ちょっとマニアックな図書館コレクション談義

  • 大学教育出版
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本棚登録 : 182
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864293822

感想・レビュー・書評

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  • 日本各地の5人の司書さんによる、公共図書館の本棚づくりに関するエッセイ。
    学術的な話と思いきや、実践の場での多彩な工夫を親しみやすい口調で紹介してくれる。
    タイトルにあるようなマニアックさは殆ど感じられない。
    読みながら「あ、それいいね!」と思わず頷くことが多く、楽しそうな選書アプローチの魅力に惹きつけられていく。
    利用者の眼に見えないところで、こんなにも細やかな心配りがなされていたことも新発見だ。

    案内役は元塩尻市立図書館長の内野安彦さん。
    1章は現在の図書館を取り巻く状況、課題について言及。
    2章以降は司書さんたちがそれぞれの選書と取り組みについて語っている。

    ところで、図書館と書店の違いって?
    書店は本を買うところ。
    図書館は本を読んだり借りたりするところ。
    いいえ、もっと大切な役割がある。それは本を保存すること。
    だから書店に並ぶ本と図書館に並ぶ本は違っている。
    では、どのようにして本を選んでいるのか、誰が選んでいるのか、購入費用はいくらぐらいか。内野さんは詳細に教えてくれる。

    司書さんたちの選書の工夫は、日本十進分類法よりも利用者の興味をひくことに重点をおいているものが多い。
    お気に入りの本から次なる良書に巡り合えるように、検索した本からより広い世界に目を向けられるように。
    将棋の本の隣に「3月のライオン」が並んでいたらぐっと面白くなるでしょ?
    ヒーローのコーナーをつくるという司書さんも。
    戦隊ものとか特撮ものとか、ほんのひとときしか夢中になれないようなものでも、「子どもの好きなものなら入れる」という言葉が潔い。
    本って、使ってなんぼなんだなぁと、つくづくそう思う。
    古い本や絶版になった本まで最大限に利用できるのがすごいところだ。

    指宿の司書さんの語る「自分のルーツを知りたい」という利用者との話もある。
    レファレンスを繰り返し、郵送やメールで資料を送ったりしながら作成したものの、病で亡くなられたという。切ない話ながら、家系図づくりまで出来るということが新たな発見だった。

    図書館員さんは自分の好きな本を選べていいなと思われそうだが、選書方針がそれぞれあり、蔵書のバランスや予算も限られる中なかなか希望通りの選書が出来るわけではないという。
    忸怩たる思いで書架を眺めることの多いという司書さんたちの熱い選書眼には、非常に学ぶところが多い。
    これを読むと、図書館の棚の見方が変わる。
    図書館も書店も、利用者が(客が)支えているもの。
    資料棚をもっともっと有効活用したい。
    利用者が多くても大半がリピーターだというから、未利用者に図書館の良さを伝える方法がほしいところ。
    本書に載せられた記事は決して解決方法ではない。
    でも何かしらの参考にはきっとなるだろう。
    本が好き、そして広めたいと願うプロフェッショナルたちの、清々しい一冊。

  • 「図書館の棚が魅力あるものに見えないから図書館を使わない」という声があります。 本書では、その図書館のコレクションについて、やさしく、楽しく、ちょっとマニアックに考えます。(アマゾン紹介文)

    えらく間口の狭い本だなぁというのが読んだ印象。図書館員か図書館が好きな人しか手に取らないんじゃなかろうか(私は後者)。まぁ、でもなけりゃ、10進法の説明抜きで書き出すこともないか。
    各人のコレクションに対する思いや展開の仕方が面白い。できれば、より広範に沢山の方のを読んでみたい。

  • 図書館で働いている人は読んでみたらよいかも。

  • 出版文化についての論考+図書館員によるコレクション談義。

  • 「図書館」をめぐる、司書たちの論考集です。
    第1章の「選書」や「出版界」と図書館のつながり、関連性についての文章は考えさせられるところが多くありました。
    出版される図書について、その内容や装丁には意識を向けていましたが、どのような経路で販売されているのか、そもそもどのような経緯で執筆に至ったのか、そしてその狙いを的確に踏まえて購入・排架するにはどうすればよいのか。

    この本では公共図書館の司書の方々が様々な事例を紹介しており、色々な視点やアイデアに触れることができました。

    個人的には「これは」と思う部分もあり参考になりましたが、広く一般ウケする内容ではないかもしれません。そのような人達にこそ、図書館の良さ・魅力を紹介したい、という趣旨で編まれた本ではありますが、やはりそのハードルは低く無いように思います。

  • 「図書館のコレクションについて,やさしく,楽しく,ちょっとマニアックに考える」
    普通でも良いと思うけど、、、

  • 「年間8万点もの新刊が出版される現状において、読者が求める本に出会うのは極めて奇跡的なこと」という一文にハッとさせられました。自分好みの本にまだ出会えていない可能性があるってことですから。司書は毎月のテーマ展示を充実させて、本と人との赤い糸を結ぶキューピッドになる必要があります。本書は主に経験豊かな司書の方々からの選書のススメや棚づくりのお話でした。読んで得るものは多かったです。現役司書のみならず、図書館マニアや図書館についてもっと知りたい方にもオススメの一冊です。

    p14
    図書館は利用者の求める本を貸し出すだけではありません。「こんな本もあります」と、本と利用者の出会いを演出・案内することも大切な仕事です。そのために、テーマ展示や表紙見せなどさまざまな仕掛けをしています。
    ブックディレクターの幅が、人と本がもう少しうまく出会えるよう、さまざまな場所で本の提案をしているように、年間8万点もの新刊が出版される現状において、読者が求める本に出会うのは極めて奇跡的なことなのです。

    p160
    …利用者の知らない(知る機会の少ない)世界に誘うのも図書館の大切な「公共サービス」の仕事であると思います。

    p161
    「図書館で、未知の本に出会えて良かった」と利用者に喜ばれることも重要です。出会いの演出こそ、プロの仕事であり、醍醐味だと思います。

  • おわりに「図書館員が絶対に愛さなければならないもの。、それは人、地域、本の三つだと思います。」

  • 014.1 / 図書館資料 / 資料選択法 /

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:014.1||C
    資料ID:51600061

    図書館の本がどのように選ばれているかを知ることができる本です。この本を読めば、色んな図書館に行きたくなるはず!
    (生化学研究室 大塚正人先生推薦)

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著者プロフィール

ライブラリアン・コーディネーター,FMラジオパーソナリティ,常磐大学・同志社大学・熊本学園大学非常勤講師
1956(昭和31)年茨城県鹿嶋市生まれ。鹿嶋市,塩尻市に33年間勤務。両市で図書館長を務め,定年を待たず早期退職しフリーランスに
著書に『だから図書館めぐりはやめられない』(ほおずき書籍 2012年),『図書館はラビリンス』(樹村房 2012年),『図書館長論の試み』(樹村房 2014年),『図書館はまちのたからもの』(日外アソシエーツ 2016年),『クルマの図書館コレクション』(郵研社 2016年)などがある

「2017年 『ちょっとマニアックな図書館コレクション談義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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