- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863101081
感想・レビュー・書評
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人によってはやや右寄りに聞こえてしまうかもしれない論調であるが、実際には日本と世界の状況をしっかり踏まえて中立的な立場から主張が展開されていると感じた。特に冒頭の1964年の東京オリンピックの章は、2021年の現在コロナパンデミック下において読むと、筆者からの激励のエールがいっそう強く響いて聞こえた。国粋的に感じる人もいるだろうが(私も留学以前であればそう感じていたかもしれない)、MBAのクラスで扱ったケーススタディや、何よりクラスメイトが日本を見る視点(往々にして日本は尊敬や学びの対象として考えられていた)を経験して、筆者の言いたい事は非常に納得がいくものであった。
一方で、日本を国際社会における日本たらしめた要素は、世界がグローバル化する以前であったからこそ強みであったという最終章付近で示された論説について、では、日本はグローバル化以後の世界ではどのように行動すればリーダーシップや良いプレゼンスを示すことができるのかは明らかにはされていない。最終章において、15年あれば日本は変革は可能であると主張されており、「どのように行動するか」という事を考え、試行錯誤していくことが変革そのものなのだろうと考えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やや散漫だけど、退屈しないで勉強になります。
今後、海外で活躍する海上自衛隊の若者や、日本を背負っていく人達のために、わかりやすく近代史を解説した本です。
(なぜか海上自衛隊のための…が少ししつこいです)
海外の人と仲良くするためには、日本も含めて国同士の仲がいいとか悪いとか、いつ戦争してその恨みがあるとか、知っておいたほうがいいよって感じでしょうか。
最近の海外のニュースを理解するためにも近代史の知識は必要だし、知ると面白いんですが、学校で教わった記憶がないんだよな~。
私が勉強嫌いだったせいか、腫れ物に触っちゃうからなのか、アメリカや面倒な隣国に配慮しているせいなのか?
著者は歴史研究家ではないので、系統立てても、網羅性もないと書いていますし、確かにその通りだと思います。
とはいえ、平易な説明なので、本書を入門として興味がわいたものをさらに歴史家の本で深く知るというのがいいと思います。
内容的には、
・米国は日本に対して、戦後復興や国際社会の仲間入りのために尽力した。
(米国なりの思惑があったとしても…)
・米英の覇権争い
・中国とインドの紛争。
あたりは新鮮でした。
意外と皆知らないでしょ?
って著者の指摘が結構当たってます。
冒頭は少し退屈でしたが、それ以降の歴史部分は非常に面白く、雑談や主観も含めて結構勉強になる内容だと思います。
(どうでもいいけどフランスの漫画はフルカラーで絵画的な楽しみ方なのね)
歴史の勉強が嫌いな人にも結構オススメです。 -
『未来の課題を知ろうとするには、現在の制約や、可能性に通じていなくてはならない。そして現在の仕組みや慣習、外交関係が何ゆえこのようなものであり、それ以外のものでないのかを知ることは、今日に至るまでの前史を知らなくてはならない』
ということで・・・
日本の将来を見据えるために・・・
特には今後の日米関係をどうしていくか、米国とどう付き合っていくべきかを考える上で参考にするべく・・・
第二次大戦後の米国、英国、中国を中心に、著者が重要とする歴史(現代史)を振り返る・・・
まず最初に日本が国としてまだ若さに溢れていた頃を振り返る・・・
1964年の東京オリンピック・・・
そのエピソードは、当時の熱気を体験していないボクら世代(30前後)にとっては、あぁ、皆さんこんな風に感じていたんだな、というのが伝わってきて新鮮・・・
焼け野原からたった19年で、よくぞあそこまで・・・
という感慨が伝わってくる・・・
次に、その東京五輪にいたるまでの・・・
国際社会(西側陣営)への復帰、アジア唯一の先進国の仲間入りまでの日本の苦労と、米国の日本に対する多大な支援が書かれておる・・・
もちろん米国に思惑はあるにせよ、日本が立ち直るのに、本当に手取り足取りで様々な支援をしてもらったという事実は知っておかないといけませんね・・・
しかも、その道のりは順調では決してなく、欧州各国、特に英国なんかむしろ反対していた中で、米国は諸々取り計らってくれたわけで・・・
ありがたいな、と・・・
米国に対してはいろいろ思うところもあると思うけども、この点は忘れてはならないんだな、と・・・
米国は・・・
国益に適うならば、いろいろと手を差し伸べてくれる・・・
それから一方で・・・
飛び飛びになるけれども、中国の虎狼っぷりも書かれている・・・
中国とインドの戦争について・・・
そして、実数は不明ながら3000~4000万人が犠牲になった毛沢東時代の大躍進政策についても・・・
著者は言いたいのでしょう・・・
