螺旋

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制作 : 木村榮一 
  • ヴィレッジブックス (2010年2月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (614ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863322233

螺旋の感想・レビュー・書評

  • ★★★
    コーアン出版社に勤める編集者のダビットは、社長のコーアンに呼ばれ秘密の指令を受ける。
    コーアン出版社は、謎の作家トマス・マウドによるSF大河小説「螺旋」の大ヒットにより一流出版社の仲間入りをしていた。
    定期的に続編を送ってきたトマス・マウドだが、ここ数年は配達が止まっている。実はトマス・マウドの正体は誰も知らない。ダビットの指名は、トマス・マウドを探しだし、続編を送らせること。
    コーアンの調査により、トマス・マウドはブレダレッホという田舎の村に住む六本指の人物だと推測される。
    ダビットは妻のシルビアと共にブレダレッホへ向かう。これは夫婦の将来を決める旅行でもある。

    ダビットとシルビアの着いたブレダレッホには、元船乗りエステーバン、死病の床に就きながら元気な時のように村人に慕われるその妻アリシア、シングルマザーのアンヘラとその息子トマスたちに会う。

    コーアン社長の秘書エルサは離婚したばかりの40代の女性。
    ダビットに勧められた「螺旋」を手に取り、今までの人生を思い起こす。

    麻薬中毒者のフランは、ひったくったバックに入っていた「螺旋」を手に取り、自分が本を読んでいた頃のことを思い出す。

    彼らの人生、彼らの生活。

    1冊の本は確実に数人の人間の人生を変えていく。
    ★★★

    小さな奇跡と善意と偶然が重なって、未来が確実に良い方に変わっていく。実に素直で前向きな1冊。
    しかしダビットくんは、トマス・マウド探しでド素人らしく直撃しては撃沈しを繰り返し、
    1回目はともかくさすがに2回目はもうちょっと方法考えようよ、六本指の人間が複数出てきた時点で確認方法変えようよなどと本に話しかけたくなってしまう(笑)

    作者はスペイン人。これを書いたのはまだ20代の時で、初めて出版された小説らしい。
    主眼者が移り変わる描写は唐突だともと感じたのですが、20代ほぼ処女作だからかなーとは思いました。

  • あー面白かった。エンターテイメントとして読書をするならこういう本だけ読んでいたい。600ページの長編だが、一度手に取ったら続きが気になって離せなくなりあっという間だった。
    編集者が正体を隠した謎のベストセラー作家を探しに行く、枠組みとしてはミステリー(というのか?)で、エンタメ小説だ。ストーリーテリングがとにかく巧み。寒村で6本指の作家を探すなんて簡単、と乗り込むとそこらじゅう6本指の人たちが…そこで起きるドタバタ劇など意外性に富み、存分に愉しませる。また、それだけではない。編集者と妻、死にゆく妻を抱えた興味深い村人、また、後半並行して語られる麻薬中毒者の青年や友人たちなどのキャラクター設計が実にいい。彼らはみな生き生きとし、自分の声を持って語る。この暖かくポジティブな世界観に、この作家の人柄や個性を感じる。
    また、多数出てくる作家名や書物のタイトルから伝わる熱い読書愛も心地いい。私は作家・編集者・文壇ものは好きではないのだが・・・そりゃ作家という職業にとって「工作機械の営業マン」より編集者のほうが遥かに書きやすいのだろうが、そんな特殊な狭い世界、内輪ネタすぎるだろう・・・、この小説においては読書好きの一人として楽しんだ。
    作家は1979年生まれのスペイン人、若い現代作家が日本に紹介されたのが嬉しい。スペイン語翻訳で実績のある木村栄一氏、どんどん面白い作品を発掘して下さい!

  • 1年前に読み始め、半分読むのに1年かかりました。
    それが、不思議なもので先週、たったの2、3日で読み終えました。
    初めはそれほど惹き込まれなかったのです。典型的な都会人でエリートのダビッドが田舎に来ていかにも典型的な失敗を繰り返す、都会とは違い、ゆったりした生活を送る人々やトマスマウドを取り巻く素晴らしく優しい人たちとのやりとりが暫く繰り返される、少し退屈になり読むのを止めていました。
    読むのを再開してからは、1つの本によって色々な人生が交わって変わっていくのに惹かれてどんどん読み進みました。トマスマウドとは誰か?というよりは、何か?と問う方が良いかもしれません。

  • 正体不明の小説家を探して、編集者が素人探偵と化して奮闘する話。訳が良いのかすいすい読めるので、何かを一気読みしたいときにおすすめ。600ページと長めだけれど、最後までダレない面白さだった。登場人物がほぼいい人たちかつ各人にびっくりするほど良い結末が用意されていて、気持ちよく本を閉じることができる(個人的にはそこに少し興を削がれたとも言える。好みの問題です)。

