「瓢鮎図」の謎: 国宝再読ひょうたんなまずをめぐって (ウェッジ選書 47)
- ウェッジ (2012年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863101029
感想・レビュー・書評
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禅学の専門家による「瓢鮎図」の解説書。「瓢鮎図」は今まで何度か見たことがあるが、初めて見たときには、上部の画賛の部分が大きいことに驚いた気がする。教科書でも、載っているのは下部の絵の部分のみであり、画賛は教養のない私には読む力がないし、興味もなかった。今回、画賛の部分を重視した解説により、「瓢鮎図」の本来のもつ意味や禅学について、ほんの一部ではあるが知ることができたことは、とても大きな収穫であった。「瓢鮎図」は当然、日本画の専門家のみならず「禅学」の専門家も分析に従事する必要があったはずであり、なぜ今まで誤った解釈が放置されていたのかが疑問である。今までの主たる解説書であった「禅林画賛」の内容を次々と修正していく著者の知識の高さには驚かされた。いずれにしても、極めて学術的、論理的な格調高い1冊であると思う。
「上にある賛を無視して、そのような主観的な印象ばかりを重視し、それに固執していたのでは、この画賛の全体のメッセージから、ますます離れることになります。それは六百年後の現代人の自由な、いや任意の感想にすぎません。まずは、この絵が描かれた同時代の人たちのコメント、すなわち三十一の賛詩の内容にできるだけ迫ることが大切でしょう」p124
「私たち現代人は美術館に展示された「瓢鮎図」を見れば、まずは絵の部分に興味を示すでしょうが、(足利)義持はそうではなかっただろうと、私は推し量るものです」p207
「(瓢鮎図は)禅の根本的な世界観を絵画と詩で表現したものに他ならないのです」p218
「詩人は最初から「文意の通じない」作品を作るはずはありません。わからないのは、こちらの自分の解釈力に問題があるのだと思わずに、作品のでき具合を高みから批評していたのでは、問題は解決しません」p268詳細をみるコメント0件をすべて表示