中国(共産党)の本質はコレらだよ、と・・・
そして、一番面白かった米国と英国について・・・
かつては世界の覇権国だった大英帝国・・・
第二次大戦でハンパない消耗をしちゃって・・・
米国が大英帝国を追い抜いて覇権を握っていく・・・
というイメージでしたが・・・
いやいやそんな単純ではなかった・・・
大英帝国に最後のトドメを刺したのは他ならぬ盟友の米国だった、という・・・
決して自然に米国が覇権を握ったわけではなく・・・
米国が明確に意志を持って、大英帝国から覇権を奪っていく様が見て取れちゃう・・・
いやー、マジで英国の足元を見まくってますね・・・
えげつないですよ・・・
でも、凄みを感じる・・・
スゲーよ米国・・・
そして、大英帝国から覇権を奪いつつ、戦後世界の秩序作りをしていきます・・・
それがブレトン・ウッズ体制・・・
IMFは短期の資金融通、世界銀行は長期、という役回りだったのね・・・
知らんかった・・・
そのIMFの規約でドルに特別な地位を与え、ポンドを基軸通貨の玉座から引き摺り降ろし、ドル本位制が誕生する・・・
この権力移行劇がたまらなく面白かった・・・
そしてその後・・・
覇権国でなくなり、米国にプライドをズタズタにされた英国だけども・・・
スエズ危機で米国と対立した時、経済的合理性、国益を重視し、キチッと米国と関係を修復していく決断を取る・・・
ここが英国の凄いところで・・・
自分を追い落としていった米国だろうと、国益に適うならば、求められるがまま追従することも厭わない・・・
むしろ先回りして米国に恩を売っていく・・・
米国と付き合う上で、このへんのところを日本も参考にしていくべきだと・・・
となってるけども・・・
日本も既に十分すぎるほどに従順ですからね・・・
先回りして恩を売って、米国から頼りにされ、あとから見返りをもらうぐらいにならないと、ってことですかね・・・
と、ざっくりこんな感じですけれども・・・
用はおそらく・・・
今後も米国と同盟堅持・・・
インドや豪州などと連携を取りながら、中国にはユメユメ油断しないこと・・・
この路線でいきましょう、という著者の考えが滲み出てくる本・・・
米国が支援してくれまくった話や、米国が英国から覇権を奪い去って戦後世界の秩序を作り上げていく話は読んでおいて損はないと思うし、読み物としても面白いのでオススメちゃん・・・ -
著者は、雑誌記者、外務省勤務経験を持つ。現代世界の話題が、講義形式で展開していく。米国、英国、インド、中国など。そして、日本の進むべき未来について・・・。
読み物としては、基本的に面白い。中国の”大躍進”などは、辛い出来事が書き連ねられている。さほど遠くない時代、場所で、かような実態があったのだと、改めて感じさせるものがある。また英国が、米国から受けた屈辱、それでも国益を優先させたプラグマティズムには、確かに今日の日本が学ぶべきものがあろう。
歴史というレアリズムは、今日の立ち位置、進むべき針路を考える上で、好材料を提供してくれる。2050年、日本は独立を保ち得ているのだろうか。未来は誰も経験することが出来ないが、歴史は振り返ることができる。そこから、何を得て、何を生かすのか。
講義形式なので、一つ一つの話題の掘り下げには、限界があるが、私が抱えるテーマに適う好著であった。 -
歴史に関する本は好きですが、最近から数十年間の現代史については、あまり読む機会がありませんでした。今回、この本を読んで、長年の私の疑問であった「なぜ英国から米国への交代が起きたのか」、そして「どのような背景・事件が契機で行われたのか」が明確になり、私にとっては記憶に残るものになりました(第5、6講)。
特第二次世界大戦では同じ連合国の仲間として戦った、米国が英仏連合軍をスエズ動乱において、撤退させたという事実は初めて知りました。また、インドと中国には長い争いがある様ですね。中国がチベットを併合した時に、ダライラマがインドに亡命したという経緯も、この本を読むことで理解できました。
私の生まれた1964年こそが、日本が先進国としてOECDに仲間入りをでき、事実上GATTにおいても一員と認められた記念すべき年である(p49)こともわかり、良い時代に生まれた私は生まれたなと実感しました。また、日本の食料自給率が低い別の理由(朝鮮と台湾に30%依存していた、p75)も私なりに納得しました。
この本の著者である谷口氏は、所謂、歴史学者ではないようです。歴史以外にも他の分野を学んで極めた方が書かれた歴史に関する書物は、面白いものだと再発見した嬉しい気分です。
以下は気になったポイントです。
・東京オリンピックにおいて、ブルーインパルスがみせた曲技飛行(5機が5色のスモークを吐いて5輪マークを形作る)は、あとにも先にも、世界に実例がない(p31)
・2008年の北京五輪とは異なり、東京オリンピックの聖火はどこでも(ビルマ、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、沖縄)歓迎された(p42)
・海軍や陸軍の飛行機を設計した人々は、国産旅客機YS11を開会式ギリギリに間に合う8月に運輸省の形式証明を獲得した、YS11の初任務は聖火を運んだ(p46)
