チーム一人一人が自分で考えて自律的に動いているだけではダメ。なぜなら、自律的に動くということは責任とリスクを冒す必要が伴い、そこに一定の恐怖心が発生するから。なので重要なのは、チームが自律的に動きながらも、そこに安心感を覚えられる環境が無ければ、チームとしての進歩も革新性ある行動も生まれない、とのこと。
では、そのためにリーダーはどうあるべきか。支配するのではなく人々に自信を持たせ、答えを与えるのではなく適切な質問をする。そして、忠実さを要求するのではなく柔軟さに意識を向けること。
そうすれば、人々は自分たちの考えが歓迎されていることがわかり、自分で考えて質を高める方法を生み出し始める。その結果、組織の成功にとって一層強固な土台になっていく、とのこと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
複雑性が高く、先を見通すことが困難な時代に、多様な人材が集うチームが成功するにはどうすれば良いのか。「チーミング」という概念と新たなリーダーシップにより、「学習しながら実行する組織」をつくるための理論と実践の書。
「チーミング」とは、チームメンバーが常に「素直に意見を言い合い」ながら「協働」し、「試しにやってみる」ことと「振り返る」ことを繰り返す行動様式であり、これを可能にするためにはリーダーが、チームとは"指示命令の対象"ではなく、"共に学ぶ主体"であるという意識改革(リフレーミング)を行い、メンバーが安心して行動し、失敗から学び、様々な壁を越えて相互依存できる環境を整える必要があると説く。
「学習しながら実行する」ための方法論や阻害要因(例えば組織が失敗を許容することの難しさ)について、①ルーチン業務、②複雑な業務、③イノベーション業務ごとに異なる事情をふまえて整理するなど、人々の「仕事の実態」に即して緻密に組み立てられた内容となっており、決して手軽に読める分量ではないが、読み手の誰もが自身の所属するチームにあてはめて考え、行動することができる良書。 -
【はじめに】
著者のエドモンドソンは、チームのパフォーマンスを左右する要素を分析するGoogleのプロジェクト・アリストテレスで、彼女の1999年の論文が鍵となる心理的安全性を論じたものとして参照されたことで有名となった。本書の原著は2012年の出版で、プロジェクト・アリストテレスの結果が報告された2015年の前に出版されたものである。「心理的安全性」がそれほど注目されていない時期に書かれたものであるため、その後に生じた心理的安全性への注目の影響からのバイアスなく著者の組織論における心理的安全性の位置づけを比較的正確に知ることができる内容となっている。具体的には、著者が主張する「学習するための組織論」という中心概念があり、その中での重要な要素として心理的安全性の確立が位置付けられている。心理的安全性が流行に沿って導入されたものではなく、著者の研究の流れからして必然的に導かれたものだということも理解できるだろう。
一方、2021年に日本版が出版された『恐れのない組織――「心理的安全性」が、学習・イノベーション・成長をもたらす』の方は2019年が原著の刊行年。こちらは、「心理的安全性」という概念に寄せた本になっている。そちらの方に直接的に興味がある人は、おそらく本書ではなく『恐れのない組織』を方を読んだ方がよいだろう。自分は、まず『恐れのない組織』を読んだ後、続いて本書を読むこととなったため、心理的安全性とは何かという著者の考えが明確になっていたことから比較的理解が進んだ。
【概要】
■ チーミングとは
原題は"TEAMING ― How Organization Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy" である。
「チーミング」という新しい働き方の概念を提唱し、学習するための組織とは何か、リーダがいかにしてフレーミングを行うべきか、心理的安全性がある組織をどうやって作るのか、上手に失敗するために何をすべきか、そして境界を越えたチーミングを行うにはどうすればよいか、が語られる。
■ 心理的安全性とは
著者は、成功しているチームは「率直に意見を言う」「協働する」「試みる」「省察する」の四つの行動を実践しているという。この四つのうち、特に最初の「率直に意見を言う」は、いわゆる心理的安全性に直接関わるものである。この心理的安全性によってチーミングと組織学習が可能になるという。
心理的安全性のメリットとしては次の七つが挙げられる。
- 率直に話すことが奨励される
- 考えが明晰になる
- 意義ある対立が後押しされる
- 失敗が緩和される
- イノベーションが促される
- 成功という目標を追求する上での障害が取り除かれる
