芸術と科学のあいだ

著者 :
  • 木楽舎
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本棚登録 : 706
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863240933

作品紹介・あらすじ

『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』の著者が科学の言葉で解き明かす、芸術深読み論。

感想・レビュー・書評

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  • 白い正方形に黒いフォント。
    シンプルでクールな装丁が目をひきます。

    日本経済新聞に連載されたコラムを書籍化した本書。
    個々のコラムもよいけれど、1冊にまとまったことで、1篇1篇の緩やかなつながりをより一層楽しめました。
    芸術の中の科学、科学の中の芸術。
    福岡伸一先生に導かれつつ、学問の根っこをたどれば芸術と科学が近いものだったことに思いを馳せていたのでした。

    以前から『Molecular Biology of the Cell』の、科学者たちのアソビゴコロあふれる裏表紙ににまにましていたので、本書でも取り上げられていたことに親近感を感じました。
    また、福岡先生のレーウェンフックとフェルメールに関する仮説が「もし本当だったら···」と思うとわくわくしてきます。
    きちんと証明されてほしいような、仮説のままであってほしいような···。
    知的な高揚感に包まれながら読了。

  • ほぼ1:1のアスペクト比が良い。ただ白いだけの装丁が良い。表題が活字でなくデザインされたフォントで書かれているのが良い。ちゃんとした活字だと日本語の場合、意味が目に飛び込んできてしまうので、記号化されているとデザインのひとつとして見れるから良い。こういう飾っても絵になる本は意外と好きだなぁ~。トイレの常備本として決定! 隠(ちん)思黙考のお供に。

    ということで、久しぶりに買って読んだ本。日経新聞の連載をまとめたもの。約1000文字のコラムが74話。それぞれの話にひとつは役立つ話、目からウロコ的な情報が含まれていて、グイグイと読み進んでしまった。これはサラっと1度の素通りで読み終わるのはもったいない。時々手にして興味のあるところを読み返し、1話ごとに添えられたARTな画像を眺めながら思索に耽りたくなる(のでトイレ常備本に・笑)。

     ミケランジェロ、フランク・ロイド・ライト、ロゼッタストーンに漢倭奴国の金印、赤外線写真から近頃日本で流行りのエアリーフォトまで、取り上げるジャンルが実に広範。
     特に、自身が大ファンだというフェルメールを扱ったパートは質、量ともに重厚だ。ただフェルメールを取り上げていても、その切り口や付随情報は多様で斬新、個々の話それぞれ独立して楽しめる(新聞のコラム故、そういう作りになっているとはいえ、見事だ)。
     かと思えば、1章でMOMAに飾られたイサム・ノグチの「エナジー・ヴォイド」という中空の作品を見て、自分自身がヴォイド(≒空虚)であることを思い出すという理由は、終盤の免疫システムを語るところで明かされたりする。曰く、免疫システム上、自分自身と反応する、まさに自己とも言える細胞は、将来の外的との戦いには用を為さないとして生育の途中で淘汰され、残るのは非自己な細胞というパラドックスから来るというのだ。
     著者自身が、見事に芸術と科学の間に存在しているんだなぁ。いや、芸術だけでなく、森羅万象、様々な事柄に対して絶妙のバランスで立ち位置を確保している。本書で紹介される”ボロノイ分割”という幾何学の概念のように。

     著者は生物学者だそうな。動的平衡という方丈記の”ゆく川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず”な理論の著作も有名だとか。本書の中にも幾度となくその理論に基づく解説があるが、理屈っぽくなく明快に簡便適切に説明してくれているので感覚的にとても分かりやすい。
     この”感覚”というのが大事で、突き詰めればArtもScienceも感覚、感性、ひらめきの産物なんだな、という気がする。つまり、その間には、実は境界線はないのかもしれない(そこにもヴォイドが?!)

