曲芸師のハンドブック

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制作 : Craig Clevenger  三川 基好 
  • ヴィレッジブックス (2008年4月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863320062

曲芸師のハンドブックの感想・レビュー・書評

  • 薬物過剰摂取を繰り返す主人公は精神病院へ強制入院させられることを防ぐために偽名を使い人生を作り、を繰り返して現在の名はダニエル・フレッチャー。
    ダニエルがカリソプロドールを過剰摂取して運び込まれた先で彼の精神鑑定をする医師、リチャード・カーライルとの遣り取りと言うか…精神鑑定をクリアするために駆使するテクニックの数々と独白のように織り込まれるダニエルの過去が折り重なるようにして話が深く沈んでいく感じでした。

    ダニエルの過去は六本目の指、家庭の貧困と言った様々な不幸に彩られているけれどいじけも僻みもせずに前向きに(偏頭痛の薬のために偽名、偽造と犯罪を犯しはするものの)生きる姿はとても力強かった。

  • あたしはどーも早くページをめくりすぎていかん。
    速読なんてそんな良いもんじゃないんです。
    とにかく先が知りたくて!を繰り返しているうちに、
    結局何の話だかわからなくて終っちゃうっていう笑。
    これも、そう。
    結局キアラが何だったのか、理解できずに終了。
    作者は悪くない。あたしが悪い。
    もういっかい読みます。

    気が向いたら。

  • まるで自分も何か薬を飲まされたような感覚。脳内でいろんなことが起こっていて、でも決して不快ではない。主人公ジョン・ドラン・ヴィンセントの見せる「曲芸」に酔わせてもらいました。

    図書館の新刊コーナーで見つけた本です。帯にいきなり<何だ、この小説は!?>とあり、<曲芸師流仰天のラスト!>、<幾多の偽名を駆使する謎の患者が、医師へ仕掛ける絶妙な心理戦>とあるのを見て、めちゃめちゃ惹かれて借りてみたのでした。本書はこの作家のデビュー作で、とにかく「衝撃的」とか「面白い」とか「あっさり一流作家の仲間入り」とか、かなり絶賛されています。

    カバーの折り返し部分にあるあらすじを書くと、

    薬物の過剰摂取を繰り返す若者、フレッチャー。
    人間観察力にすぐれ、人の目を欺くことに長けた彼は、
    強制入院させるか否かを鑑定する精神科医を相手に、
    虚々実々の駆け引きを繰り広げる。

    精神科医とのやりとりで垣間見える
    複雑な生い立ちと、恋人キアラへの深い愛――。
    フレッチャーとはいったい何者なのか?

    まさしくこの通りです。なぜ薬物の過剰摂取を繰り返すのか。それは彼にとっては仕方のないことで、結果的にそうなってしまうだけ。だから自殺の恐れがあると判断されて強制入院させられないように、精神科医との面談が「駆け引き」になってしまう。そして<幾多の偽名を駆使する>という事情もこの辺から来ている。ここが哀しいのです。

    ほんとに読後は、なんて哀しい小説、と思います。フレッチャーことジョンは、著者自身も言っているように主人公は「自己憐憫をしない」から、生い立ちは不幸なんだけど読んでいる最中はそう暗いわけでもないんです。だからこそ哀しい、というの、わかるでしょうか。

    ただ帯にあった<仰天のラスト!>というのはちょっと違うかも。〈タイムアウト〉誌のコメントとして<ラストの衝撃には目をみはるものがある>とあるし、何か読み落としてたんだろうかと読み返したりもしたんだけど、そういうわけでもないみたい。どうやらこのひと言で過剰に期待させられちゃったようです。そうは言っても、仰天のラストとはいかずとも、ジョンがあることに気付いていく過程で「あらそうだったの」という静かな驚きはありました。

    おもしろかったです。海外の作品を読むのはやっぱり新鮮。国内の小説を読んでいるばかりでは味わえない感覚が、脳に風穴をあけてくれる感じがします。

    原書は、"The Contortionist's Handbook" です。

    読了日:2008年5月24日(土)

  • 薬物の過剰摂取を繰り返す若者、フレッチャー。人間観察力にすぐれ、人の目を欺くことに長けた彼は、強制入院させるか否かを鑑定する精神科医を相手に、虚々実々の駆け引きを繰り広げる。精神科医とのやりとりで垣間見える複雑な生い立ちと、恋人キアラへの深い愛―。フレッチャーとはいったい何者なのか?幾多の偽名を駆使する謎の患者が、医師へ仕掛ける絶妙な心理戦。曲芸師流仰天のラスト。読むものの心を捉えて離さない、注目作家の衝撃デビュー作。

    20回の推敲を重ねた作品とあるだけに、文章の切れは鋭く、無駄な文章はない。精神分析、刑務所などの描写のリアリティには驚くばかり。人間存在に関する深い洞察があるのだが、サスペンス小説のようなラストに全ての出来事が氷解し、ハッピー・エンドとなる結末には、ややがっかりさせられた。

