おべんとうの時間 (翼の王国books)

  • 木楽舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863240223

感想・レビュー・書評

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  • ANA機内誌『翼の王国』の連載をまとめたフォトエッセイ集。夫がカメラマン、妻がライターの阿部夫婦が全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材。海女、釣り堀経営、素麺職人、高校生、猿まわし、営業マン、大学教授…手作りのお弁当を食べながら語られたのは、お弁当箱には詰めきれない物語だった。

    見開きページの右側に、職場に佇む人物、左側にその人のお弁当の写真。ページをめくると、右側にお弁当をほおばる写真、左に人物が語ったお弁当にまつわる話。お弁当にまつわる話と言っても、仕事、家族、思い出など、話はどんどん広がっていく。皆それぞれお弁当が違うようにどれ一つ同じ話はなくて、それがとてもおもしろく、1ページだけではなくもっともっと読みたい、話を聞きたいという気持ちになった。

    印象に残ったのは、生命保険会社の営業のおじさんの話。お弁当は30年近く奥さんに作ってもらっていると言う。「弁当の中身のことは、なにも言いません。うん、それはもう言わないことにしてる。もし嫌なことを言われたら、作らないよね、やっぱり。弁当ってふたりで食べるものだと思うんです。作る人と作ってもらう人のふたり。作ってくれる人の気持ちは伝わるから、ありがたいなぁって思います。そしたら、なにも言えないです。」作る人の気持ちはお弁当と共に、作ってもらう人のそばにいるのかな、と思い心がじんわり温かくなった。どんなお弁当であっても「作ってくれる」ということ自体が大切で、ありがたいこと。作る人の思いやりと、作ってもらう人の感謝という気持ちのやり取りが、お弁当には存在するのだと感じた。

    ふと、私自身、高校生の頃は毎日母親にお弁当を作ってもらっていたことを思い出した。一度だけ、お弁当を食べようとしてうっかり箱ごと床にひっくり返してしまったことがあり、その時の母に対するすごく申し訳ない思いだけはとてもよく覚えている。母は仕事をしていたが忙しくても毎朝お弁当を作ってくれていて、やはり当時の私なりに母に感謝していたのだと思う。

  • 「おべんとうの時間」の第1巻です。全日空の機内誌に連載されている写真エッセイということですが、オシャレを目指しているわけではありません。どっちかというと、この列島に暮らす人たちの「生活」を、ちょっと泥にもまみれながら見つけてきているところが肝です。
     写真かとエッセイストの御夫婦の間にはおチビちゃんもいらっしゃるようで、本の中にも微笑ましく登場します。それがまたなんとも言えない味わいです。
     雑誌連載分に、独自収録分もありますが、取材しているところがなかなか半端じゃないのも素晴らしい。
     ブログにも書きました。覗いてみてくださいね。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202009090000/

  • 生命力の源

  • 美味しそうなお弁当の写真にどんどん引き込まれた。玉子焼ひとつとっても、見た目も雰囲気も違ってとても面白い。
    またそれ以上に、ランチタイムを通じて垣間見える色々な人の人生に触れられるのが良かった。日本全国津々浦々に、多様な物語が広がっている。お弁当にまつわる思い出話も十人十色。話し言葉で綴られているのが、その人の雰囲気が表れてるような感じがして、とてもほっこりした。
    ……自分もお弁当作り頑張ろうと思うなど。冷凍食品だって充分美味しいのだけれども。

  • 2010年刊。39名の国内在住の方々のお弁当の紹介と、インタビューが各1ページずつ。ご本人とお弁当の写真、食事中の職場の写真がセット。
    39編のショートストーリーを読むような楽しさがある。方言や各人の話グセ、人柄が滲んで、それも楽しく読めた。ANAの機内誌「翼の王国」の連載記事として積み重ねたものを、遂に目標たる一冊の本として纏めたという経緯。
    ご夫婦で撮影と執筆を分担されていると言う点も面白い。

  • 人のお弁当って、覗き見してるみたいでとても興味がある。
    それをじっくりみることができる!

    料理は好きで、まあ得意だと思うけど、とにかく詰めるのが苦手。普段のご飯も盛り付けが苦手。
    この本のどのお弁当にも、さりげなくステキな工夫があり、いいなあと思う。
    お弁当作りの本は、プロが作る撮影用だと思うけど、素人の普段が見えるのは楽しい!

    そしてとてもいい表情が撮れてることに驚く。
    素晴らしいコミュニケーションです!

  • いろんなひとの、いろんなお弁当。

    お弁当には、そのひとの思い出や家族の様子や暮らしぶりがギゅっとつまっていて、何でもない日常がとっても大切なものに思えた。

  • ひととお弁当の写真。

    C0095

  • その人の出で立ちと、ドアップのお弁当写真を見て、この人は何の仕事をしているのか、職場は何県か、お弁当は自作かお家の人が作っているのか、想像を巡らせながら次の回答ページをめくる。色んなお弁当やお仕事、人生を垣間見れる本。

  • いろんな職業があっていろんな日常がある。読んでいてあったかい気持ちになった。今みたいにジュースが溢れていなかった子供の頃。おばあちゃんが小鍋で作ってくれたコーヒー牛乳を思い出した。そんな事を思い出した一冊。

著者プロフィール

阿部 了(あべ・さとる)
1963年東京都生まれ。気象観測船「啓風丸」に機関員として4年乗船後、シベリア鉄道で欧州の旅に出て写真に目覚める。東京工芸大学で写真を学び、立木義浩氏の助手を経て1995年よりフリーランス。2010年の写真展「ニッポンチャチャチャ」では、全国のキャノンギャラリーにてお弁当とポートレートをモノクロ写真で展示。著書に「おべんとうの時間」1~4巻、「おべんとうの人」(ともに木楽舎)など。「おべんとうの時間」シリーズは、フランス、韓国、中国、台湾で翻訳語版が刊行。2011年からN H K「サラメシ」にてお弁当ハンターとしても出演中。2018年7月21日~10月8日・東京都美術館「BENTO おべんとう展― 食べる・集う・つながるデザイン」展に参加。

「2018年 『ひるけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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