なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762207

作品紹介・あらすじ

ほとんどのビジネスパーソンが「自分の弱さを隠す仕事」に多大な労力を費やしている-。ハーバードの発達心理学と教育学の権威が見出した、激しい変化に適応し、成長し続ける組織の原則とは。

感想・レビュー・書評

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  • キーガンの新作。

    「なぜ人と組織は変われないのか」でも、組織を取り扱っていたのだが、どちらかというと組織というより個人個人への取り組みの積み上げという印象があった。内容的には、前作の延長にあるのだが、こちらは、「組織」がより明確にフォーカスされている感じ。

    組織開発関係の本はそれなりにいろいろ読んでいるつもりではあるのだが、この本からは、久しぶりに、純粋な刺激を受けた感じがする。

    つまり、自分の知っていること、考えていること、問題意識を持っていることと、かなり近いところにあるのだが、答えの方向が自分の予想と微妙違っていて、「なるほど」と思ったり、「どうしてそうなるんだろう?」「本当だろうか?」と色々な考えが頭を巡った。

    最近の私の問題意識として、性善説というか、人間の全体性とか、肯定的意図とか、ポジティブなものをベースにしたアプローチは、元気が出るし、基本好きなのだが、それだけでは、どうも上手くいかないこともたくさんあって、そこをどう考えればいいのか、というものがある。

    多分、この本のベースもこの問題意識の上に立っていると思う。

    そして、仕事に、単なる職務上の役割ではなくて、一人の人間として自己一致して取り組むことができる。そして、組織の発展だけでなく、一人ひとりの人間の成長にフォーカスされた組織を作りたい、という思いはとても共感できる。

    そのためには、自分の弱みもちゃんと出せる組織がいいんだ、というところまでは、多分、全面的に賛成。また、リーダーシップとしても、じぶんの弱みを見せることができる、ということは大切だと思う。

    が、多分、私は、その弱みはチームでカバーしあう、という方向での解決を求めているのだと思う。欠点もある人間が協力しあって、弱みをキャンセルして、チームとしての強みを活かしていく(これはドラッカーの思想の中核でもある)、ということだと思っている。

    一方、この本に出てくる組織では、互いの弱みを発見しあって、弱みの改善に向けて、頑張り続けることを組織的に推進する感じ。

    これは、かなり痛い、よね〜。

    自分の欠点、至らないところ、ようするに真実から逃げずに、しっかりと見つめ、謙虚にそのための改善努力をする。そうしたお互いの成長を共にサポートしあう組織。

    個人的には、正直なところ、そういう組織にいたいという感じはあまりしないかな?ちょっと、怖い気がする。

    「学習する組織」の5つのディシプリンもややストイックで、似たニュアンスを感じる部分はあるのだが、全体としては、元気になれる、頑張ろう!という気持ちになれるんだけどね。

    というわけで、自分なりに消化するのに、しばし時間がかかりそう。

    でも、通常の組織開発本とは何か違うものを提案している必読書だと思う。

  • 本のタイトルからビビビっときて、読んでみた。

    過去、自分の働いていた経験から、もっとお互いの弱さ・弱みをオープンにして、
    失敗を許容できる文化がないと良い組織にはなれないと漠然と考えていて、
    そういった類の本ではないかと思って読んでみました。
    結果は、自分の想像とは少し方向性が違ったけれど、
    納得のいく個所も多々あり、学びが多かったです。

    ただ、主張がややドラスティック。
    相手の弱みをオープンに指摘し合うのは、
    強固な「安全地帯」(本ではホームと言われている)が必要で、その点は本にも書かれているのだけど、
    その安全地帯の構築方法が本に書かれている内容で十分なのかは自分では少し判断できなかった。

    個人的には、「心のパンツを脱げ」的な話にも理解できたけれど、
    アメリカ人がこういったウェットな主張をしてくる点は少し意外というか新鮮だった。
    人の性格って果たして変えることができるんだろうか??
    この辺についての良い本があれば、別途、読んでみたいなぁ。。

    こういう組織開発系の本を読んだのはほぼ初めてだったので、
    初心者の自分にはやや難しかったけれど(消化不良の箇所もややあり)、
    これを機にこの分野の本をもう少しいくつかの本を読んでみたいという気になりました。

  • 海外の会社の具体的な事例を引用しているが、日本企業も多かれ少なかれ同じような状況(自分の弱さを見せない為に、労力を割く)があり、一読の価値はあるが、知らない会社なので、イメージがしにくいのと、読みにくい。慣れかもしれませんが。

    読み終わって、
    今のチームの定期ミーティングで、直近1週間の振り返りをして、学びの得られた失敗を議論する事を始めてみようかと思った。イノベーションを生み出せるのは人で、学びは成功よりも失敗からの方が多くのものを得られる事を信じたいと思いました。

  • みんなが自分の弱さをさらけ出し、安全であると同時に要求の厳しい組織文化によって生み出される組織を発達指向型組織(DDO =Deliberately Developmental Organization)と呼び3つの企業を例に考察している。

    以下、印象的なフレーズ
    ・人がリスクを取り、失敗を味わったとき、学習の環境が生まれ、柔軟性が高まる。
    ・徹底的にオープンな精神をもつとは、自分が間違いを犯していたり、弱点があったり、あるいはその両方だったりする可能性を受け入れて、ほかの人たちがそれを指摘するよう促す姿勢のこと。
    ・アージリスはリーダーに対して、自己変容性を身につけ、ものごとを学習できる人物であることを求めている。
    ・私たちが自分を成長させることに力を入れるのは、仕事の質を高めるためだ。世界が変わらないなら、私たちが変わる必要はない。でも、世界が変わり、ビジネスが変わっている以上、私たちも変わらなくてはならない。そうしないと、ビジネスを前進させられなくなる。