- 責任が向上する
いずれも新しいことや成長を目指す組織においては非常に重要なものだ。逆に、上記の七つが実現されていないチームでは、心理的安全性が確保されていないということになる。そう考えるとさらに心理的安全性の重要性が強調される。
では、なぜそれだけメリットのある心理的安全性が確保されないのか。それは、心理的安全性が、特に通常のヒエラルキー型組織では「対人リスク」のために失われがちだからである。なぜなら人は、生まれつき社会に適応した結果として、権力や序列に敏感になっているからだ。人は自分のポジションをよく理解しており、対人リスクをどの程度冒すことがどれくらい安全と考えるかが自らのポジションから決まってくる。
「ほとんどの人が、私が対人リスクと呼ぶもの、つまり他の人にばかにされるリスクを何とかしなければならないと思っている」
意志と継続的な努力なく、心理的安全性は確保されることがないのである。そして、それは「率直に話そう」と表面的に言うだけでは絶対に得られることはないものである。それどころか、「心理的安全性を直接的かつあからさまに生み出そうと重点的に取り組むのは、必要な変化を生み出す方法として間違っている」と著者は考える。
心理的安全性はリーダーがまず確保するが、それは組織の中で「経験の共有を通してこそ育つ共通の感覚である」。上長の職位にあるものが、問題があればいつでも話にきなさい、と言ってもそれだけでは何も変わらない。具体的な手段を講じることが必要だとして、著者はリーダーが取りうる行動として次の行動を挙げる。
・直接話のできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・参加を促す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・具体的な言葉を使う
・境界を設ける
・境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる
■ 上手に失敗すること
「上手に失敗して、早く成功する」 ことが重要だと著者は言う。失敗は悪いものではない。失敗から学ぶことは簡単ではない。しかも、チーミングには失敗がつきものである。
階層が上がれば失敗への恐れから自由になると考えるかもしれないが、実体は全くそうではない。逆に地位が高くなればなるほど、失敗に対する社会的、心理的に受ける罰が大きくなり、失敗を隠すようになる。
著者は、失敗にもレベルがあるとして、失敗のスペクトルというものを提唱する。本当に非難に値する失敗と非難に値するもののように扱われているだけの失敗とを分けることが必要なのである。本当に非難されるべき失敗(防ぐことのできる失敗)は数ある失敗の中の一部であり、本来個人の責に帰するべきではない失敗(複雑な失敗)や称賛されるべき失敗(知的な失敗)が同じようにまとめて個人の失敗として非難されがちである。
失敗のスペクトルとは以下のようなレベルのことをいう。
逸脱>不注意>能力不足>プロセスの不備>困難な仕事>プロセスの複雑さ>不確実性>仮説検証>探査実験
日本社会は空気を読むことが多いことから、失敗の隠蔽はより当てはまるのではないかと思われるかもしれないが、著者は失敗から学ぶことにかけてトヨタ生産方式(TPS)のアンドンは類を見ない仕組みであると賞賛している。上手に失敗することは、社会の特質ではなく、システムで対処可能な課題でもあるのだ。そして、トヨタのアンドンがそうであるように、失敗は早く表に出して、費用対効率高く学習されるべきなのだ。失敗から学ぶ力を身につけることは組織の責務になる。そのためのプロセスやインセンティブを組織的に設計することが重要となる。多くの組織はそうなっていない。通常は失敗を恐れて避けようとすることから、そういう組織になるのはとても難しいことだ。
■ 境界について
優れたチーミングは境界を超えるという。境界とは物理的な距離の場合もあるし(現在ではリモートワークのためさらに多く顕在化している)、地位や格差によるものもあるし、知識レベルの差であることもある。今日の組織では、多様性の確保のためにこういった多くの境界の障壁を超えて協働することが必要になる。現在のチーミングにおいてはそのことは非常に重要でアクチュアルな課題である。
■ 学習する組織
著者は、「学習しながら実行する」ことを「効率を追求しながら実行する」に対比させる。後者において、リーダーは答えを与えるのに対して、前者においてリーダーは方向性を与えるのである。後者ではリーダーは答えを持っていることが必要だが、VUCAの時代において、リーダー含めて誰もが答えを持っているわけではない。その場合には、リーダーから部下への一方通行のコミュニケーションだけではなく、双方向のフィードバックが必要で、絶えざる変化と社員よる日々の判断が不可欠となっているのである。
