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キャンバス

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制作 : 木村榮一 
  • ヴィレッジブックス (2011年12月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863323629

キャンバスの感想・レビュー・書評

  • 「螺旋」にも書かれていた“大切なのは作品か人か”という問いがここにも見られた。
    陰はあるけど黒さはない。
    終わってみれば、誠実であろうとした人々が起こした珍騒動だったように思う。

    強く感情を揺さぶられることはなかったけれど、絵を見つめる少年、エルネストの肖像を描くベニート、夫婦の寝室にかけられた名画…など、じわりじわりと後から色んな場面のイメージが心に浮かんできたので、その余韻に浸った。

  • 「人生にはカードを引き、あとは勝つにせよ負けるにせよ、結果を待つしかないという時がある。そのカードに導かれてここまで来た以上、あとはそのカードを守るしかないのだ。」

    〘 恋を探し求めてはいけない。恋が向こうから君を見つけてくれるのだ〙

  • 美術館に売られた自作の絵画に欠点があるとして一筆加えたい天才画家とそんな偉大で気難しい画家を父にもつ子の葛藤の物語。

    絵画とは?ということを語りながらぐいぐい読ませる。

    これは「螺旋」も読まねば。

  • Santiago Pajares, El Lienzo
    一枚の絵画を巡る親子の物語。こんなに面白い作家が居たのか!と嬉しくなってしまった。

  • 螺旋の方が疾走感があって、よかったな。次回作に期待。

  • 井伏鱒二が、自作の『山椒魚』を自選集に収めるに際し、結末部分をばっさり削除してしまった事件を思い出した。教科書にも載っている有名な作品を、いくら作者であっても勝手に改編することが許されるのか、暴挙ではないか、というのが批判する側の論拠であったように記憶する。

    世に知られている芸術作品の作者本人による改編の是非を問うという意味で記憶に残っているのだが、小説なら改編前の作品は消滅しはしない。音楽であってもスコアは残る。だが、もしそれが絵画なら、どうだろうか。加筆された絵から加筆部分を除去すれば、オリジナルは保持できるが、画家が意図した完成作は消えてしまう。また、加筆された部分をそのままにすれば、画家の手によって新しく描かれた画家の意に叶う「完成作」は存在するものの、世に知られたオリジナルな一枚は消えてしまうわけだ。このジレンマを主題にしたのが、『キャンバス』である。

    主人公ファンの父エルネストは現代スペイン画壇の巨匠として知られるが、画筆を握らなくなって久しい。父から代表作『灰色の灰』を競売に掛けたいという依頼を受けたファンの尽力もあり、絵は無事プラド美術館に収まることになる。ところが、美術館の除幕式で自分の絵を見た画家は衝撃を受ける。父は息子に絵は未完で、後二本描線を引かねばならないと言い出し、修正加筆を美術館に迫る。もちろん一度購入した絵をいくら描いた当人とはいえ加筆などとんでもないと、館長に拒否された画家は絵を盗み出す計画を立てるのだった。

    エルネストの絵の師匠で贋作家のベニート、美術品専門の窃盗犯ビクトルという仲間を得て『灰色の灰』修正プロジェクトは進行するのだが、ファンの妻は当然猛反対。父と妻の間でファンは身を裂かれるような苦境に立たされる。はじめは計画に反対していたファンだが、ベニートの死を契機に父を助けようと盗みの仲間に入る。はたしてその成否は?

    美術館にある絵を盗み出し、加筆修正の上返却という計画は、まるで映画のようにエンタテインメント性が強いようだが、作家の思い入れはそちらにはないようだ。本物の芸術家と単に絵がうまく描ける画家とのちがいはどこにあるのか。自身も才能のある画家が身近に傑出した天分を持つ画家を見出したときの絶望と挫折。ある種の天分に恵まれたがゆえに他を顧みることができなくなる芸術家の悩み、などという傍系の筋から見て、この作品は所謂「芸術家小説」の範疇に入れたほうがおさまりがいいように思える。

