ジャパン・ディグニティ

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著者 : 髙森美由紀
  • 産業編集センター (2014年10月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863111011

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ジャパン・ディグニティの感想・レビュー・書評

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  • 舞台は青森。主人公・美也子、22歳。
    スーパーのレジ係をやめ、稼業である津軽塗の手伝いをすることに──。
    職人としての腕はいいが、頑固で呑兵衛な父。
    そんな父に愛想を尽かして出て行った母。
    楽天的なオネエの弟。
    この弟(妹?)がとてもいい味で、主人公の美也子よりも気に入ってしまった。

    驚いたのは津軽塗の工程。
    塗り・乾燥・研ぎを繰り返し、完成まで四十八工程、二か月近くかかるらしい。
    唐塗り・七々子塗り、紋紗塗など色々あって、
    その写真も載っていて興味深かったです。

    正直言うと、漆器ってお手入れを考えるとつい億劫で、滅多に使わないんですよね。
    どんな器も、日常に使ってこそ。
    しまいっぱなしの漆器、出してあげなくては…。

    最後は上手くいきすぎた感はあるけれど
    「ジャパン・ディグニティ」ぜひ継承していってほしい。

    すごく耳に残っているのが、登場人物たちの方言。
    方言って温かい感じがして好きなんですが、
    津軽弁はさすがに手ごわい(笑)。

  • タイトルは「漆の気高さ」という意味(ジャパンは漆という意味だそう)。
    頑固一徹の漆職人の父と一緒に、工房を営む主人公の美也子。家族は他に、元弟・現在は妹のユウと、お金にならない漆にしがみついている父と別れた母親がいる。
    最初はスーパーの店員をしていた美也子だけど、どうにも合わず、辛い日々を送る。
    漆で食べていけないのは分かっていたが、父の跡を継ぐ決心をする。

    美也子が職人として独り立ちしていくまでを丹念に追って書いてあります。
    漆塗りの細かい工程や、それに取り組んでいるときの気持ちなど、本当にリアルでした。
    「待ち」と「失敗できない一発勝負」を繰り返してあの質感が出るのだな、とため息が出ました。
    そんな漆塗りの話の中に、日常も挟まってきます。
    ほんのり恋心を抱いた相手が、妹(実は弟)の婚約者だったり、漆の塗り直しの依頼に来た老人の過去を知ったり、離婚した母が他の人と再婚することになったり……。
    また、漆塗りのことでは、昔ながらのものにこだわりたい父と、現代の傾向を取り入れて広く知ってもらおうとする美也子との間に争いがおきたりする。

    ラストは美也子が海外のコンテストに漆塗りのピアノを出品。
    性も根も尽き果てるまで打ち込む美也子は、当初のふらふらした女性ではなく、一人の職人でした。
    漆は何度も塗り重ねられて磨かれることで、何千年も持つ器になる。
    話の中で様々な人や父親と日々を過ごして、読んでいる私たちも、美也子同様、心を幾重にも暖かく包まれていくような気がしました。

  • 最初の方は古臭い伝統工芸に夢中で夫として、家長として不適格な父親、それについにキレる母親、田舎でさぞ生きにくいと思われるオカマの弟、そして何をやってもオドオド自信のない主人公という家族の話になんだか暗くて嫌だなぁと思ったけど、読み進むうちに姉弟(妹?)のお互いの思いやりや、不器用な父親の愛情、近所や周りの人のそれぞれ辛い気持ちも抱えながらの温かさにじんわり胸が温かくなった。
    弟が彼と結婚してオランダへ渡ってからは、斜陽産業ともいうべき津軽塗の良さを知ってもらい、再生させるために一心不乱に展覧会の出品作りに打ち込む。
    まぁ上手く行きすぎって感じもなくは無いけど、こちらも息を詰めて応援したくなる、読後感のいい本でした。
    津軽塗の何かが欲しくなった。
    東北へ行ってみたいな。^ - ^

  • 主人公の美也子はバイトをやめたことをきっかけに家業の津軽塗を手伝うことに。クレーマーに近いお客さんがいろいろなものの修理を持ち込んでくるがそのたびに彼女は成長していく。4月には新しい職場にいく人もいると思うが、仕事・仲間とはなにか、生きていくのに必要なこととは何かと考えさせられる。

  • 方言のつらなり。
    そこに人がいる。
    素朴で普通で、消えかけた灯りをともし続ける人たち。

  • 才能より何よりやるかやらないか。
    続けるか続けないか。

    自分のことは自分が一番見えていないこともある。どんな人でも周りにいる人も自分の世界の登場人物で、自分にとってありがたい人、自分ひとりで生きてる気になっちゃいけないね。

  • 賞をとったという作品だけあって、ものづくりの素晴らしさは大変良く伝わってきます。
    ただ、主人公の周りに、沢山の哀しいエピソードがあるわりには、主人公がそれら全てを素通りし(受け入れ)すぎているように思います。主人公はまだ若い設定なので、そんな風になるのもしょうがないと思うので、エピソードの数がもっと絞られていたら、主人公の内面がもっとよくわかったかも…と期待します。
    また、努力しても出来ない彼女が「やれば出来る」人達に囲まれて、どんな思いをしてきたかというくだりはものすごく共感できたし感動したので、だからこそ、後半、なぜかとんとん拍子にことが上手く運びすぎるのが違和感がありました。
    でも、作者の方がものすごい努力をして、とても心をこめてこの作品を書いたことは、良く伝わってくるので、良い作品だと思います。

  • 伝統技能を小回りを利かして、やっていけたらいいなの見本。

  • 伝統工芸の津軽塗の職人の娘を主人公にした、
    お仕事小説です…。お仕事小説は数あれど…、
    忠実なまでの、王道の設定に、お話でしたね。

    地方の伝統工芸にチャレンジする娘さんに、
    ものづくりのお仕事小説、といぅ設定は…、
    大好物のジャンルなので、面白かったですよ!

    でも…、ふと考えてみると…、意外と、
    伝統工芸を題材にした作品の記憶がなぃので、
    そぅいう意味では、新鮮な感じもしました…。

    作者と主人公が、等身大に近ぃからなのか?、
    起承転結のあるお話も、読みやすかったけど、
    何となく、起伏が少なぃ印象も感じたかも…。

    でも…、舞台の青森感はよく感じれたけど…、
    作中の津軽弁は、結構、読みづらかったです。
    それでも、心地よぃ作風でよかったですよ…。

    評価は…、ほんのちびっとだけ、甘めかな…。

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ジャパン・ディグニティの作品紹介

22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーをしているオネエの弟との三人暮らし。母は、貧乏暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出て行った。美也子はスーパーのレジ係の傍ら、家業の津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りに加え、クレーマーに苛まれてとうとうスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、やがて津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。50回ほども塗りと研ぎを繰り返す津軽塗。一人でこつこつと行う手仕事は美也子の性に合っていて、その毎日に張りを与え始める。父のもとで下積みをしながら、美也子は少しずつ腕を上げていき、弟の勧めで、オランダで開催される工芸品展に打って出ることに。第1回暮らしの小説大賞受賞作!

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