アンソロジー・プロレタリア文学〈1〉貧困―飢える人びと

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制作 : 楜沢 健 
  • 森話社 (2013年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864050517

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アンソロジー・プロレタリア文学〈1〉貧困―飢える人びとの感想・レビュー・書評

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  • 起きては働き/疲れては眠り/人にも知られず死んでゆくのか
     渡辺順三

     昨年末、「アンソロジー・プロレタリア文学」全7巻の刊行が始まった。1巻のテーマは、「貧困」。小林多喜二、林芙美子らの小説9編と、短歌、俳句、川柳が収められ、掲出歌はその中の一首である。
     90年ほど前の労働者の文学を今なぜ、という問いには、それらが「不安の文学」だから、と答えることもできそうだ。現在の若い働き手も、表には出さないが、不安を抱えている。当面の生活にはとくに問題はない。けれども、雇用形態や収入の見通しを考えると、子どもを産み育てる生活になかなか一歩を踏み出せないのだ。
     所収の葉山嘉樹「移動する村落」は、目には見えない不安要素も盛り込んだ、周到な短編小説。冒頭に登場するのは、工事現場の職を求めて列車で移動する父娘の姿だ。運賃もきちんと支払い、弁当も茶も、酒すらも買えるのだが、家庭崩壊という不安の一歩手前に置かれている。
     その後出会う老若男女らとの間でさまざまな事件が起こり、要約すると、掲出歌のような内容だ。人の良過ぎる父には、「世の仕組が悪過ぎる」という発想がない。「疲れては眠り」だけがリアルに迫る。
     巻末の解説で、編者は、南米のノーベル文学賞作家リョサの定義を引いている。「文学」とは、「世界がうまくできてはいないこと」を教えてくれるものだ、と。
     貧困や不安を見て見ぬふりをする世界は、どう考えてもうまくできてはいないだろう。だからこそ、それらを可視化させる装置として、文学は今も機能している。

    (2014年1月26日掲載)

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