    誰しも一度は何者かになれるような気がし、一生懸命励むのだが、あるとき自分の限界が見えて、自分の才能に見切りをつけ、一般人としての生活を送るようになる。本当になかったのは才能なのか、もしかしたらあきらめずに努力し続けていれば、それなりの者になれたのではないか。人並みの幸せなどに眼もくれず、努力し続ける力こそが天才を天才たらしめる所以ではないのか。そんなことを問いかけてくる苦い味わいも隠し持つものの、サンティアーゴ・パハーレスの持ち味である後味の良さは今回も健在。もしかしたら、この善良さが作品世界を若干軽く見せてしまうのに加担してしまうのではないか、と危惧してしまう。

    木村榮一の訳は、書き手の特質をよく知ったこなれた訳でたいへん読みやすい。冒頭の伏線が結末にきっちり反映されるところなど、『螺旋』と比べるとストレートすぎる印象の残る構成だが、一気に読ませる力量はたしかなもの。

  • 画家とその息子のお話。
    スペインが舞台だったのだけれど翻訳ものってアメリカ文学しか読んだことなかったからちょっと新鮮でした。
    先が結構気になって一気に読んだけどまったりとした小説でした。
    感想はそのくらいかな。

  • プラド美術館から絵画を盗み出す、怪盗ルパンのような話。

    翻訳物って、日本語訳がすんなり読めないと途中で読むのが嫌になっちゃうけど、これは最後までドキドキしながら読めた。

    ラストがちょっとわかりづらくて3回読み直したけど、これぞ真の友情、愛情と思える結末。
    面白かった!

  • 父子ものかな?と思い、芸術ものかな?と思い、ちょっとミステリ風なのかな?と思う。その、どれでもなく、どれでもある。

  • 最初の1/4ほどがスピーディな起伏のある展開でとてもわくわくした。途中でストーリーの中の時間は一転して、登場人物達は悩み争い動きを遅くする。私は面白く読んだが、この作家の、語り口が非常に巧みで個性的な持ち味ほどにはストーリーの構成がついていっていない感じはあった。
    パハーレスは来日時に、「作家のデビュー作はそれまでの何十年の人生を賭けて作られたものなのでその後の作品がそれを越えられない事もありうる」という風な回答をしたとどこかで読んだけれど、そのうちまた『螺旋』を越えるような作品を期待したい。
    ところでここに書かれている美術品にまつわる話ってどのくらい本当なんでしょうかね?

  • リャマサーレスの翻訳が読みやすかったので、同じ木村氏の翻訳である本作を図書館の新刊コーナーで見つけたので借りてみた。

    偉大な天才画家エルネスト・スーニガと、その父親の愛情に飢える息子フアン。
    サスペンス風の味付けも施されているが、全体を通して語られているのは、この父子の愛憎であり、彼らを取り巻く人々との愛や絆の物語だ。
    読みながら、退屈になるかもと不安にもなるほど、淡々とした語り口であったが、思いのほか引き込まれ、静かな語りであればあるほど、その奥に隠された激しく深い心情を思わされた、という感じ。

    本作よりデビュー作の「螺旋」の方が起伏に富んだ物語のようなので、今度はそっちを読んでみようかな。

  • メインの筋立てだけを見れば少し弱い気がするが、
    そこに関わる人達の思い、
    気持ちを丁寧緻密に描く肉付けがなされると、
    良質な作品が生み出されるわけだ。
    余韻を味わえる佳作。

  • 「キャンバス」(サンティアーゴ・パハーレス:木村榮一 訳)読み終わった。スペイン人作家の作品を読むのは生まれて初めてかもしれない。バルガス・リョサはペルー人だし、うーん、ほかに著名な作家も思いつかないし、やっぱ初めてか。天才画家の最高傑作をめぐる物語。もう少し深みが欲しいかなあ。

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キャンバスの作品紹介

前代未聞の高額で落札された一枚の名画。しかしその除幕式で絵が披露された瞬間、作者である老画家の表情が一変する。数日後、老画家が息子に明かしたのは驚愕の事実だった…すべての読者の魂を揺さぶる、天成の物語作家の長編小説。

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