著者はそのことを「ベストプラクティスは動く標的である」と表現する。
また著者は業務にも、ルーチン業務>複雑な業務>イノベーションの業務という形でのスペクトラムがあるとする。これらの業務のスペクトラムの中では必要になるスキルやアクションが違ってくる。そして、現代では、ますますイノベーション業務のスペクトラムに重心が寄ってきているというのがその見立てである。だからこそ「チーミング」がますます重要になってくるのだ。VUCAの時代においては常に学習のサイクルを回すことが必要であり、学習する組織を作らなければならない。そのためにこそリーダーシップが必要になってくるというのが著者の結論である。
【所感】
同じ著者の『恐れのない組織』の方が心理的安全性というテーマで一本筋が通っている分読みやすいかもしれない。もちろん本書でも心理的安全性は中心テーマのひとつではあるが、学習する組織を構築するための組織論というその上位テーマがあって、そのバランスが若干悪い感じがする。あまりにも「心理的安全性」が自分の中でも大きなテーマとして頭の中にあるからなのかもしれない。
チーミングが重要であることは間違いない。でも、もしかしたら両方とも読む必要はなかったかも。
----
『 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』 (エイミー・C・エドモンドソン)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4862762883 -
・はっきり意見を言う
・学習しながら実行する
▶︎答えを与えるのでなく、方向性を定める
・思い込み(認知フレーム)をなくし、同じ状況を、異なる観点からみる(リフレーミング)
・心理的安全性を高める
▶︎メンバーを尊敬していることをはっきり伝える
▶︎自分もよく間違える、知識の限界があることを示す
▶︎具体的な言葉を使う
▶︎個人として親しみやすい人になる
・学習するための組織づくり
▶︎ミスから素早く学ぶこと、その学びを共有すること
心理的安全が低いと、優れた知識やアイディアがあっても組織で発言されない。リーダーが話しやすい環境を作らなければならない。 -
■チームを率いるすべての人におすすめ
この本はタイトルの通り「チーム」についての研究です。
チームとしてうまくまとまるチーム、まとまらないチーム。
うまく結果を出せるチーム、出せないチーム。
誰しも色んなチームを見たり、自分で経験したりしてると思いますが、
そういうチームというものの運営に興味のある人はぜひぜひ読んでみて欲しい1冊。
基本的にビジネス書に分類される本だと思いますし、ベースとなっているのはさまざまな経営理論の知見です。しかし、チームというのはビジネスの場だけのものではもちろんなくて、NPOなどNon Profitな様々な組織にも活かせるし、学校の教室運営なんかにも応用可能な内容が盛りだくさんでした。
■最新の理論をチームにおける「リーダーシップ」の観点から再定義
付箋貼ったとこ全部取り上げていたらきりがないので、ざっくりとまとめますと、
この本の価値はリーダーの役割を再定義したこと、でしょう。
古今東西の様々な経営理論、リーダーシップ論に加えて、心理学などの最新の成果を盛り込みつつ、著者自身によるインタビューや実験などの研究結果の集大成と言える本なのですが、
いろいろな理論を参照しているのでこの手の本を読み慣れている人にとっては、前提の整理自体は目新しいものではないと思います。
・チームが立ち向かう課題は分類することができる
・ルーチン業務、複雑な業務、イノベーションの業務
・それぞれのチームが関わる課題が何なのかを見極めることが大切である
・業務によって目指すべきチームの形は変わる
・いまの時代、これまでのルーチン業務で対処できる問題ばかりではなく、イノベーションの業務が増えている
・イノベーションの業務には上手に失敗し、早く成功する「学習する組織(チーム)」を作ることが大切である
特に後半、学習する組織という議論自体は、近年言われているリーンスタートアップとほぼ重複する内容です。引かれている理想事例もトヨタウェイであったり、IDEOであったりと、おなじみの顔ぶれ。
ただ、リーンスタートアップを読んだ時もそうだったんですが、
うん、そういう体制作れたらすごいよね、
とは思うんだけど、じゃあ実際にどうしたらいいの?ってなるんですよね。
その大切さはわかったけど、自分一人その大切さが分かっても仕方がなくて、
リーンなチームに生まれ変わるために、チームメイトにどう働きかけていけばいいの?っていう部分がよく分からない本が多かった。
