だるまさんがころんだ (TO文庫)

  • ティー・オーエンタテインメント
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864721523

作品紹介・あらすじ

「お祈りの時間に振り返ったら、『だるまさん』に大切なものを奪われる」その学校には奇妙なルールがあり、皆がそれに従っていた。しかし、一つのきっかけにより、六人の生徒がルールを破り、それぞれの大切なものを奪われてしまう。ある者は眼球を、ある者は記憶を、ある者は聴覚を、そして、ある者は…。連鎖する悲劇の先に浮かび上がる『だるまさん』の真実とは?若き俊英たちが紡ぎだす、最悪に怖くて、最高に悲しい学園ホラー。

感想・レビュー・書評

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  •  結論から申し上げてしまうと再読の余地はありません。
     竹岡美穂先生の絵を手元に置いておきたいなら買い、それだけの価値です。
     個々の話にホラーとして光るものはあったものの、それをまとめる最終章が肩透かしになってしまった企画先行の駄作ですね。

     企画コンセプトである「『だるまさん』なる何かに大切な何かを奪われる」という基本設定を複数の作家さんが書いていくというコンセプトはいいのですが、基本設定の縛りがきつ過ぎましたね。
     最初はこう思いました。同時多発的に起こってしまっては物事を多角的に俯瞰する、と言うわけにもいかないな。
     放り出された一つの真実を複数の登場人物の視点から追っていくんだろう、これがこの作品の楽しみ方なんだろうと思いました。

     現に何らかの形で「認識」を奪われ、時に異常ともいえる各章の主人公たちの視点は欠けまくっていて互いにああ、ここはこうだったんだなと、描写の補完をし合ってくれました。
     が、四章途中の種明かしから続く怒涛の設定説明が思い切り感動を醒ましてくれましたね。読中はまだ良かったものの、最終章のテンプレートな独白と合わせて考えてみれば失笑ものです。

     他に、粗として安直なホラー的テンプレートが見えてきました。
     単に血を見せればいいだろうといった考えか、B級スプラッターですね。単にグロくて不快なだけに留まった描写が作劇の都合上とは言え、多過ぎます。
     そもそもが一応判明してる真実から何かからしてぶっちゃけ安い。
     とりあえず、くすくす笑う謎の少女出しとけばいいみたいな風潮はやめとけと。グロ描写にしてもやり過ぎて半ばギャグ、失笑が漏れてきます。

     何かを奪われた、ではその何かとは何か? と言うパターンで来る各章のオチは中々悪くないと思うので、個々が独立した事件として扱ってほしかった、凄まじく種明かしが惜しまれる……総体としてはそんな印象です。

     やっぱり言いたいのは最終章。怪異の正体をあやふやにするのはいい、だけどそれをやっぱり手に届く範囲に貶めるくらいなら完全に正体不明に、せめて断片的に匂わせるくらいにしてほしかった。
     少なくとも少年少女の二者択一でどっちかが「だるまさん」ってオチはないでしょう。どっちがどっちであれ、超自然現象を人間の手の届く範囲に叩き落としてしまっています。
     曲がりなりにも破綻せずに進めてきた他の作家さんの努力を最後で踏みにじった感があります。
     あまりにも、ありがちな、狂っているから狂っているんですと言うラストの独白を読んだときには第二章を開いた時の熱意は消え失せていました。

     結論として、一回はいい。しかし再読には耐えません。
     全体は不快ですが割と深い話もあります。しかし怖くはありません。悲しくもありません。竹岡美穂先生の絵は美しいです。

  • 購入することをおすすめしません。
    表紙買いや、あらすじ買いをしても損のが大きいです。

    一言
    1ページ目で本を閉じたくなったのは、ここだけの話。

    第一章
    眼球がなくなってるのに落ち着き過ぎ(これはキャラクターと好みの問題ですが)

    結論が最初にあるので、あまり不可思議に感じなかった。
    『ーー起きたら眼球がなかった。』
    のインパクトは、前後の文章に脈略がないためか、なんだろうか、ワクワク感が減った。

    『……そうだあいつ。足を怪我した二年の泉澤。』
    肩を貸して、主人公が担いでいるはずなのに、なんか変。
    後をついてきたり、先行してるならともかくとして……?
    ……そうだ! から会話文からそれっぽい。

    いつ転んだのかが判別できない。いつの間にか転んでた。
    『無数の衝撃が、転んだ俺の身体を踏み付けた。』
    無数の衝撃で吹き飛ばされた俺の身体は、落下した痛みを感じる間もなく次々に踏み潰され始めた。
    まぁ、適当に書いたものですが、言葉が足りない気が。

