しんくわ (新鋭短歌シリーズ32)

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著者 : しんくわ
  • 書肆侃侃房 (2016年12月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863852433

しんくわ (新鋭短歌シリーズ32)の感想・レビュー・書評

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  • 海賊のような髪型をとりあえずなんとかするため 投げ上げサービス
     しんくわ

     福岡市内の出版社・書肆侃侃房【かんかんぼう】は、「現代歌人シリーズ」と「新鋭短歌シリーズ」という2つの歌集群を刊行している。未来の読者に向けた、現代短歌の発信源のような趣きで、読むのがいつも楽しみだ。

     新鋭短歌シリーズの最新刊は、筆名をそのまま歌集題とした「しんくわ」。2004年に、連作「卓球短歌カットマン」で第3回歌葉新人賞を受賞し、話題を集めた作者である。1973年生まれという。

     掲出歌のように、中学の卓球部員たちの、まるで気負いのないコミカルな青春群像が歌われ、近作も気になっていた。

     この度の第一歌集は、それらを巻頭に、短編小説や俳句、カードゲームを素材にした実験作なども収められている。日々の雑事でこわばった心が、ふいに緊張を解かれるような作品世界で、たとえば次の歌。

     一年を身体で表すならば、秋は尻だ。尻は好きだな

     思わず吹き出しつつ、考えてしまう。では冬は、身体のどの部分だろう?

      難しい漢字のように降る雪のように忘れるようにしまおう

     しまうという動詞には、「終う」の漢字をあてても良いのだろう。人生が終わることを、覚えきれない「難しい漢字のように」、とけて消えゆく「雪のように」、また文字通り「忘れ」てしまうことで、荷を軽くしてくれるような気づかいが感じられる。

     歌人加藤治郎による帯文は、「笑ったらいいと思う。」。そう、難問ばかりの現代だからこそ、笑いの余裕は必要なのだ。
    (2017年2月12日掲載)

  • 深く 重く そして暗く

    彼方の星を 探して

    宇宙のような広大な海原を行く
    一つの船のように

    そんな 人生観が
    そんな 詩の世界を 作っていったような気がする

    その生き方しか 知らなかった
    そんな叫び方しか できなかった

    そんな時に 一つの灯台の光に向かっていくのではなくて

    もう自分で作ってしまえばいいじゃないかと
    陽気に歌う 吟遊詩人のような 本に出合った


    密度の濃い小さな箱のような世界を 簡単に飛び越えて

    空みたいに広い世界で 思いっきり好きな言葉を描いていく

    ――あぁ

    そういえば そんな生き方が しかったと 思った
    そういえば そんな表現でありたいと 思った


    正しさを求めているから きっと そうなるのかもしれなくて
    ルーツが昔の詩人だから そうなるのかもしれなくて

    その重さを抱えて 光を求め彷徨う姿が
    一つの正しさだと 思っていた


    言葉にする 言葉で遊ぶ

    言葉を描く 言葉のままに


    言葉って こんなにも広いんだって 思った

    空みたいに 自由なんだって 思った

    苦しみが変わらないなら
    言葉の重さを変えてしまえばいい

    そんな世界があると知っただけで

    それは 一つの救いのようでした

  • 「キヨスクで今まで買ったことのない雑誌を買う 待つのは得意だ」「サンライズ瀬戸は三時間半遅れて春の闇などを漂わせ来たる」「雲を作る頂はとっても眠そうに伊吹は近江に雨を降らせる」#返歌 雲が作る頂とっても暗そうで伊吹は美濃に雪を降らせる

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しんくわ (新鋭短歌シリーズ32)の作品紹介

【笑ったらいいと思う。】

第3回歌葉新人賞受賞作
「卓球短歌カットマン」収録
(加藤 治郎)


〈自選短歌五首〉

海賊のような髪型をとりあえずなんとかするため 投げ上げサービス

シャツに触れる乳首が痛く、男子として男子として泣いてしまいそうだ

真っ白な東京タワーの夢をみた 今年は寒くなればいいのに

ぬばたまの夜のプールの水中で靴下を脱ぐ 童貞だった

我々は並んで帰る (エロ本の立ち読みであれ五人並んでだ)

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