うずく、まる (新鋭短歌シリーズ)

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著者 : 中家菜津子
制作 : 加藤治郎 
  • 書肆侃侃房 (2015年6月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863851863

うずく、まる (新鋭短歌シリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • とても素敵な歌集です。与謝野晶子以来の衝撃を受けました。大地に根ざしていること、対称性、圧倒的な突破力。「銀の滴降る降る降るまわりに(シロカニべランランビシカン)ささやけば輝きながら凍りつく息」「うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月の光の信号機前」「音だけの花火を聴いたぎんいろのテレビのむこうガザにつながる」。三つの力が溢れでています。旭川郊外での暮らし、物事を均衡に捉える眼差し、本質を直接的に発射する表現力。畏れ多いので返歌としてではなく、習作として師事を期待して「うずく、まる 渦に九つ丸をうつ ゴッホを模写した 十歳の夏」「うずく、まる 与謝野晶子を越えてくれ バスクで何もできない私」小学校高学年、中学生、高校生にぜひ読んでほしい歌集。「子供らが初めて触れる善き短歌かってに返歌大会しよう」



  • 短歌が歌みたいだって 気づいたら

    詩ってなんだろうって思った

    エッセイって なんだろうって 思った

    散文は 小説は どこからどこが線引きで
    その境目は どこにあるんだろう て 分からなくなった

    ただ心が見たものを
    描いたら それをなんて呼べばいいのかわからなくて

    とりあえず「詩」て 読んでみた

    ポエムじゃない

    やっぱり「詩」なんだって 思った

    いつまでも浮かぶ月のように
    どこかで揺れる花のように
    いつか終わる夜のように

    言葉にならない風景を 言葉にしたら

    泣きたくなった

    生きたい 死にたい
    消えたい ここに居たい

    今すぐ  ずっと

    どこか 遠くに行きたいと 思った

    空の向こうのような
    言葉の 彼方のような

    風に乗る 潮騒のような 香りがした


    どこかで繋がっているのなら

    一人にはならない

    独りになんて なれない





    触れられなかった光が 明るく 淡く 滲む
    触れたかった月に手を伸ばして

    触れても掴めないかもしれないと躊躇って
    見ないように目を瞑ってうずく、まる

    星の光は消えてくれないから 溶けない氷のように 胸の中で波を打つ

    目を開いて 近づかなければ触れられないから

    怖くても 握りしめて
    全部知ることができないから
    せめて握りしめて 満月のような欠片を胸に抱く

    うずく、まるは温かいから
    氷は温もりで溶けて 心の風景に重なる

    知らない世界は知っている世界と交差して
    月と太陽が出会うように それは星の瞬く夜のように眩いから

    知っているはずの場所に 新しい色が混じる
    まだ知らない場所は 掌で馴染んでいく宝石のように
    冷たくても 体と同じ温もりになるから

    大切な場所になる

    これはまるで冒険のようだから
    ここは音を探せば雨のように溢れている場所だから

    宝物を探す旅の中で 春の音は夏の中でも輝く
    銀色の煌めきは 花のように波打って 海のように散りばめて
    風吹けば嵐のよう 一欠片の氷さえ星のよう
    巻貝のような 掌の色彩が溶けて 胸の中は珊瑚のように色付いていく
    陽光のように移ろいながら 道は虹のように続いていく

    ――果てしない空の中で

  • 中家菜津子の詩と歌はわたしにとって37℃の生理食塩水なので、渇いた心と乾いた体によくなじんでゆく。体液と等張の微熱体めいた液体を口にゆっくりふくむとわたしを0(ぜろ)の基点に戻してくれる気がする。ささくれだった心を雫みたいな○(まる)にする。欠けたもの、足りないものの形にぴったり収まる何かを見つけられなくとも、液体ならそのくぼみを埋められるかもしれない。水がわたしのなかで鼓動する。生動する。しばらくの間、両膝をかかえて水の音でわたしを満たしていたい。明日の朝、きらめく水面に向かって浮かび上がるために。

  • ひかりがつよすぎて何がうつっているのかわからない写真みたいな言葉。

  • 表紙のゴッホ『The Starry Night』がよく似合う詩歌集でした。大切な人を詠む歌はわたしにとって、こんな星月夜の色でした。

    一番最初にすきだなって思った歌
    火を飼ったことがあるかとささやかれ片手で胸のボタンをはずす

  • 詩と短歌、生と性、やわらかな言葉の間で「うずく、まる」。言葉の中をたゆたうような不思議な感覚のまま読み終えた。「モノクロのアネモネきっとあなたならうすむらさきを選んで写した」、写真を撮る短歌詠みとして突き刺さった。

  • 新鋭短歌シリーズの一冊。中家さんの詠む歌は短歌というより詩に近いように思いました(詩も収録されている)。言葉づかいや選び方がやさしいけれど、どこか冷たさも感じる。おそらく、「うずく、まる」や「etanpet」に綴られていることがその冷たさの理由なのでしょう。
    この方の詩歌を綴るスタイルからすると短歌も詩も括りなく収録するべきだとは思いますが、「新鋭短歌シリーズ」として発行する必要性は感じませんでした。短歌のシリーズなのに短歌以外の詩形が収録されているのはいかがなものでしょうか。新鋭短歌から独立した形で発行すべきだった気がする。

    五首選
    ・泡雪はくびすじに落ち樹のようにかわいたわたしをまっすぐ伝う
    ・窓辺から流れこむ闇しんしんとあなたの声が途切れる電話
    ・晴れた日にわたしはわたしの着ぐるみをかぶって地図のコピーつづける
    ・うす青い果てにあなたといるときは雲か水面かもうわからない
    ・街燈は凍った月の色をしてわたしのかたちに翳る雪道

  • 俵万智さんの「サラダ記念日」以降、久々にジーンときた歌集。
    若い歌人なので言葉を飾り過ぎる傾向が若干見えるものの、それも含めて全体的な言葉の煌めきに圧倒される。
    必読の価値あり。

    ※散文詩も収められているけれど、個人的には短歌の方が完成度が高いと感じた。

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うずく、まる (新鋭短歌シリーズ)の作品紹介

あなたを変えるポエジーの渦
明日の詩歌のためのシンポシオン。
短歌250首、詩13篇を収録。(加藤治郎)

【自選短歌五首】
ナボコフを声にしてみるうすあおい舌でころがす氷のかけら
うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前
はるじおん はるじおん はるじおんの字は咲き乱れ、銃声がなる
わたしからあふれてしまうわたくしは足の小指をぶつけたりする
夕立にシフォンブラウス透きとおり乳房のためのあたらしい皮膚

うずく、まる (新鋭短歌シリーズ)はこんな本です

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