  • とりあえず分かったのは、当社はマサカリを投げ合ってお互い切磋琢磨する文化であり、弱さを見せること、すなわち死を意味するので、本書で提唱している組織(DDO)には程遠いなあということ。
    Googleの心理的安全の話もあったけど、もうちょっと広い話をしているような気がする。安全圏を作ったうえで、みんなそれぞれのエッジにチャレンジして、弱さと向き合って成長していきましょう的な考え方かと。安全圏なので、分かっててマサカリ投げるのはOK。
    というわけで、気になった個所を引用しつつコメントする。

    ・利益の追及と人間の成長は一体を成すものだ
    これは衝撃だった。人間の成長を優先すると、大概、利益の追及=仕事の効率は落ちるものと考えていたから。しかも、業務外で特別なことをする必要はない、とまで言い切っている。RPGのレベルあげみたいに、時間をかけて人間の成長をしたうえで、それから利益の追及をするのではなく、同時にやることが可能だろうか?
    ・「替えの利かない」人物をつくらないように仕事を設計している
    オレスゲーマンセーな時期もあったけど、人に任せざるを得ない立場になって、これの重要性が痛いほどわかるようになってきた。
    ・個人として進化したいという思いこそ、人を突き動かす「最大の原動力」だと言う。
    自分はそうだったとして、他の人はどうか?適当な給料もらえて、適当な仕事やってれば満足とかいう人をどう突き動かすの??

    もう一度読み直してて、さらに追記。

    ・従来の人材育成プログラムの欠点4つ。
    継続的でない
    日常の仕事と切り離された特別なもの
    対象メンバーが限られる
    対象が組織でなく個人に限られる

    ・仕事は人生に意義を与えるもの、やり甲斐を生む要素は
    自分を成長させること
    卓越した不朽のものを生み出すこと
    ほかの人たちに奉仕すること
    の3つ。

    ・痛みを感じ、自己防衛反応をしたとき、記録して、後で振り返り、それを克服するか、さもなくば辞めろという、常に成長を要求される環境。

    ・マインドセット、すなわち世界を理解する論理が成長し、自己と周囲の世界を深く正確に見る能力が質的に向上し、それまで自分が世界をどのように見るかを決めていた前提を客観視できるようになる。

  • 発達指向型組織(=DDO)について書かれた本。

    今、よく聞かれる心理的安全性に近い内容についても含まれている。

    組織の成果を上げることよりも組織の人たちがいかに成長していくかに重きを置いたものである。
    (組織の人たちの成長によって結果的に成果が出る)

    その個々の人たちの成長をするための要素の一つに自分に対しに真摯に弱さをさらけ出せるかということが本のタイトルにもなっている。

    本書でも書かれていたが、今の時代仕事に求めているのはお金だけではない。

    その仕事を通してどれだけ成長できるか、どれだけやりがいがあるのかということにとてもウエイトが高くなっている。

    今のように数年後の世界の流れが読めない状況では誰でもできる取るに足らない仕事はどんどん淘汰されていくだろう。

    その中で常に自己研鑽を積む風土の会社、そこで働く人たちでしか生き残っていくのが難しいのではないか。

    つまらない揚げ足取りをしている職場をどうにか変えていきたいと強く思った。

  • ひとまず通読.
    小さな組織において,「持続可能な」システムを構築するにあたっては,必須の方法論と思えた.
    机の上に常備して,何度も繰り返しめくりながら,DDOの職場環境を構築していきたい.

  • 序章 戦略としての組織文化
    第1章 ようこそ、「発達指向型組織」へ
    第2章 「発達」するとはどういうことか?
    第3章 コンセプトの概観――エッジ、ホーム、グルーヴ
    第4章 グルーヴ――「全員のための文化」を築くための慣行と訓練
    第5章 営利企業を運営できるのか?――狭い意味でのビジネス上の価値
    第6章 最大の死角をあぶり出す――DDOで体験すること
    第7章 「ホーム」をつくる――DDOへの道を歩みはじめる
    エピローグ 職場での人の「あり方」を変える

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50192067

    ほとんどのビジネスパーソンが「自分の弱さを隠す仕事」に多大な労力を費やしている―。ハーバードの発達心理学と教育学の権威が見出した、激しい変化に適応し、成長し続ける組織の原則とは。 (生命融合科学分野 大塚正人先生推薦)

  •  リフレーミング力と状況を正しく認識するチカラが必要だとお改めて思い知らせてくれた書籍である。
     「発達思考型組織(Deliberately Developmental Organization)」では「弱さ」を見せ合うことで変化への適応しているという。風の時代ならではの考え方だと思う。
     大量消費大量生産時代には決められたことを効率的に行うことが能力の高さと考えられてきた。一方、変化していくことが便益を多く受けられる昨今となってみると、多様な能力を持った人たちと協働していくことがリターンを大きくすることになる。その時に顕になってしまうのが協働力のなさである。本書ではこれを「弱さ」と表現している。
     他者との関係おける「弱さ」は当事者同士が指摘しあわないと気づかない。また以前であれば「弱さ」は隠すほうが美徳とされていた訳だがその思い込みを外すことも必要になる。

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著者プロフィール

ハーバード大学教育学大学院教授(成人学習・職業発達論)。30 年あまりの研究・執筆活動を通じて、人が成人以降も心理面で成長し続けることは可能であり、現代社会のニーズにこたえるためにもそれが不可欠であるという認識を広めてきた。授与された名誉学位や賞は多数。

「2013年 『なぜ人と組織は変われないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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