    読み始めてすぐに、なんだか作者は精神が健全ないい人そうな感じがしたのだけれど、あとがきで木村さんが「控え目で感じがいい」と書いていて、やっぱりなあと思った。

  • 世界中の読者を夢中にさせるベストセラー小説、『螺旋』。謎につつまれたその作家の正体をさぐるため、編集者ダビッドは観光客を装って僻地の小さな村へ。
     といってもミステリー色はあまり強くなく、あいまいな手がかりに振り回されて、妻に捨てられそうになったり、木から落ちたりと、次々と災難に遭遇するダビッドのへっぽこ探偵ぶりがユーモラスに描かれる。ダビッドが、つつましい愛情にもとづく生活の価値を見出し、作家の正体にたどりつく過程に、麻薬中毒から抜け出そうともがくフランの物語が絡み、一つの物語のつくり手、送り出し手、受け手が、それぞれに大切な人との関係を再発見していくことになる。
    物語をめぐるメタ物語的なものを想像していたのだが、都会と田舎、金を得るだけの労働と、つつましやかな愛情につつまれた生活を対比させて、最後はすべてがおさまるべきところにおさまるという、わりあいにシンプルな物語だ。へんにひねらないところが好感はもてるが、いささか保守的な感じがしないでもない。

  • 愛情深い物語を読んだ。
    現代的なのに、どこかファンタジックでおとぎ話のような雰囲気がある。

    善き人たちばかりなのだけど、安直ではないし、生命を吹き込まれた登場人物たちなので、ひとつひとつのエピソードにひどく心を動かされた。

    人生は悲しみが多いけれど、幸せを見出だす底力を人は秘めていることを信じられる気がする。
    素直な気持ちで受けとめました。

    自分にとっては、あまりめぐり会わないタイプの貴重な小説かもしれない。
    大切なのは人である。素晴らしかった。

  • 話の流れは時間軸に沿って展開される、主に三人のそれぞれの人生。
    3つの人生が螺旋のごとく、交わらずに中心を向いて動いていく。
    「どこかで交差するのか」と期待もしたが、無理にくっつけた感のあるラストは、しっくりせず作りすぎ。
    ミステリー要素もあるが、もう少し人生を深く描き進んでくれたら…と思ってしまった。

    それでも一気に読みたくなるドライブ感は良い。

  • 読んでいる間は他になにもできないような、そんな本だった。久しぶりに。今年のゴールデンウィークの1冊め。

    トマス・マウドという幻の大作家を探しに田舎の小さな村にバカンスを装って出かけていく編集者の話と、都会の若い麻薬中毒患者がドラッグから抜けだそうとする話、というまったく混ざり合う要素のないふたつの話が入れ代わり立ち代わり語られる。

    『フーコーの振り子』っぽく始まり、『呪いのデュマ倶楽部』っぽい展開になって、ちらっと『指輪物語』をかすめて『プライムサスペクト』に着地した、みたいな。

  • 本気ガチで面白かった。

    「螺旋」という本のタイトルは、この物語の中で、トマス・マウドという謎の作家が書いているベストセラーの本のタイトル。その作家からすでに届いているべきの次巻の原稿が来ないことから、編集者のダビッドは、その作家が暮らしているとされる村に「彼」を探しに向かうこととなる。

    「螺旋」の本を中心に、さまざまな、全く違う環境に身を置いていた人間の人生が螺旋を描くように絡み合って、一つの流れの中に描かれていくような。
    1人1人の生き様が素敵だなぁと思うような、話。

  • またしても表紙の装丁のイメージと違う。

    スペインの若手作家だけあって、筆致は軽やか。
    やはりラテン。ラテンの雰囲気満載。
    内容が軽いという意味ではなく、文化の違いを実感。

    欧米文学特有のまわりくどい比喩表現、
    どうしてそこで笑うのかとツッコミたくなるジョーク、
    あいさつ代わりの抱擁やキス。
    私のような文学(特に古典)に無知な人にはわからないネタ。

    翻訳物が苦手というわけではなかったが、今回は久しぶりということもあって、このクセのある文体に慣れ、プロローグである第1章~第3章くらいを読むのにだいぶ時間がかかった。というかあのプロローグは私には長すぎたし、正直あそこまで長くする意味あるのかな?とも思った。
    ようやくストーリーに引きこまれはじめたのは、3分の1を過ぎたあたりか。

    マドリッドの出版社に勤める編集者のダビッドは、誰も正体を知らない世界的ベストセラー作家、トマス・マウドを探しにピレネー山脈の山深いところにあるブレダレッホという村を訪れる。