    そして笑っちゃったのが、
    男子生徒が倒れてきたという文章(文は省略しました
    見えないのに断定してる文章が多いです。見えないのであれば、仮定で書くものじゃないのかなぁと。
    触った感触もないし、予想していることも極端にいえば少ないです。端折る理由はどこにもない気がします。
    それなのにいきなり断定する。
    どこかにそれっぽいのがあるのかなぁと前の文章も戻ったりしながら、見たりしますが、ちょっと発見できないものもいくつかあります。
    それで一番おかしいのが、男子生徒が倒れてきた部分です。
    見えないのに、男子生徒だとなぜわかるんだ……と。

    『入ってすぐに長方形の机があった。』
    その後の文は、仮定なのですか、前後のつながりがないような?
    ような、そして のような接続詞がここにはないとダメな気が。
    急にテーブルから、手が飛び出してたのを思い出したり、不思議です。
    これから繋がる文章って、基本的に机の上に何かがあったことを示唆するようなもののような気がしますし、おそらく見落とした部分なのかなぁと。
    勝手に解釈しました。

    これって、実は文章がホラーなのか! と
    錯覚さえするぐらい推敲されていないものに見えます。
    この物語の世界の不気味さよりも、なんてことない文章で怖くなります。
    とはいえ、目が見えないキャラクターを書くというのは難しいです。
    私も書いたことがありますが、いかんせん見えないということがわからない限りは、難しいという結末に至りました。

    無論、私の読解力のなさの可能性もあります。

    二章

    瓶のラベルがトリガーのようだが、さすがに血だらけで読めないんじゃ?
    特殊状況下だと無意識的に見えると仮定すると、もしかすると読めるかもしれない。
    とはいえ、ホラーなので普通ではない状況下にいるのは確かか。
    『あまり鋭利なもので切り離されたとは思えない切断面だ。』
    あまり思えないの誤植……?
    『彼女が感じるこの妙な違和感は一体何なのだろうか。』
    何なんでしょうか、エスパー?
    これは誤字ですかね。『が』を『に』にすると違和感がなくなります。後の文章も彼女に対する不可思議さの説明なので、おそらく。

    脳の萎縮、締め付けとともに別人格のように、『ーー喉が渇いた』と切り替わるのはいいですね。狂気じみてるというのか、奇怪感があります。
    そして最後にはそれがないのがいいですね。フラグ利用っていうのでしょうかね。
    いよいよホラー臭さが出てきましたね。少女とは一体……。

    三章
    1,2章を書いた方があまりにも特徴ある文章だったせいか、
    「あれ、なんかへん」
    と思うぐらいおかしな文章が見つからなかった。
    この章の話ですが、フラグということを考えていませんでしたね。
    オチがあぁ、なるほどと思うほどのものでした。
    ともあれ、章によって、作品内容が違うんじゃないかというぐらい差がありますがいかがなものなんでしょうかね。
    企画自体はいいと思いますが、一章一章別の作品を読んでいる感覚です。

    四章
    フラグ回収はやい!
    お前が父さんかぁと、この章は精神的にきついものがありましたね。
    そこがうまいなぁと思わせたところでしたが、
    まぁ、医者も言う通り、なんでスイッチなんてものをつけたんでしょうね。
    優等生キャラクターってやっぱこんな感じですよね。
    正しいと思いきや、ホントは悪いことみたいなのは。

    五章
    文章のリズムがところどころおかしなところがありましたが、二章に比べてたら読みやすかった。何で二章が変だったのかが逆に謎。ホラーです。
    奪うことも、与えることも出来る(結局奪ってる)。
    だるま様の能力を知る章といったところでしょうか。

    六章
    解決編とおもいきや、謎を深める話でした。
    いきなり年が飛びましたね。
    なにこれ……? というのとは別ですかね。
    もう少し前段階から、いろいろ仕込むべきだったんじゃないかと思います。
    ぶっちゃけますと、一つ一つの話が独立しすぎて、
    この最後の章読むだけでもいいと思います。
    無論、章ごとのキャラクターがそれぞれの章で出てきたりはしますが、そこはわりと大してどうでも……。

    さて内容ですが、実はなんとこの章の主人公が転生しただるま様らしい。

    そこまではいいとして、彼を痛めつけることで味覚やら痛覚等が戻るのだろうか。いくらだるまにされたところで戻らない気がする。
    感覚を司るのは、やはり脳のはず。
    何かホラーに思えない終わり方でした。
    「で、だからどうしたの?」
    そんな一言です。