  • 螺旋とは進化の内向的運動であり、生命の志を具現化したデザインらしい。

    螺旋の殻を持つアンモナイトは分布領域が広く短期間に栄え、急速さ故に滅び示準化石となり人類に対しての暗示となるようだ。

    人類は芸術という名の化石を遺していくのかもしれない…

  • 蝶は脚の先で味覚を感じる。脚で蜜を感じると、それまで螺旋状に固く巻かれていた口物がするするとほどかれる。
    螺旋をテーマに蝶の口物、バベルの塔、アンモナイト、DNA、電話線のコード、縄文土器、室伏広治、葛飾北斎を同一線上で結ぶ発想力。
    ---
    ヴィレンドルフのヴィーナス、ON KAWARA、ランドルト環、パワーズ・オブ・テン、ボロノイ分割、

  • 科学も芸術も世界の新しい見方を作り出している。生み出せなくとも感得できる感性は持ちたいと思った。

  • 福岡さんがこんなに芸術(特にフェルメール)好きだったとは知らなかった!
    福岡さんが絵画から受け取るもの、その書き方がとても素敵。

  • 間借り本屋トカクで取り扱っている本の紹介
    芸術と科学、文系と理系、2つは離れているようにみえるのは、日本の教育制度がそう切ったから。日本以外に、わざわざ相反するものとして分けた国などない。
    そんな簡単な話じゃないのに。

    本書は別に、それに対する意見とか批評とかをする本ではないということは申し添えておく(冒頭にちくり、といっているだけ)。

    P4引用
    『常々感じることがある。日本の教育制度が、かなり早い段階で 中学と高校とかのレベルで文系向き、理系向きという区分を作って 仕分けをしてしまっていることは大いなる問題だ(略)
    大学で教えていると、文系学部の学生の中に、いわゆる理系的セン スが優れている人をたくさん見かける。(略)
    キーウイフルーツの断面を見て、その外のかたちや 種の配列 数から、それが縦方向に切られているか、横方向に切られ ているか、あるいは斜め方向からか、斜めだとすると、キーウイのと のあたりが切られたものなのか、ばっとイメージできるセンス。これ は科学で要求される大切なセンスだ。でも数学や物理の計算が得意と いうのとはまた違って、どちらかといえばアーティスティックなセン スである。 美を求めるセンスといってもいいかもしれない。』

    芸術面は、とりあえず著者のひとがフェメールオタクということはわかった(画家のフェメールさんの話がよくでてくるなーと思ったら自身で明言されていた)。
    科学のほうは、一番の衝撃がアンモナイトの殻の構造について。
    は?あれ、貝みたいに単なる模様じゃなかったの?
    オウム貝と同じじゃないの?
    とおもっていま調べたらオウム貝もあれ殻の全部が居住区じゃないの?
    まだまだはじめてしることばかりだ。

    P143 引用
    『状態のよいアンモナイトの化石をスパッと二つに割ると、 その断面には数学的な規則性をもって隔壁が並び、 小部屋が 連続しているさまを見ることができる。このことからアンモ ナイトは貝ではなく、イカのような身体をらせんの一番外側 の部屋にひそめ、あとの小部屋は空気室として浮力を得るた めに使って海中遊泳していたとされる。その証拠に隔壁に は液体と気体を交換できる細い通路が開いている。』

  • 科学者が芸術を語る。前置きとして、文理にはっきりわけて芽をつみとるのはもったいない。理系的センス=空間認識美を求めるセンス。
    基礎力を基礎学力に例える。

  • 日経新聞で連載されていたという芸術と科学にまつわるエッセイ。芸術の中に科学を見出し、科学の中に芸術を見る、なるほどなあと思う。ひとつひとつが短めで読みやすかった。芸術も科学も楽しくなる本。

  • 福岡伸一氏の美術に対する感性の豊かさに驚いた。螺旋や時間に対する視点が随所にちりばめられていて、新たな見方を学んだ。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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