- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863851252
感想・レビュー・書評
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陣崎草子さんの歌集ですね。
陣崎草子さん(1977ー)大阪生まれ。イラストレーター、絵本作家、児童文学者、歌人。
解説の東直子さん(1963ー広島生まれ、歌人、小説家、脚本家)は『陣崎さんの歌を読むと、ぽかんと口を開けて何かに見入ってる幼児の姿を思い出す。そして自分もそのような状態であったことも濃密に思い出される。』と綴られています。
まさに、ひたむきで素直な作風が心地よいですね。
二の腕をつかめばはっと流れこむ
熱あり植物園の真ん中
きみの喉から芽吹きいま茂りゆく夏草
声の消えてゆくさき
春の日はきみと白い靴下を干す
つま先に海が透けてる
この道がまちがった場所につづくこと
知ってるぼくらのほどよい笑い
春の指、長くて節のめだつ
君の春の指をそっと曲げてごらん
春戦争 いつまでもずっと開いてる
ぼくのノートに降りてこい、 鳥
山百合に似てるわたしの節くれた
手はしっかりと物を掴める
かけがえのないものなのだと気がついて
朝朝食に飾るたんぽぽ
明け方の笹藪わけて追うきみの
シャツの背にある裂けそうな月
どうやって生きてゆこうか八月の
ソフトクリームの垂れざまを見る
スニーカーの親指のとこやぶれてて
親指さわればおもしろい夏
何故生きる なんてたずねて欲しそうな
戦力外の詩的なおまえ
陣崎さんはイラストレーターを目指して東京に出てきて、二十代の終わりに穂村弘さんの短歌に出会って衝撃をうけて短歌を作るようになられたそうです。
『歌、といわれるこの言葉のつらなりは、内に湧いたエナジーの正体に問いかける祈りだった。』と語られています。
真っ直ぐで詩的な短歌に出会いました。読んでいて楽しくなりますね。
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