習近平vs.トランプ――世界を制するのは誰か

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  • 飛鳥新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864105606

感想・レビュー・書評

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  • 中国分析のプロである遠藤誉が、トランプをどう見ているのか?ということに興味があった。トランプと習近平の激烈な衝突が、世界に大きな影響を与えている。とにかく、トランプの行動は、予測できないところにある。
    遠藤誉はいうトランプは「それまで誰もしなかったことを断行して世界に衝撃を与える」
    確かに、トランプは、コロナに陽性になった。トランプならマスクしてないので、なるほどなぁと思わせる。こういう逆境に陥ると「私は戻ってきた」とコロナ勝利宣言を出す可能性もある。トランプ の喋り倒す口撃劇場が始まる。トランプの自分本位の無茶振りに対する熱い支持がアメリカ国民にはある。単純に、困ったもんだと言えない。
    2016年11月トランプが大統領選で勝利した時、中国は歓迎していた。
    ①TPPから離脱する方針を持っている。→中国はこれでアジアの経済貿易圏は中国の天下となる。②トランプは、「アメリカは世界の警察官ではない」と公言した。
    中国の歓迎をトランプは、簡単に裏切る。2016年12月2日トランプは、台湾の蔡英文総統と電話会談をした。その時蔡英文をThe President of Taiwan と呼んだ。習近平より先に、直接会談したのだ。1979年の米中正常化に伴い、アメリカは中華民国との国交を断絶した以来の出来事だった。あくまでも中華人民共和国が唯一の中国であり、一つの中国なのだから。台湾は中国の一部の地域としているにも関わらずである。
    トランプは、「私は一つの中国という政策があることを知っている。なぜわれわれは一つの中国政策にしばられねばならないのか。一つの中国を順守するかどうかは、南シナ海問題や貿易政策などの対立する分野で、中国側が我々と取引するかにかかっている」と言った。
    そのことで、中国は反論する。「一つの中国原則は中米関係の政治的基礎だ」という。
    トランプは、2017年1月20日 大統領に正式に就任。そして、2月10日には、習近平に「一つの中国」原則を尊重する意向を伝えた。このトランプの見事な外交手腕は、衝撃を与える。その時、安倍首相は、アメリカに訪問して、トランプにご機嫌伺いを国のトップとして初めて行っている。こうやって、中国と日本を手のひらの中に入れたのだ。まさに、プロレスの奇襲攻撃に似ている。
    2017年4月には、習近平夫妻がトランプの別荘に招かれた。その時、イヴァンカの子供で5歳のアラベラは、中国語で「茉莉花」を歌った。それは、習近平の嫁 彭麗媛が人民解放軍の歌手で歌った曲で、家族ぐるみの出迎えだった。イヴァンカトランプのブランド服は、広州東完市にある華堅集団の工場で作っていた。もともと中国には、深い関係があった。そこで、トランプは習近平を持ち上げ、親密な関係を作り上げ、北朝鮮への圧力をかけるように要請した。
    習近平は、アメリカに対して「衝突せず」「対抗せず」「互いを尊重する」ことを原則として、協力しながら互いに発展したいという。2017年末より、トランプは米中関係に大きな転機を作り出した。それは中国を何とかして米国中心の世界の経済システムに取り込もうという、オバマ前大統領までの歴代米国政権が続けてきた「関与政策」(engagement policy)から、もはや中国は自分たちに協調してこないから力ずくで抑え込もうという一種の「封じ込め政策」(containment policy)への転換だ。そんな中で、北朝鮮に、2019年7月1日に金正恩朝鮮労働党委員長電撃的訪問する。またしても、予想もつかぬ電撃的な行動。金大中は南北会談を成功させ、ノーベル賞を取っている。キッシンジャーもベトナム戦争終結で、ノーベル賞を取っている。明らかに、トランプはノーベル平和賞狙いだった。最近のアラブ首長国連邦に続いて、バーレーンがイスラエルとの国交正常化を発表した。
    これで、ますますトランプはノーベル平和賞に近づいたと思っているだろう。今年の11月にとったとしたら、大統領選はかなり様相が変わるかもしれない。
    この本では、アメリカではキッシンジャーが、中国との重要な橋渡しをしていることを詳しく説明している。とりわけ、清華大学経営管理学院顧問委員会は、アメリカの名だたる会社が加わっており、それがトランプ大統領の戦略政策フォーラムのメンバーと共通している。その立役者が、キッシンジャーである。一方 習近平の参謀として、王滬寧が政治局員として活躍する。王滬寧は、江沢民に登用され、「三つの代表」、胡錦濤の「科学的発展観」そして、「中国民族の偉大なる復興」「中国の夢」とキャッチフレーズを考案した男である。さらに第19回党大会(2017年10月)にでは、党規約の改正が行われ、党の綱領として「習近平新時代中国特色社会主義思想」を盛り込み決議させた。習近平は毛沢東と肩を並べる位置まで、押し上げた男でもある。一帯一路についても作成している。習近平の思想を形成する参謀(三紅朝帝師と呼ばれる)となっている。
    トランプのアメリカファーストで始まった保護貿易によって、世界的な分断が始まり、また国内においても、分断社会が形成されている。一方で、習近平の「一帯一路」による中国中心グローバリズムによって、中国は着々とアジア、アフリカに浸透している。どうも、トランプと習近平はうまい具合にかみ合っているのである。トランプのおかげで、中国の結束を図ることができている。まさに、トランプは習近平の恩人でもある。

  • 中国共産党研究の第一人者と呼ばれる著者がアメリカと中国の関係性について、著した一冊です。しかし、自分自身の利益の為にアメリカ人のキッシンジャーが中国との関係をコントロールしているというのは本当でしょうか...?その辺りは少し引っかかるところでした。
    毛沢東が日中戦争時に共産党をどの様に、蒋介石率いる国民党に対して率いていたのかという陰謀説も興味深いところでした。
    あと、細かいことを言うと、中国の地名を頻繁に表記するところでは、地図があるとより分かり易かったと思います。

  • 33万人が餓死させられた1948年の長春包囲戦を体験した著者は、中国や周辺諸国の政治的状況分析に何の希望的観測も挟まない。

    一党独裁の中共(や更にその中で独裁を目論む習近平)はその保全を自己目的とするが、その命運は著者が展開する毛沢東と旧日本軍との共闘で尽きるのか、自ら標榜する大人の統治を実現させる可能性はあるのか。

  • 2017/12/23:読了
     もうこの手の分析本は飽きたかもしれない

  • 本書後半で描かれている、チャイナマネーにものを言わせた中国の巧妙かつ周到な「新植民地戦略」。拡大する上海協力機構、一帯一路構想、AIIB。「高利子融資で建設させておきながら、相手が借金地獄に陥ると、99年間借り上げる」「経済の名のもとの軍事戦略」。中国の世界制覇戦略は本当に恐ろしい。確たる外交戦略のない日本は今後どうすればいいのだろう。インドとの繋がりをもっと太くするのかなあ?

    北朝鮮がソ連との関係を利用して中国に上から目線の態度を取ってきた事や、中国が北朝鮮に振り回されてきたことなど、中国と北朝鮮の関係、なかなか興味深かった。

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著者プロフィール

1941年中国吉林省長春市生まれ。1953年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)など多数。

「2015年 『香港バリケード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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