  • これは一般的なことなのかどうか解らないのだけれど、恐怖を感じると体の中で何かがひょうと音を立てて縮こまるのを感じる。その収縮の度合は恐怖心の裏側にある痛みと、いや正しくは頭が勝手に想像する痛みと、比例しているかのようにも思えるのだが、こぶしで殴られたような痛みを想像してもそのような反応は引き起こされず、もっぱら鋭利なもので体をおかされる時に感じるであろう痛みを想像する時に、特に縮み上がってしまうものだと言える。クレイグ・クレヴェンジャーの「曲芸師のハンドブック」は、いきなりそんな収縮を喚起するような、鋭い言葉に満ちている。

    だからといって鋭利な刃物が振り回されている訳ではないのだ。むしろ淡々といってもよいような語り口で、冷静に状況が描写される。そして冷静なまま「狂う」その一瞬の狂気が萎縮の根源なのである。あるいは、ドラッグに対して自分が抱いている心象が刃物のそれと重なり合っているせいなのかも知れないが(そんな自覚はないのだが)、とにかく、この萎縮を振り解くための身震いなしには読み進めないのであった。

    痛みを想像すると収縮が起こるとは言ったものの、本当のところはどうなのだろうか。自分はかつて左手の親指の第二関節の甲の側を、ざっくり大きなナイフで削り落としそうになってしまったことがあったが、その瞬間、痛みは感じなかったように思う。むしろ白いものが見えてしまって、うひゃあこれってどうなるの、と思った途端に貧血を起こしたような感覚に襲われたことを覚えている(もちろん、あとからはドクッドクッとした鈍痛も襲ってきたけれども)。鋭い痛みというのは、だから実のところ「理解不能」な状態に対する脳の反応を指しているのかも知れないなと思う。

    クレヴェンジャーのこの小説は、始めの方こそそんな鋭い痛みに似た刺激(つまりは理解不能な何か)に満ちてはいるものの、徐々にもっと頭を殴られたような感覚へと変容していく。それはやがて、頭の中で飽和して、痺れてしまうような感覚になり、最后にはドクッドクッとした生の痛みとなる。いうなれば、強制的に静止させられたような感覚を呼び起こすものから、もっと強烈に自分の体が生身の生命体であることを意識させられるような刺激へと変化するのである。

    主人公のモノローグ、その常に他人に見られていることを意識した文体で綴られた語りは、到底主人公の本心を投影したものである筈がないという了解を無意識に読者に刷り込むけれども、この徐々に痛みに慣らされていくような読書が、読み手の中で少しずつ主人公に対する像を積み上げていく。それを、理解、と呼ぶのは余りにナイーブ過ぎると自分は思うのだが、読後、不思議と痛みは霧散してしまうのであった。

  • 苦しくてせつなくてかわいそうな話だと思ったんだけど、そう感じた自分は彼と同類なのかもしれないな。あるいみ真っ当な青春小説。

  • 帯表
    何だ、この小説は?!
    曲芸師流仰天のラスト!
    ◎神に誓っていうけど、ここ5年で最高の小説だ。
    少なくとも5年。もしかすると10年来の傑作かもしれない。
    ーチャック・パラニューク(『ファイト・クラブ』)
    ◎ここ何年ものあいだで、もっとも面白い作家のひとり。
    万人に読まれて当然の1冊。
    ーアーヴィン・ウェルシュ(『トレインスポッティング』)
    幾多の偽名を駆使する謎の患者が、医師へ仕掛ける絶妙な心理戦
    帯背
    パラニューク、ウェルシュ絶賛!
    注目の新人作家
    帯裏
    ◎注目のデビュー作。
    ラストの衝撃には目をみはるものがある。
    ー〈タイムアウト〉誌
    ◎クレヴェンジャーは自ら強く焼きつくイメージを読者の心に植えつける。
    その結果が、純粋で堅牢で、見事に完成されたこの小説だ。
    ー〈シアトル・タイムズ〉誌
    ◎この完璧さ、あらゆる意味において、クレヴェンジャーはこの一作であっさり一流作家の仲間入りを果たした。
    ー〈ガーディアン〉紙

  • 頭脳明晰な弱者が選んだ道はカメレオン的生活。可哀想なお話。

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薬物の過剰摂取を繰り返す若者、フレッチャー。人間観察力にすぐれ、人の目を欺くことに長けた彼は、強制入院させるか否かを鑑定する精神科医を相手に、虚々実々の駆け引きを繰り広げる。精神科医とのやりとりで垣間見える複雑な生い立ちと、恋人キアラへの深い愛-。フレッチャーとはいったい何者なのか?幾多の偽名を駆使する謎の患者が、医師へ仕掛ける絶妙な心理戦。曲芸師流仰天のラスト。読むものの心を捉えて離さない、注目作家の衝撃デビュー作。

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