アリの背中に乗った甲虫を探して: 未知の生物に憑かれた科学者たち

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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863100633

作品紹介・あらすじ

若きリンネの探検旅行から深海・宇宙の生命探索にいたるまで未知の生物発見に生涯を捧げた科学者たちのおかしくて感動的な物語。

感想・レビュー・書評

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  •  生物の研究には3つある。1つめは既知種の研究、2つ目は未知種の発見、3つ目はs進化系統の再構築だ。本書は2つ目と3つ目にまつわる科学者たちの挑戦の物語である。

     前半は種の発見と分類に血道をあげたリンネとその弟子たち、微生物を発見したレーウェンフック等の伝記のような態で、我々人間が知っている地球上の生物は全体のごくわずかであることが示される。そもそも人類には全体象が分からないのだ。
     後半は細胞内共生説がそれなりに支持(一部は通説と化している)され、古細菌ドメインが発見されるまでの様を描く。異端の科学者が懐疑の目を向けられながら、自説を信じて研究を重ね真実にいたる。その信念と根気には敬服する。

     人間はずっと勝手に生物の概念や生息域に限界を設けてきた。海の向こうには大陸はない、目に見えるものが全てである、深海には生物は住めない、地下の岩盤には生物はいない…それが毎度覆されている事実を本書は突き付ける。
     最後は宇宙生物や新たな概念の生物の可能性を否定できないことを示唆している。生物とは何か、どこから来たのか、どこにいるのか。人智に対する慎みと畏敬を感じないではいられなかった。

     訳が悪いのか、原文がそうなのか分からないが、文章が読みにくい。例えも上手くなく、かえって分かりにくい始末で前半は読むのが苦痛ですらあった。後半は登場する科学者の熱意に圧倒され、あまり文体のまずさは気にならなくなった。

  • なにげなく本棚を眺めていたら気になったので帯を見てみた。EOウィルソンが序文ということで購入を即決。

    第2部の「進化系統樹」が抜群におもしろい。また共生の発見についての第3部もよかった。

    生命に関する発見の歴史とその意義、そして発見者の人物像についての物語が中心。名前だけは誰でも知っているような人物よりも、あまり(生物学以外の世界では)知られていない人物が多く取り上げられていてその「物語」自体が読者に発見されるような構成になっている。


    3部「ルーツ」
    われわれのどの部分も分裂したアイデンティティを宿しており、われわれの言葉も思考も「真核細胞としての自己」ではなく、結合体としての自己から生じる。娘を身ごもっていたころの妻が、意義深い点において二つの個体から成り立っていたように、われわれの各細胞も単一のものではない。

  • 生物の種数やその仕組みなど全てを解明するまでには至っていません。それ故にその魅力にひかれていく科学者たちがいます。生物が住むには適していないとされてきた環境でもそこに暮らしているものがあります。この地球上にはどのくらいの種数があるのか?未知なる世界がこの地球上には広がっています。

  • 第1部 はじまり
    第2部 進化系統樹
    第3部 ルーツ
    第4部 別の世界

  • 生物学的知見がどのようにえられてきたのか。教科書ではさらりと教えられる事にも、泥臭いドラマがあったのだ。

    ・古細菌と真生細菌の違いは、構成物質が違う。
    ・ミトコンドリアは独立した進化の単位。
    ・p343系外惑星と極限生物
    ・火星に生命がいる兆候

  • 第三章のレーウェンフックについての小伝が、すこぶる刺激的です。科学の世界の異端児は、異端児としての革命(レーウェンフック的転回)をもたらすものの、ケチな性格であったためか人間としての知恵はたらず、その成果を人類に普及させようとはしませんでした。愚かなるレーウェンフック…。

    フェルメールの「地理学者」は、レーウェンフックがモデルだったのではないかという説があります。フェルメールがつかったレンズも、レーウェンフックがつくったものなのかもしれません。と、註にありました。

  • 未知の生き物を追い求めたものたちの
    記録。
    現代だけでなく、200年以上も前の
    人物に関して取り上げているのが
    非常に印象的でした。

    しかし人類を分類したアンリは
    確かに偉大な人ではあります。
    だけれども裏では標本を渡さなかった
    鬼としての顔もあります。

    やはり発見が絡むと…なのですね。

    他にも甲虫に見せられた研究者や
    女性ながらも過激な持論を
    展開する研究者など…

    生物の分類にはまだまだ
    終わりなんかありませんね。

  • 僕たちが知らない─いや、知り得ない生きものの世界への誘い。この星は(あるいは宇宙だって)文字通り生命に満ちているんだ、ということを最新の生物学上での発見から説き起こす。僕らの生物観を変えてくれるような傑作科学書。読んで損はない。

  • 2010.02.14 日本経済新聞に掲載されました。

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著者プロフィール

ノースカロライナ州立大学応用生態学部教授、コペンハーゲン大学進化ホロゲノミクス・センター教授。著書に『家は生態系』(白揚社)、『世界からバナナがなくなるまえに』『心臓の科学史』(以上、青土社)、『わたしたちの体は寄生虫を欲している』(飛鳥新社)、『アリの背中に乗った甲虫を探して』(ウェッジ)がある。ノースカロライナ州ローリー在住。

「2023年 『ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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