in our time

  • ヴィレッジブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (61ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863322462

作品紹介・あらすじ

作家、ヘミングウェイの原点。珠玉の短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 超短編の各章に描かれる出会い。兵士と兵士であったり、男と女であったり、人と牛であったり。人生とは、こういう出会いの積み重ねなのだと、ヘミングウェイが教えてくれる。塀を登った兵士が待ち構えていた敵の兵士に撃たれてしまうという、一瞬で終わってしまう出会いもあるが、物語が終わっても、読後の余韻があとをひく。
    これを読んでから、『In Our Time』1925年版を読むと、超短編と短編のエピソードが交互に織りなす余韻が重なり、こころに響いてきた。

  • 素晴らしい翻訳。高見浩訳もとてもいいのだが、柴田訳でヘミングウェイを読める喜びを噛み締める一冊。文章の良し悪しってわたしは直観でしか分からないのだけれど、ヘミングウェイの文章はかけ値なしに美しいと感じる。削ぎ落とされたシンプルな言葉の影に潜む緊張感にぐっと心を掴まれる。こんなに文章自体が素晴らしいと思えることはなかなかないし、文章を読むことの大いなる喜びを感じることができる。以下解説から。
    「むしろ、たしかに暴力的で緊張をはらんだ瞬間でもありながら、世界の無意味さが露呈するような、どこか滑稽な、茶番めいた瞬間でもある。大仰な言い方が許されるなら、作家の緊迫した文章のみが、そうした世界の崩壊をかろうじて食い止めているようにさえ感じられる。」

  • 短編?連作短編?
    同名の小説(スペルは大文字あり)の、各章の冒頭に描かれた文章を抜き出したものらしいです。
    戦争とか、闘牛とか。
    難しい。評価不能。

  • わたしの理解じゃ追いつききれてない。文学史的背景と考え合わせればより重要性がわかるのかもしれない。
    でも、それよりも、この淡々としてる感じ。世界の無意味さをひたすら突きつけられる。無味乾燥とした、不条理さ。一貫性の無さ。悲劇は滑稽ですらある。何もかもが無意味であるということ。この鋭敏な文章が物語ることは、その空しさを語りきることですこしだけ救おうとしてるのかなあ、どうなのかなあ、希望を持ってたいだけかなあ。すくわれたい。

  • アーネスト・ヘミングウェイが1924年に出版した短編の翻訳。

    ほとんどの章が見開き1ページで1章進むためサクサクと読みやすい。
    戦争だったり闘牛の話だったり場面がばらばらにやってくる。

    その構成が,タイトでスマートな印象を与えている。
    幾つかの種類に別れていた写真をシャッフルして1枚ずつ観察していくように読んだ。

    有名なのは1925年に出された"In Our Time"のほうで,
    こちらはその前年にほんのすこしだけの部数で出版された,
    実験作的なものだという。

    それを読んでふと,フィッツジェラルドのThe Great Gatsbyを思い出した。

  • 2011年3月27日

    bookdesign/albileo

  • この作品はもっさい男たちの物語であって、戦争とか闘牛とか、怒号飛び交う荒々しさがその場にはあるはずなんだけど、そういったものとは真逆の静けさを感じてしまった。それは雨降る夜の静けさと重なる。豪雨とかでない、ぴちょんぴちょんと屋根から屋根へ不定期なのだけど確実に落ちる、一滴をまざまざと感じさせる雨。そこに浮かぶ哀愁がなんというか、やっぱりもっさい。

  • 装丁がとても好き。軽く読めるところも。

  • 装丁につられて借りた本。ショートショートの長さ。
    一番最後の王様の話と、絞首刑の話は好きなんですが、それ以外の短編はピンと来なかった。

  • 図書館本です。「返ってきた本」のラックにさりげなく置かれていました。シックなこげ茶の表紙と、輝くばかりに白いページが素敵。それに、とっても薄い本。新潮文庫版『われらの時代』の改訳かと思っていたんですが、似て非なる作品。詳しくは巻末の訳者・柴田元幸さんの解説に。ヘミングウェイ自身については、「スペイン内戦の義勇軍にまでわざわざ行っちゃった、カリブでラム酒をかっ食らう、マッチョな釣り好きのアメリカ人おっさん」というくらいの認識で、そんなに興味もないんです(笑)が、文章のシンプル+ハードボイルドかげんについては、結構好きなほうじゃないかと思っています。すっきりしたつくりの文章が、ピシッと的確にその情景にハマってくる感じ。アメリカの文書で提唱されている、「プレイン・イングリッシュ」とは根本的に違っていて(←そりゃそうだろ)。闘牛と戦場と死のラフスケッチというか、ある一瞬を切り取ったそれぞれの章は、どろりとした濃密な熱さを含んでいるように思うんですが、柴田さんの訳の持つ独特のクリーンさがあるからか、とても硬質で美しい。スローモーションで、体温の低いシーンが立ち現われる、とでもいえるような。個人的には、柴田翻訳本のなかで好きな作品・ベスト2には楽に入ります(笑)。ヘミングウェイがお好きでなくても、柴田訳がお好みでなくても、翻訳文学のお好きなかたは、見つけたら本棚に差しておかれてもいいかと思います。外文にしてはプチ・プライスですし…私も探そうかな。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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