FUKUSHIMAレポート 原発事故の本質

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  • 日経BPコンサルティング (2012年1月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864430005

FUKUSHIMAレポート 原発事故の本質の感想・レビュー・書評

  • 想像以上の面白さでした。
    前回読んだ「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」が、徹底的に福島原発事故の検証と今後の提案にフォーカスしていたのに対して、こちらでは福島原発事故の検証自体は前半の200ページ程度に割り当てられ、残り300ページは日本の電力産業の歴史とその構造や、核兵器保有と原子力政策の関連、そして国際的なエネルギーセキュリティの展望など、内容は多岐に渡ります。

    特に面白かったのは、日本の原子力政策。ひょっとすると一種の陰謀論なのかもしれませんが、日本は戦後、核兵器保有は否定するが、核兵器製造技術のポテンシャルは維持する、、、という思想のもと、原子力発電所の導入が推進されてきたと述べられています。それに加え、高度経済成長とともにエネルギー自給論が高まり、核燃料再処理、プルサーマル、高速増殖炉など核機微技術(核兵器を作ろうと思えば作れる技術)に多額の費用(税金)を使ってきたといいます。一方で、現在、抑止力となりうるプルトニウム保有量は既に十分な量となる中、特に高速増殖炉の技術的壁の高さから、実用化は不可能との見方が強まり、再処理の必要性も疑問視され、日本が機微技術に執着する必然性が低下している・・・日本の原子力政策は既に破綻している、、、という一連の仮説には、説得力があります。

    ほかにも、日本人の特性(他国に比べ、圧倒的にメディアや政府に従順)から見た風評被害の検証や、日本の人口減少と関連した将来の電力産業のあり方(電力業界再編とエネルギーの自由化・多様性に)提案、中国やインドなどの新興国視点での原発普及の可能性に関する示唆など、面白い視点と興味深いコンテンツが盛りだくさんでした。

    福島原発事故だけでなく、日本のエネルギー産業の歴史や、今後の可能性などについて知りたい方にもぜひオススメしたい本でした。

  • 今となってはおかしな内容。
    この本の本題とも思える、第1章の「メルトダウンを防げなかった本当の理由」で「少なくとも2、3号機は制御可能状態がある程度の期間あり、この間に海水を注入すれば、これほどの惨事にはならなかった。そうしなかったのは、海水注入は廃炉につながるので、東電の経営者は決断できなかった犯罪行為だという。」と主張されているが、これは同様の内容を雑誌に発表した2011年夏時点のものと見るべき。各種報告書やビデオが公開されて、減圧操作や海水注入も、やりたくても出来なかった事情がわかってしまった(発行は中間報告よりも後だったので直す余裕はあったはずだが)。

  • 福島第一原発の事故原因を公開されているデータからその真相を考察した一冊で、非常に興味深く読むことができます。現在のエネルギー生産方法についてのコスト比較や国が原子力政策を進めた理由など、全く知らなかったことばかりなので、非常に勉強になりました。

  • 最初の数ページにて「福島第一原発の事故ではベント操作によって大量の放射性物質が発電所の外に放出された」と記載があり、いきなりの事実誤認で読むのを諦めようとしたが、頑張って読んだ。

    正確には、原子炉建屋の水素爆発によって大量の放射性物質が環境へ放出されたのだ。一般に、ベント操作は圧力抑制プール(サプレッションプール)を経由して放出されるため、一旦水に触れられる。であるので、ヨウ素のような水に溶けやすい物質はその水に溶け、外には放出されないのだ。外に放出されるのは希ガスのような非凝縮性ガスです。

    環境に放出されたという事実は同じであるが、そこらへんのタレントのコメンテーターじゃないのだから、正確に記載して欲しいです。
    ちなみに建屋が爆発しないで、ベント操作によって放射性物質が環境に放出されていたならば、おそらく今回の事故の放出量と比較して数分の一から数百分の一となっていたはずである。

    原子力のエンジニアなら、こんなミス(原子力分野に対する専門性の欠如)は絶対しないのに。。。と思って作者を見たら、なんとびっくり、専門家が作者に加わっていないじゃないか。
    (一人原子力専攻卒業がいるけれど、専門は核融合です)
    それでいいのか・・・

    あちこちによくわからない論点が示されている。
    1)原子力を進めていく本当の理由は核兵器を作ることであると断言している
    確かに原子力発電と再処理技術によっては、(がんばれば)核兵器を作ることができるが、原子力推進の本当の目的が核兵器だったとは。。。
    初めて知りました。どこからこんな話を聞いたのでしょうかね。
    いろいろな所で参考文献を載せていてさも格調高い雰囲気を醸し出しているが、このような重要な論点については参考文献なしって、それはなしでしょう。

    2)原子力の発電コスト
    いろいろな理由から原子力のコストは高いと書いてあるが、昨今の東京電力の値上げをみれば一目瞭然じゃないですか(東京電力の値上げは賠償ではなく、燃料費の増加分を電気料金に反映しただけです。念のため)。
    あと余談で、海外の発電コストと比較しているが、なぜアメリカのような天然資源保有国と発電コストの比較ができるのかわからないのですが。

    3)原子力がなくても電気の供給はこまらない
    去年乗りきれたから大丈夫って。初心者ですか、あなた。

    などなど、挙げていったらきりがないくらいに突っ込みどころ満載です。
    FUKUSHIMAレポートという題名なので、何か公式なレポートなのかと感じるが、原子力素人が書いた、中途半端な書籍である。

  •  原発事故の本質というサブタイトル。
    503ページもある分厚い本のわりに値段は安い。その理由は、著者らは印税を受け取らず、また利益も出さないことになっているという説明で納得。

     第1章の「メルトダウンを防げなかった本当の理由」が、ほぼ全体の3分の1を占めていて、一番読み応えがある。これを執筆した山口さんの解析では、少なくとも2、3号機は制御可能状態がある程度の期間あり、この間に海水を注入すれば、これほどの惨事にはならなかった。そうしなかったのは、海水注入は廃炉につながるので、東電の経営者は決断できなかった犯罪行為だという。

     これは、この本で初めてお目にかかった見方で、大変参考になる。
    2章以降も、さまざまな角度から今までの国の原発政策、安全対策などを検証しており、なかでも核保有との関連をついているのが興味深い。

  • 戦後の経済復興に伴う原子力発電事業は、画策された本来目的のため国策民営化した電力業界によって独占的経営が長期的になされてきた。がゆえに本来ハイリスクの原子力を扱うに必要な技術経営のコアコンピタンスが置き去りにされ「技術経営の誤謬」により最悪の事態を招いたといえる。

    東電はじめ原子力安全委員会、原子力安全・保安院の所詮「他人事」としか現実を捉えない発言は、培われてきた「無責任体制」の土壌を物語っている。同時に強固な4層コロニアル構造「米国-中央-地方-ムラ」により、もはや社会的にも経済的にも動きのとれない社会が築かれてしまった。

    「私たちは腹をくくって、(汚染された)放射能とともに生きていくために必要なバランス感覚を持たなくてはならない」

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