タモリ伝 森田一義も知らない「何者にもなりたくなかった男」タモリの実像 (コア新書)
- コアマガジン (2014年4月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864366045
感想・レビュー・書評
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≪目次≫
プロローグ 新宿区新宿3丁目
第1章 福岡市南区市崎
第2章 新宿区戸塚町
第3章 福岡市中央区天神
第4章 新宿区歌舞伎町
第5章 千代田区有楽町①
第6章 千代田区有楽町②
第7章 千代田区有楽町③
第8章 渋谷区神南
第9章 千代田区二番町
第10章 新宿区河田町
第11章 港区六本木
エピローグ 目黒区八雲
≪内容≫
「いいとも」の終了で最近何かと話題の〝タモリ"。ついに伝記が出た。割とよくまとまっている。割と面白い。活動していた場所を章立てにしているところが特徴か。
いわゆる密室芸からラジオ番組(オールナイトニッポン)を経て、「いいとも」や「ミュージックステーション」などをやっていった経緯などが詳細されている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
笑っていいともの最終回が2014年3月31日、本書が刊行されたのが同じ年の4月17日。国民的人気且つ長寿番組が終わるタイミングで、これまでのタモリの足跡を辿る趣旨の本。いいともの足跡ではなく、タモリというエンターテイナーの足跡だ。
タモリ自身への取材は残念ながらないが、周辺の様々な関係者への取材や古い文献や記事などを紐解いて今日に至る経緯を辿って行く。取材や資料の読み込みは非常に丁寧な印象を持った。いいともが始まる前の時代の深夜番組やラジオを担当していた業界スタッフ、ジャズ研時代の仲間の談が多く出る。著者も残念がっているがいいともプロデューサーの横澤彪氏への取材は叶わなかったようで、それもあってかいいとも以前のタモリの伝聞が多い。
私はタモリといえば、いいともで、お昼の顔で、それ以前の深夜番組でアングラ的な活躍をしていた時代は一切知らない。ラジオについても同様無知だった。本書で紹介された物議をかもしたラジオの名物コーナーのNHKつぎはぎニュースについて、今でもYouTubeで当時の音声を聴くことができた。NHKから抗議で中止とあったがそれも頷ける。それ以上に苦情が来るまで放送できていた当時の気概というか奔放さが、リアルタイムでは知らない世代だけど懐かしいように感じる。タモリのANN最終回で淡々としていた下り、ANN最終回の放送も全編がYouTubeにアップされていて、今でも聴くことができる。冒頭の牧師になりきっての最終回を告げる挨拶やスポンサー紹介といった冒頭10分を聴いただけでもとても面白い。30年ほど前の放送なのに喋りは同時から秀逸で今初見で聴いても非常に楽しめる。BIG3は伊達じゃない。
最後に、九十九氏の次の言葉を含む本書から得た学びを紹介する。
「密室芸」を起点に、タモリは「ANN」で若者、「今最」では大人へと版図を拡大していく。次なる対象はいよいよ「一般視聴者」。これまでにない難物である。
「そこでタモリさんはこだわりを持たなかった。それは正解やと思います」 -
これが4冊目のタモリ本。
エピソードかぶりはさすがに仕方ないが、この本が最もサブカルとしてのタモリに迫っているのでは。いいともでメインカルチャーにかつがれたタモリは、まさに無用の用。本来の出自である密室芸やラジオに関係者のインタビューを交えて考察してくれているのが、ありがたい。
しかし、大学中退後の福岡時代は雌伏という言葉がぴったりくる。大成する為の一つのあり方だと感じる。