それに対してこの本は、適切なチーミングを発揮していくためにリーダーが果たすべき役割を示すことに重点を置いています。
各章の終わりには必ず「リーダーシップのまとめ」が行われ、さまざまに展開する議論をリーダーとしての役割から整理し直してくれます。
■フレーミングの大切さ
おそらく自分自身がどのような課題をもって、どのような組織に関わっているかによって、深く考えるポイントは人それぞれなのではないかと思います。
僕がものすごく大切だな、と感じたのは「フレーミング」というリーダーの役割。
チームをどのような組織として定義づけるか、というようなことですが、そこにはいくつかの段階がある。
・リーダーの役割…リーダーは専門家としてフレーミングするか、それともメンバーと相互依存する存在としてフレーミングするか
・チームの役割…チームのメンバーは技術に長けた補助スタッフとしてフレーミングするか、権限を与えられたパートナーとしてフレーミングされるか
・プロジェクトの目的…プロジェクトの目的が、受け身で消極的なものとして伝えられるか、向上心あふれるものとして伝えられるか
「これから新しいことやるから、よろしく」みたいな掛け声はよく聞く。イノベーションの課題に立ち向かうチームを作ろうとしている場面で。声をかけているリーダー自身も、良いチームを作ろうとして声をかけているが、うまくいかないことがあるのは、きっと3つの要素のうちの何かが欠けているんだろう。
リーダー自身の関わり方が微妙であったり、目的自体の設定が微妙であったり、これまで関わってきたいくつかのチームを振り返って、ものすごくなるほどな、と思った。
また、チームの役割という部分もなかなか難しくて、メンバー間に理解の差があるとたぶんうまくいかない。自分たちは権限を与えられたパートナーなんだ、主体的に関わっていくべきだと全員が認識しなくてはならないし、チーム内に専門家が混ざっている場合もその専門性があるからといって無意味な序列を残してはいけない。ここらへんをチームのスタートの段階で、手を抜かずに、丁寧に行う必要がある。
他のメンバーはそれぞれに別の視点を持っていること、自分とは違った角度からものを見たり解釈しているかもしれないことをはっきりと意識し、お互いに話し合うこと
これこそが学習する組織としての本質である。そして著者はこうした状況は「企業その他の組織的環境において生じることはまずない」と言い切る。これはリーダーの役割なのだ。
フレーミングにおけるステップは「登録」「準備」「試行」「省察」の4段階があるが、このうちリーダーのフレーミングとして特に大切だと感じたのは一番最初の「登録」段階。
登録とはチームに加わってもらうメンバーをリーダーが厳選するステップとされます。
「このステップの重要な特徴は、プロジェクトや役割のために特別に選ばれていることを、本人にはっきりと伝えることだ。これにより、専門技術の上でも気持ちの上でもその仕事に深くかかわる用意が整うのである」
チームの作られ方にはいろいろあるので、必ずしもリーダー自身が厳選したメンバーではないこともあるだろうし、現実的に専門性やスキルの面で選ばれた特別チームを率いるなんて場面は少ないと思う。それでもこの段階の大切さは変わらないでしょう。むしろ客観的な専門性に裏付けされていないチームのときの方が大切でしょうね。メンバー側に自分でいいのだろうか、とか自分たちでできるんだろうかという不安があるわけだから。
例えば自分の経験に照らすと、課題解決型のNPOの現場でボランティアチームを率いる場合、ボランティアメンバーにはその分野における専門性なんかはまったくない場合がほとんど。むしろリーダーすうら専門職ではない場合すらある。それでもそうした課題解決型のNPOが直面する現場というのは明らかに正解のないイノベーションが求められる現場です。であるならば、初心者であっても、知識がなくてもそれに臆することなく、試行を繰り返していくための大切なメンバーであり、コミュニケーションをオープンにしていくことを、初期の段階でしっかりとフレーミングする必要がある、ということですね。
■不安を取り除きコミュニケーションをオープンにする
また、このコミュニケーションをオープンにするということのためにも、リーダーは心を砕く必要がある。
基本的に人は組織におけるコミュニケーションに心理的な不安を感じているから。
その不安には、いくつかのパターンがある。
・無知だと思われる不安
・無能だと思われる不安
・ネガディブだと思われる不安
・邪魔をする人だと思われる不安
率直に話ができる環境でなくては課題解決を続けていくことはむずかしい。
では、こうした不安を取り除くためにリーダーが採るべき行動は、
