人口減少×デザインーー地域と日本の大問題を、データとデザイン思考で考える。
- 英治出版 (2015年6月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862762115
感想・レビュー・書評
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本書は、人口減少問題について、大きく2つの側面からアプローチしている。
それは、
①人口減少問題の本質を捉えること
②地域に問題解決の行動を呼び起こすことである。
また、本書が斬新なのは、人口減少問題に関して、「デザイン」をかけあわせているところである。
著者は、デザインについて、「デザインとは、複雑な問題の本質を一挙に捉え、(中略)社会に幸せなムーブメントを起こす創造的行為」と定義している。
私たちは、「デザイン」の持つ意味合いをここまで考えたことがあるだろうか。著者の斬新なアイデアに脱帽した。
まず、本書は、人口減少問題の本質について、インフォグラフィックスの手法を用い、わかりやすく解説している。
日本の人口は、2010年の人口を100とした場合、2100年には、39人しかいない。
人口減少問題の仮説として、著者は、
①既婚率の低下
②夫婦あたり出生数の減少
③若年女性の絶対数の減少
と捉え、豊富なデータから実証している。
また、本書では、人口減少問題へのアプローチとして
①女性中心の小さな経済をつくる
②縁を深めるローカルシステムを築く
③会社員女性をハッピーに
④ふるさと愛を最大化する
⑤非地位財型幸福をまちづくりのKPIに
という5つの提言をしている。
私は、全国的に見て、福井県が少子高齢化について様々な取り組みをしていることを知っていたが、それは、本書を読んで、「都道府県別の女性の就業率と合計特殊出生率に相関がある」ことを知り、理解できた。すなわち、働きながら産み育てる女性が多い地域では、家族や経済環境にも恵まれていることを意味する。
「ワークライフバランス」という言葉がある。以前、私は女性が働きやすい職場の条件の一つとして、「夕方5時以降に会議を入れない」といわれたかたの講演を聞いたことがある。本当に「働くママの視点」に立ち、細やかな対策をしていく必要がある。
いま、国は、「地方創生」を掲げており、各自治体が知恵を絞り、今後のビジョンを描いている。
でも、私は、本書を読み、ふるさとに愛着を持ち、働き、産み、3人育てられる条件が揃えば、住民の幸福度もあがり、人口減少問題の解決にもつながることを改めて認識した。
日本の最重要課題である人口減少問題を解決するには、「働くママ」を応援するため、家庭、事業者、そして行政がそれぞれ問題意識を持ち、取り組んでいかなければならないことを痛感した。
地域、そして、日本という国をのこすため。私たちは、常に人口減少問題を念頭に置きながら、いますぐ、出来ることから、アクションを起こしていかなければならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人口減少を数字で見る本だなーと感じたけど、図表も取り入れられていてわかりやすく、そして面白く読めた。
もう一つ思ったのは、女性が生きやすい社会にならないと、人口減少を解決するのは難しいのかなってこと。
提言1女性中心の小さな経済をつくる -
江戸時代は国内で経済が回っていた。その時の人口は3000万人。
コンパクトシティは進めると県内だと県庁所在地に。日本だと東京に集約しようという考え方。人は自分より中心には目を向けないが周辺には圧力をかける。 -
人口減少の仕組みなどについてかかれています。なんとなく感じる小さな疑問を解決してくれる本です。グラフや表などが多くて見ていて楽しいです。読むのに時間はかかりませんでした。
人口減少の最大の要因は
①夫婦あたりの出生数の低下
②既婚率の低下
③若年女性の絶対数の低下
人口減少の仕組みをさまざまなパターンに分類してシミュレーションしたものなども見れます。 -
現実味を帯びれば帯びるほど楽観視はできない
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現状分析部分(第1章第2章)は増田寛也『地方消滅』をより平易に解説した内容であり、提言部分(第4章)は藻谷浩介氏や山崎亮氏の著作と近い内容という印象。内容における新奇性は薄いと感じた。
しかし、本著の価値の多くは内容以外の部分にある。一見すると難しい(そしてどれを使えば良いか分からない)統計データの利用方法を簡単に、そして圧倒的に見やすい形で示している点こそが、本著の価値であると言える。
この本を買えば誰でも(この本を持っていない時よりも)簡単に自分の暮らす自治体の人口減少予測とその要因が把握できるであろう。
本著の試みのような、社会問題とデザイン(やアート、IT技術などセンスのある若者が多く好む分野etc..)の融合は、若者の関心を高めるためにも今後もっと沢山出てくるべきだと感じた。「カッコよさ」が若者を惹きつける。
非常にためになる本であり、地域分析の教科書として何度も読み返すことになるだろう。
自分もこういったデザインを意識する感性を身に付けたいと思った。