あくがれ―わが和泉式部 (ウェッジ選書)

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著者 : 水原紫苑
  • ウェッジ (2012年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863100978

あくがれ―わが和泉式部 (ウェッジ選書)の感想・レビュー・書評

  • 冥【くら】きより冥き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端【は】の月
     和泉式部

     日記でも知られる平安朝の歌人和泉式部。その伝記小説を、このたび水原紫苑が書き下ろした。古典に造詣が深く、新作能の脚本も手がけている水原ゆえ、章立てが「序破急」であるのもうなずける。
     あとがきによると、本書を書いたきっかけは、恋人が亡くなったことだという。恋しい人を失って初めて〈恋〉そのものを思い詰め、また、恋の果ての孤独にも気付かされたのだろう。そんな水原の吐息まで伝わってくる小説だ。
     和泉式部は「浮かれ女【め】」とも称され、恋にまつわる話題も多く残している。

       白浪のよるにはなびく靡【なび】き藻【も】のなびかじと思ふわれならなくに

     男性からの誘いになびくまいと思うのだが、と女ごころが揺れている歌だが、相手は為尊【ためたか】親王と解釈されている。皇太子に近い高貴な親王と恋に落ちた時、和泉式部は夫と一児のある身だった。道ならぬ恋のために父からは勘当され、しかも親王は20代の若さで病死してしまう。
     悲嘆に暮れる和泉式部が次に恋に落ちたのは、亡き人の弟宮である敦道【あつみち】親王だった。その劇的な運命は、2人の間で交わされた贈答歌からも推察できる。
     7月。平安期には、七夕の夜は彦星と織り姫に遠慮し、夫婦でさえ会わないのが習わしだった。だが、敦道親王は織り姫を装った女性の姿で、式部のもとを訪れた。
     そのような道ならぬ恋も経た和泉式部の代表歌が、掲出歌。「冥」の2字が重く、切ない。水原いわく「愛の向こう側にあくがれる、この世ならぬ魂を持った女」。

    (2012年7月1日掲載)

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永遠の愛情を宿命づけられた王朝随一の歌人の生涯。

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