・直接話しのできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・参加を促す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・具体的な言葉を使う
・境界を設ける…非難に値する行動をできる限り明確にする
・境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる…受け入れられない行動は公正に対処されることを示す
■失敗を歓迎することの意味
組織内の不安を取り除くという意味ではメンバー間のコミュニケーションと並んで、試行を繰り返してい行くことが重要だが、そのためには失敗の必然性と価値の両方を理解しているというメッセージを打ち出すことが大切である。
失敗も価値あるものであり、インセンティブを与えるべきである。
「多くのマネージャーは、社員が失敗は成功と同じくらい良いものだと考え始めてしまうのではないかと思って、何でも許される気ままな雰囲気が作られてしまうことを懸念している。しかし現実には、ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる。誰しも成功したい、能力を認められたいという願いをもともと持っているのだ」
「正式な評価基準や報奨金の問題ではなく、失敗から学んだ教訓を公式ではない場で認めたり祝ったりするかどうかの問題である」
これはなるほどと思うと同時に同感。筆者が言う「ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる」と言うのは、無闇にヒトの性善性を信じるというのとは違って、ヒトの社会的欲求を軸とした考え方であり、ポジティブな感情が力を発揮できるようにすることである。うん、これは大切だね。
■すべてがこうあってほしいと思うくらいにベストだったか?
さて、最後に引用するのは、チームにコミュニケーションを促し、ポジティブな試行に取り組ませるようにするためのリーダーの質問のパワー。
複雑でミスが起こりやすい(必然とさえ捉えられている)医療現場という環境において、医療ミスについての改善を促すために、リーダーが放った質問は
「じゃあ今週、各部署で、担当の感情について、実際にどんなことを経験したか、教えてもらえる?すべてがこうあってほしいと思うのと同じくらいに安全だったかしら」
単に「安全でないことがありませんでしたか」と問うのとは意味がまったく異なる。これはシンプルだけど、ものすごい大切ですよね。どれだけ言いやすい、考えやすい環境を作れるか。 -
一言で言えば使える本である。チームの失敗に真摯に向き合い、きちんと分析してあり、実務に活かせる内容である。
実は今まさに仕事で悩んでいた事について悩んでいたので手にとってみた。もし読まなければ、間違った選択をしてしまいそうだった。そう言う意味でも感謝したい。
結局のところ、他人は変えられないが、環境、本書ではフレーミングの記述されるものを変化させる事で、チームをより良い方向に向かわせる。その鍵になるのが、心理的な安全を高め、上手に失敗するメンタリティを持たせる事である。
以前私が失敗したのは、恐怖政治にしてしまったことだと気付いた。安全を感じれば小さな失敗をクヨクヨしない。北風と太陽の話はやはり大事である。
「運用」という仕事は、ルーチン、複雑、イノベーションと三種類のものがどんどん出てくる。さらに緊急度の高いものも少なくない。自分に芯を持ってあたらなければ、心が折れそうになる。
そういう意味でもこの本は、自分で頑張りすぎず、他者を巻き込む時の勘所を再認識させてくれた。この知見を活かし今の仕事をより良くしていく。 -
2015年36冊目。(再読)
自社本のため割愛。
====================
2014年55冊目。(初読:2014年6月5日) -
様々な資料に基づいたチーミングの問題と具体的な解決例成功例が載っている。
エピソードが多くチーミングの課題に即していないときに読むと、冗長に感じる。具体的な問題に直面したら辞書的に読みたい。 -
素晴らしい本。
チームを機能させるためのリーダーシップについて、現代的な状況を踏まえたエッセンスが広範に網羅されているし、体系的にも整理されている。
原著の出版か2012年と少し古い(2024年読了)が、書かれている内容は少しも古くなっていない。
むしろ複雑さが増すビジネス環境に対しては、重要性かどんどん増している印象。
フレーミング、心理的安全性、失敗の戦略的活用、異なる組織間の連携など、状況に合わせて、どのようなリーダーシップを発揮するべきかがわかる。業務の種類(定型、複雑、イノベーティブ)に分けて論じられているのも好印象。