    このダビッドのトマス・マウド探しに挟みこまれるように、ダビッドの会社の秘書、彼女の姪、秘書のバッグを盗んだ麻薬中毒の青年の話、青年が助けを請うコンピュータ技師の青年の話などがそれぞれ"螺旋"のように絡まってくる。

    村人の驚くべき事実だとか謎の作家探しだとか書評に書いてあったもんだから、ミステリーだと勘違いするが、ミステリーの要素は意外に少ない。
    第一ダビッドの推測や探し方ってちょっと頭悪い感じに書かれてるし(笑)
    しかし結果的にはそれが期待はずれだったといも言えるし、むしろよかったような気もする。
    作者はミステリーや人探しに主軸を置いているわけではないのだ。

    排他的で謎めいているように思えた村は、大地に根付いた死生観を持ち自然と共生しながら質素に暮らしている。
    この村では、子供が生まれると両親はその子のために木を一本植える。
    その子が大人になって亡くなると、木を切り倒して棺を作る。

    このエピソードを読んで私は「メメントモリ」という言葉を思い出した。
    死は敗北ではなく、自然の一部として受け入れているのだ。

    私は海外含めて旅行が好きだが、いわゆる大都市の観光でなく、小さな街や村で生活を味わうのが好きだ。
    こんなブレダレッホみたいな村にいって、バルでビールを飲みながら地元の人とカタコトのスペイン語でおしゃべりできたらなあと思う。

    登場人物に比較的感情移入できたのはヤク中(治療中)のフランかなあ(笑)?

    全体を通して読みにくい部分もあったが、読後感はさわやかでホッとする。
    機会があれば作者の他の作品も読んでみたいと思う。なのにさ、あとがきで訳者が他の作品のあらすじを詳細に書いちゃってるの。
    あれは書き過ぎなんじゃないかなあと思った。

  • 第1回(2011年度)受賞作 海外編 第8位

  • マドリッドにある出版社の編集者ダヴィッドは、社長から一つの依頼を受ける。それは、ある人気作家を探し当て次回作の原稿をとってくることだった。ただ、そこには問題があった。その作家トマス・マウドは、原稿を郵便で送りつけてくるだけで、誰も顔を見たことがない覆面作家だったのだ。

    調査の結果、郵便の発送元はピレネー山麓にある人口六百人ほどの僻村であること、さらに原稿についていた指紋からその男には右手の指が六本あることが分かった。いつも留守がちで妻との間に波風が立ちかけているダヴィッドは、仕事の件を秘密にして妻を誘い、休暇旅行という名目で村に向かうのだったが。

    探偵役が妻同伴というあたりからどうやら普通のミステリではなさそうだなと気づく。たしかに謎があり、最後にその謎は解かれるのだから、ミステリと呼んでもまちがいではないが、六本指を持つ謎の男探しというテーマに見合ったサスペンスは一向に登場しない。主筋ではドジでマヌケな素人探偵のドタバタ劇が展開されるばかり。そればかりか、秘密がばれ、怒った妻はマドリッドに帰ってしまう。一方マドリッドを舞台にしたサイド・ストーリーでは麻薬中毒から抜け出そうとする若者のシリアスなドラマが進行中で、何組かのグループが織り成すドラマが平行して物語は展開されてゆく。ジグソウパズルの最後のピースがあるべき場所にはめ込まれるように物語の最後で、それらはぴったり結ばれる。そのパズルの絵柄こそ作中の『螺旋』という小説なのだ。

    ミステリは好きだが、知性も洞察力もありそうな犯人が、どうして割に合わない殺人を犯すのか、それも連続して何人もの人々を、という疑問がある。どれだけ上手に書かれても、殺人という行為はにはよくない後味のようなものが残る。

    この小説のいちばんいいところは、後味のよさというものではないだろうか。作家の個性でもあろうが、人間というものに対する肯定感のようなものが読んでいるあいだずっとただよっている。エキセントリックな村人も多数登場するのだが、その書きぶりに好感度が高い。一口に言えば誰もが善人なのだ。善人ばかりを登場させて面白いミステリを書いてみせるという困難に挑戦したという点で、この小説の点は高い。

    探している覆面作家は大体この人だろうという見当はつくのだが、作家は簡単に正解には導いてはくれない。ちゃんとどんでん返しが待っている。サイド・ストーリーがメイン・ストーリーと出会う設定はハリウッド製のロマンティック・コメディ顔負けのご都合主義的解決ではあるが、それまでに登場人物に対して思い入れがあるので許してしまう。弱冠二十五歳でこれだけの小説を物にしてしまう作家の才能にあらためて驚く。次の作品が早く読みたいと思うのは評者だけではないだろう。

