- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863203693
感想・レビュー・書評
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むしろダンゲロスに必携の書かもしれない。
ネタに走っているようでいて実は真面目に解説してるのか、実用性は捨てて全力でネタに走っているのか、両極端に見えますがどっちに転んでもやっぱりネタに投球していることに変わりはない架神恭介の実用書/宗教解説書シリーズのひとつです。
ふざけていることに変わりはないのでやっぱりすごく真面目な方にはお勧めしがたいんですが、案外政治的に色はなく注意を払っているのがわかるので意外と慎重かつ丁寧、誠実に論を進めているかなといった印象です。
「シリアスな笑い」と「謎の感動」が同居する作家架神恭介の作風にハマれる人には実用書としての枠組みを越えた物語としての面白ささえ提供できるかもしれません。
仏教思想についてどう語ってくれてるのかなー? って疑問については他の人が回答してくれていると思うので、その辺の説明は放棄して別のプレゼンをします。
この本、架神恭介って作家を読む上では結節点に当たるかもしれない結構重要な著作です。
後年に出た代表作である『戦闘破壊学園ダンゲロス(ダンゲロス・シリーズ)』はこの本でも語られた仏教の縁起観(言葉による世界の切り分けが認識だとかうんらかかんたら)が世界観の構築に密接に関わっています。
漫画版、小説版を読んだ後、手ごろな本はないかなーって見つけて読んでみたところ、そっかー! って腑に落ちました。元ネタはこれか、って言うと不誠実な動機かもしれませんがそういう切っ掛けもあるということでご容赦を。
政治面から成立する宗教の観点については『完全教祖マニュアル』で補完されていると思うので、その辺が弱いと思った既読者はそちらをご参照を。
あと、この本のストーリーラインの主人公は『よいこの君主論』で覇権確立を阻むライバルのひとり「まなぶ」くんと同一人物かはともかく同名だったりします。
同一人物だと仮定して、彼がパンクロックに走ったきっかけはネットの海のどっかに転がっていると思うのでお手隙の時にでも探してみてください。
パンクロックについてはセックス・ピストルズを軸に精神性を語った『完全パンクマニュアル』があります。
実用性?(パンクロックに実用性なんざ求めんな、タコ!)はともかく、その辺作者の中で噛み砕いて乱暴でも自分のモノにしているので、説得力は大いにあります。
たぶんその結果、この本でパンクロックと仏教思想ってものを精神論として同列に並べて語ることになったと考えると、あっちの方も必読かはともかく、楽しむ上では外せないかなと思います。
この後に世に送り出すことになる『仁義なきキリスト教史』など一連のキリスト教と謎要素のハイブリッド本もこの『もしリア』の文脈を踏まえ、加えて仏教への架神流理解を踏まえてのものと考えると興味深いです。
で、ほかの紹介もそこそこに、この本に戻りますと。
この手の本にしては意外と字が多いですが、ストーリーパートと解説パートのメリハリが意外とついてるのと、太線表記とかQ&Aのやり取りが親切なこともあって他の著作の例に漏れずとても読みやすいです。
気楽に仏教のことを学べるじゃなくて知ることが出来るので、単純な知識のみならず、物事の観点が変わります。ちょっぴり怪しい言い方をすれば世界が広がるってのはこのことなのかもしれません。どっかーん!
「まなぶ」のはのちほど、とりあえず知るってことで。
で、最後に繰り返しますと。
この本、おふざけとおまじめの境界線がすごくあいまいですが、「そんなのいいじゃねーか」「ありのままに」って作者のメッセージは否応なしに伝わってきます。
そんなパワーあふれる一冊だと思うので、むしろダンゲロス関係なくいろんな接点から読んでほしいかなーって思う次第です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仏教について、よく知らないけど、勉強したかった時に読みました。
とにかく面白い!!
でも、重要な部分、ブッダがどんな思想を生み出したのか、そこからどう仏教ができあがり、日本にどう広まってどんな思想がまた生まれていったのか、はわかりました。
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Twitterでフォローしている真言宗の和尚さん、中村甄ノ丞氏が執筆協力しているとのことで読んでみた(尤も何もしていないと書いてらしたけれど)。
表紙を見れば一目瞭然なように『もしドラ』の二匹目の鰌を狙った本なんだけれど、まったく仏教に通じていない自分には充分な手引きとなった。パンクと萌えカルチャーに喩えた説明はわかりやすいし、何より本気にしなくていいので鵜呑み防止にもなるし(笑)。
<blockquote>仏教とは「どうやって生きていけばいいか?」という問題に対し、何らかの答えを得よとするもの(P.17)</blockquote>
こないだある人と飲んだ時に「あぁ、この人はバカなんだな」と思う人が―なにせバレンタイデーにtenngaを配ったと初対面の人間に自慢するようなお方でしたので―「宗教と哲学は生きるか死ぬかの違い」と判るんだかわからないんだかなことを仰っていたけれど、本質的な違いは無いかなと思う。そこに神秘主義が加わるかどうかが境目なのではないか?
著者は釈迦の教えを「論理的に現状認識を行って問題点を抽出し、それを克服するための精神的トレーニング法(観察型瞑想≒精神医学でいうところの離人症に近い?)」により意識転換を図るものと解説している。今で言うライフハック、自己啓発的なもんだったのかなと自分はイメージしました。
それを大衆にわかりやすくしたのが大乗仏教かなと。
無常観=空=どうでもいいというのはヒントになるかな。 -
そもそも、仏陀ってどんな人で、どんな風に神格化され、宗教はどのように進化してきたのかを、超ざっくり、下品にリズミカルに書いた本。
日本人の仏教感は、既に仏陀がやってた事の片鱗もない事がよく分かる。 -
資料ID: W0159142
請求記号: 180||Ka 16
配架場所: 本館1F電動書架A -
面白かった。仏教関係の本堅苦しいのが多いので余計に面白かった。仏教はパンク
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非常にユニークな表紙、タイトル、そして文体、ストーリーを有しておきながら、内容は意外にも真面目でわかり易い仏教解説でした。
現代的な喩えやブラックユーモアが丁度良い潤滑剤となり、本当はちょっと難しいはずの仏教思想をするすると読ませてくれます。よって、それらの特徴を素直に楽しめる人ならば、一読して損は無い一冊でしょう。
少なくとも、表紙とタイトルのパロディ色だけで侮り、スルーするのはとても勿体無い。そんな本であることは間違いありません。 -
パンクロッカーと仏教の取り合わせは奇妙な物に思え、奇を衒ったネーミングだと思いましたが、中身はかなり真面目な仏教の、概説本です。一般的に膝宗教観を持って読むと読み進みにくいですが、仏教を思想や哲学と位置付けて読んでいくとかなり面白く読めます。
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ファッションパンクな仏教入門書。表題と著作の傾向からパンクなギャグ路線かと思っていたが、良い意味で裏切られた。本題は仏教の現代的というか世俗的解釈。釈尊の五蘊非我、ナーガールジュナの中論、法相宗の唯識思想などなど、今まで自分が「宗教」だからと切り捨てて見てこなかった部分で、如何に先達が論理的な哲学的思考で人生観をとらえていたのか。またそれが如何にして人口に膾炙する宗教となったのかが暴力的(←パンク要素)なまでにざっくりとわかった気になれる。「読む人が読んだらブチ切れるんだろうなぁ」と思われる箇所も多いので、これだけ読んで理解した気になるのは大いに間違いだが、仏教から遠く離れてしまった現代人が一から始めるにはこれ以上ないくらい良書。