・東海道新幹線、東名・名神高速道路は、世界銀行から借金して建設資金を賄った、これを全て返したのは、1990.7である(p46)
・1964年には、日本はIMFのいわゆる「八条国」となり、OECDにも加盟を許されて、先進国クラブの一員となる、GATTにおいて対日35条適用を欧州国・英連邦諸国が撤回したのも1964年、それ以前に日本を認めていたのは、米国・カナダ・西ドイツ・イタリア・北欧諸国のみ(p48、72)
・朝鮮戦争が起きた当時、少なくない日本人が、日本は共産化の一歩手前と考えていて、中には九州をモスクワに差し出そうとする動きさえあった、これを考慮しない限り、戦後の米国がなぜ日本を西側陣営に包摂しようとしたか理解できない(p63)
・中国は多くの国にフランチャイズ方式で孔子学院を展開させている(米国:350、日本:19等)が、インドには2か所、インドへの中国からの投資は34位(日本は3位)である(p92)
・1950年に中国はチベットを併合、チベット人の蜂起が鎮圧された後に、多くのチベット人がインドへ逃れた、当時24歳のダライラマ14世も含まれる(p98)
・朝鮮戦争で一緒に戦った、英国と米国は、1956年に起きたスエズ危機で、まるで仇敵同士のような対立を演ずる、これが戦後の米英関係を理解する上で欠かせない大事件(p104)
・スエズへの英仏軍の侵攻に対して、米ソの提案に基づく停戦勧告が国連の緊急総会でなされた、またカナダからPKO創設と派遣の提案がでた、米国は石油禁輸、IMFの借款停止に動き、英国は資金繰りが苦しくなった、これに英仏は屈した(p107)
・スエズのコントロールを喪失した英国は、1966年、インド洋に配備していた軍事力も引き揚げる、インド洋のディエゴ・ガルシア島を購入後、米軍に長期利用(地代なし)させた(p118)
・フランスが、ベルギー・西ドイツ・イタリア・ルクセンブルグ・オランダと欧州共同体の基礎となる「ローマ条約」を締結したのは、スエズ危機の翌年の1957.3、英国は誘われていない(p120)
・第二次世界大戦とは、公式には、対ファシズム戦争だが、裏側には、英国主導のパクス・ブリタニカを、米国が自国主導のパクス・アメリカーナへ権力的に作り直そうとした戦いであった(p127,133)
・IMFは短期、世界銀行は中長期の開発を手掛けた、そして、大英帝国が世界に巡らせていた1932年以来維持してきた特恵関税ブロックを破壊(1942年、武器貸与法)する中から生まれた、2012年には1964年以来に世界銀行の年次総会(3年毎)が東京で行われた(p129,142)
・1941年当初、アメリカは南アフリカに英国の対外資産であるゴールドを取りに行った、さらにカリブ海とニューファンドランドの英国基地の借用権を得た(p145)
・1971年のドルショックが、グローバル化の最大の原因である事件である、ドルを完全なペーパー通貨として、ゴールドとの関係を切断した、これが1971年から四半世紀続いた米国の力の源泉(p159)
・ソ連は、自国通貨建ての国債を大量発行して、日本等に買わせることができなかった、なので、軍拡費用は、自国民と圧政下においた他国民の所得を召し上げることしかできなかった(p162)
・大躍進(1958年から数年間)において、少なく見積もって 2000万人、最近受け入れられている数字では、4000万人(この期間の人口減少数)が飢餓に起因する病気、体罰、拷問で死亡した(p184)
・河南省では、食い扶持・種もみ・飼料のすべてを上納し、食堂を停止した後、人民公社の社員は、1)家で炊事不可、2)野草を採ってはいけない、3)村外へ逃げてはいけない、という規律が定められた(p185)
・三菱自動車の荒井氏は、現代自動車を親身になって指導した(p241)
・JISマークで知られる日本工業規格は、1945年12月に占領軍当局の総司令部が、主だった日本人経営者を集めて製品標準化を達成させるために作ったもの(p251)
・日本の部活は、勉強一色の中国から来た高校生を魅了した止まない、キラー・アプリケーションであった、米英国にある学校のクラブ活動は、競技者養成を主眼とするもので簡単には入れない、地域のクラブでは、専門の人間が指導にあたる(p261)
・行事だらけの日本の学校生活も、仲間づくりに恰好の場となるのも特徴、小学校から中学、高校になるにつれて学生が自主的に運営する(p261、262)
・米国の16歳に見た自由(車の免許が取れる)は、15歳と12か月までは、籠の鳥でしかない事実があることを見るべき(p264)
・マンガは、日本社会のセキュリティーと、それが可能にした子供の行動の自由が比類ないまでに保障されていたからこそ、市場を勝ち取れた(p265)
2013年8月4日作成 -
「新しい時代を担っていく人が、絶対に知っておくべき現代史」としての「当用」現代史。中印国境紛争がインドの人にとって未だに根深い問題として残っているというのは知らなかった。こんなに真剣になれる現代史の授業を受けてみたい。