  • 途中、この人が著者だろって見当つけてたら、違った。うん、それはなるほど、そりゃ自分が当人じゃないって否定するよね。
    中毒者たちの会話が途中でうざったいほどあるのだけれど、その過程を経て、彼が『螺旋』で運命を変えるっていうのを結末まで読んで、まあ無駄じゃなかったのかと納得出来る感じ。
    同じ本を読んだ人々の運命がこれだけ重なるのはご都合ながら、おもしろかった。

  • 謎の作家を探す旅。同系の話としてはJ・キャロルの『死者の書』、篠田節子『聖域』があるが何れもダークな仕上がり。それに比べ本作はスペインの空のようにカラッと晴れている。手掛かりは人口六百余の僻村に住むこと、6本指であること。印象的だったのは謎の作家の隠れ処である地下書斎。アレクサンドリア図書館、迷宮図書館、バベルの図書館それにミスカトニック大学等、暫し迷ってみたい魅惑の宝物庫は数あれ、金文字革装丁の稀覯本等一冊もない螺旋の図書館が一番居心地良さそうだ。唯一人の為に書かれた世界的ベストセラー『螺旋』も又良し。

  • 元サヤと秘書さんが心配。

  • 最後にすべてがつながる展開に魅了される。都合が良すぎる面もあるが、登場人物が奇妙な村人をはじめとして皆生き生きとしている。

  • ここまで長くする必要があるのかとか、まどろっこしいとかいう批判はあるでしょう。それでもなお、読後に面白かったなーと余韻の残るスペイン小説です。複雑なミステリーではなく、肩肘張らない軽快な物語。

  • 久しぶりに面白くわくわく感を感じた本。

  • スペイン人である著者の 25 歳でのデビュー作品。
    とてもそうは思えない、なかなかのストーリーテラーぶり。
    よく考え込まれたプロット。
    愛すべき多くの登場人物。
    物語の世界に気持ち良く入り込める。
    作者の力量に魅せられた、気持ちの良い作品であった。

    翻訳物はよく、「訳者あとがき」なるものがあるが、
    何故、著者の他作品のあらすじをすごく丁寧に書いてしまう人が時々いるのだろう?
    謎である…。

  • 外文で厚いし人気はでないかもしれないなぁと思われる。
    でも、どんどん面白くなるので是非。
    最初80ページぐらいまで話が見えないのですが、頑張って

  • 面白かったけど、期待しすぎていたかな。

  • エクセレント!

  • 現代アメリカ文学を好むという作者。なるほど、読みやすい。すんなりいける。私には薬中解脱のサイドストーリーの方がおもしろかったかも。

  • タイトル、装丁、25歳の著者がIT企業に勤める傍ら書いた処女長編というところからもっと都会的なミステリーを想像していましたが、いい意味で裏切られました。
    謎解きがメインではないので、ミステリーを期待された方には肩すかし気味かも。でも登場人物の描写はしっかりしていて小説として面白いです。特に25歳の著者が30代半ばの夫婦の危機をどうしたらあんなにリアルに描けるのか不思議(笑)
    (最後の長い謝辞を読んで著者が結婚していることがわかって少し納得しましたが)
    作中の、新進作家レオの話のところで「ほとんどの作家は、世に出たい一心で二作目よりも処女作に自分の才能、魂、信念、なんでもいいが自分の持てるものを目いっぱい注ぎ込む」とあるように、この作品も若干盛り込み過ぎな部分がないわけではないですが、1979年生まれと若いパハーレスの二作目、三作目が読んでみたくなります。訳者の木村榮一先生がほれ込んだのも納得です。

    難をいえば訳者あとがきでパハーレスの二作目三作目のあらすじが物語のラストも含めて(!)それぞれ2ページくらいずつ書かれていること。
    木村先生は今後訳す気がないんでしょうか…。でもこんな詳細なあらすじは勘弁してください!!パハーレスの二作目以降の邦訳が出るのを期待される方はこのあらすじは読まないほうがいいです…

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螺旋の作品紹介

絶妙な語り口、緻密なプロット、感動のラスト。大ベストセラー小説『螺旋』の作者トマス・マウドは、本名はもちろん住んでいる場所すら誰にも明かさない"謎"の作家。「なんとしても彼を見つけ出せ!」出版社社長に命じられた編集者ダビッドは、その作家がいるとされる村に向かう。一方、麻薬依存症の青年フランは、盗んだバッグに偶然入っていた『螺旋』をふと読み始めるのだが…。いったいトマス・マウドとは何者なのか?2つのストーリーが交錯する時、衝撃の事実が明らかになる!驚異のストーリーテラーが放つ、一気読み必至の長編小説。

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