    読み終えて

    結局、この物語はよくわからない。
    ホラーといえば、ホラーな部分はあるとは思う。
    けど、設定を理解することができない。
    企画自体はいい。
    多作家による物語という発想はいいものの、作品に締まりがない。
    ホラーはただ、奇怪にすればいいだけじゃないと思う。

    読み終えて思う疑問は、
    1、少女とは結局誰だったのか
     兄を探しに来た霞だったのか。
     そもそも、三章読む限りでは、兄は二人いるのでは? と思うのですが違うのでしょうか。
     だるま様がまぁ余ったパーツでもう一人作ったというのもあり得る話ですが、それはあてつけな気がします。最初から存在しなかった説。
     まぁ、白目していたりするシーンは、恐怖感による幻覚だとしても、実際問題、事件が起きた日に霞が来たとするなら、4章で咬み合わない。
     事件より前の晩に遭遇しています。
     そして、死んだキャラクターに大してつぶやく台詞。
     霞であれば、怨霊に取り憑かれた? ような感じですよね。
     普通の幼女が出来るはずもない。それともそもそもこれがだるま様で、後に出てくるだるま様が女装してただけ……?
     謎が深まるばかりです。

    2、泉澤順次はだるま様?
     親に捨てられた怨霊?たちらしい設定ですが、転生したとしても普通に生活しますかねぇ。その一族に復讐してやろうとかになりそうなような気がします。
     またはあれですね、もう一度その一族として蘇りたいみたいな願望になってるような気がします。
     何にしても、『普通に生きることを望んだ』のが、身体を欲するんですから、やっぱり怨霊……だよね?
     さて、霞が名探偵ばりに、証拠を開示していきますが、順次がだるま様だと断定できる要素が今ひとつかける。
     同姓同名かもしれないし……。
     これは結局霞がヤンデレ化したために余計によくわからないですね。
     順次の感覚はなくなって、両手足を切り取ったことにより、霞に感覚が戻ったことは確か。

    3、霞が奪われたもの
     結果的に感覚全て、兄ということですかね。
     加えるなら感情。
     抑えきれない感情の高まりと、感覚によってヤンデレ化したのかなぁと。
     とはいえ、そもそも本気に好きになったんなら、そのまま付き合ってもよかったんじゃないの? 別に感覚がなくても、そりゃ気持ち悪いが一緒に生きていけることは出来るんじゃないのかなぁ。
     とはいえ、だるま様のせいで、兄が死んだのは事実だし、感覚が奪われたことも事実。だからこその、だるま。ということなのでしょう。
     表紙絵は神山霞でいいのかな?
     そこも結局わからない。

    何にしても、この作品は設定不足で駆け足過ぎて、残念です。

  • オムニバス…というか、リレー形式で書き手が章毎に代わるのは、良くも悪くも味が変わるというもので。
    なればこそ口当たりの良い書き出しから、おどろおどろしい雰囲気が容易に想える文体に上手く切り替われば怪談モノにとっては何よりの評価点たりえるかな、と。

  • 章の構成は面白いとは思う。
    しかしリレー執筆のため前の章で読んでいた調子で読めない。ホラー要素が強めなのでそれが余計顕著に出ている。ラストでの伏線回収で何回も前の章に戻って読んだがそれでも腑に落ちない部分もあったり。そのために5、6回読み直ししたが正直それは時間の無駄だったかなあと。内容、設定自体は面白いと思う。

  • 全体的に文章力が残念な感じ。高校生がネットで小説発表しましたー、的な空気がちょっとあるというかなんというか。恐怖とか、身体を傷つけられるとか、そういったホラー小説をホラー小説として成り立たせる部分もそうだし、各キャラクターの行動理念や台詞が安っぽく終わってる部分の多さ、ドクターハンブルについての描写みたいにもっと掘り下げるだけでも深みが出るはずなのにな、な部分、勿体ない。

  • 読んでて背筋がゾクゾクした。夜中に読むものじゃないな。なんだろう。この得体の知れない不気味な何かは。怖い。ひたすらに怖い。

  • 学園ホラー。学園に祀られた「だるま様」。学生たちに課せられたお祈りと、その決まりを破った時に起こる変事。不条理で不気味な雰囲気が全編に漂います。
    序盤からずっと描かれるのは「奪われる」ことの恐ろしさなのだけれど。実はさらに恐ろしいのは……その逆なのでは。実にいやな感じの残るラストでした。

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著者プロフィール

昭和59年生まれ。東京都出身。E★エブリスタにて活動する小説家。

「2019年 『東京23/奴隷区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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