きつねの遠足

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著者 : 石田千
  • 幻戯書房 (2013年9月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864880312

きつねの遠足の感想・レビュー・書評

  • 本を読み終えた千さんが
    ぱたん、と頁を閉じる。

    しばらく愛おしそうに撫でさすり
    ぎゅっ、をした後
    本棚にそおっと戻す。

    その日の夜。
    「あ、あ、あ、あ、あ。」
    うん?声が出るぞ。
    あ、あ、あー。

    本は嬉しそうに喉を震わすと
    金色に輝く光の様な声で
    僕ご自慢の物語を語り出す。

    私の耳に届いたのはそういう声。

    金の声。

  • 私には難しいところも多かったけど,いい本,という感想を持ちながら読み,かなり終盤になって女性だったのか!と気付き読み直そうかなぁと迷った。子どもの頃の思い出とか,こんな風に語れるのは素敵。私の思い出もそうなんだよなぁと思わされる。

  • 著者の視線、そこから透ける日々の送り方(ひいては生き方)を改めて羨ましく思った一冊。もう今では無くなってしまったもの、望むべくもないような日本人の心根を感じさせてくれる。置き忘れたある本のその後を描いた一編と、短歌選者を描いた一編が特に心に残った。

  • また読みたい本が増えてしまった。

  • 前半は書評というより感想文。千さんは独特のカンジ方をするようで、ソコが響くとたまらないだろう。紹介された本は「読んでみたい」というより、「読んでから」触れたい。

  • きなりの雲で石田千に会って、これまでほとんどの作品を読んだ。

    エッセイは独特の文章、子供の頃のエピソードが微笑ましく、目上の方に使う柔らかい敬語も美しい。

    朝は早く起きて、体に良さそうなものを作って食べて、銭湯につかり、踏み切りを眺めに行く。

    その日常の中にそっとひそんだ知性。

    早く、また、小説を書いてくれないかしら。

  • 『ひとのからだにも、電柱にも、水に浮かぶまつげの頼りなさにも、過去はひとしく内包されている。このあたりまえを写真ににじませることは、ずいぶん難しい。過去と現在の同居ならば、むしろことはをつかうほうが便利と思う』ー『つねに見送るひと』

    石田千はつくづく視覚の人だな、と思う。目がいい。そう言えば、自分には風景がはっきりと見えた記憶がほとんどない、と思い返す。唯一ある鮮明な景色の記憶は、初めて眼鏡を掛けた時。世の中って、こんなに明るくて、鮮明なものなんだ、と思った。今は、近視に老眼が入り、掛けても外しても世の中は、ぼやけている。目のいい人はうらやましい。でもぼやけて見えて、丁度よいのかも知れない。

    石田千の捉える景色は、写真の描写する世界とは違う。そこに佇むものや人の背後にある時間の流れを、さっと読みとり、言葉による絵に、にじませる。それはきちんとした時間の多重露出。でも、いつもちょっとピンボケのような味わいがある。目がいいくせに、手元があやしい。その風味がまたいい。

    石田千は、たぶん気配も含めて景色を見ている。いやむしろ、気配に気をとられている。だから焦点は現実にそこにあるものから容易にずれ、気配につられてどこまでも漂う。ほんの少し、聞こし召した体で、どこまでもふわふわとついて行ってしまう。その時、地上に自身の身体をつなぎとめるように、言葉をぽつりぽつりと並べる。言葉のつながりはあるようでないようで。それと一緒になってついて流れていくと、存外心地よい。

    それを技と呼ぶことは石田千の意思に反することになる。でもそれは石田千にしか書けない言葉の連なり。技がだめなら文体と言おう。

    目の悪い自分は、自分の目玉で見たものと写真機が写しとる二次元の差が面白いと思う。それと同じずれを石田千の風景を写しとる文書からも感じて、やっぱり面白いと思う。例えば、盛んに出てくる上野辺りの景色。言われて思い浮かぶ風景が、別の顔つきで石田千には微笑んでいるようにみえる。そこを通り過ぎる速度が違うのか。無機質のはずの景色は、お喋り好きの馴染みの人のように、石田千の頭の中に様々な言葉を吹き込んでは浮かび上がらせる。それをできるだけぽつりぽつりとゆったりついて行く。

  • +++
    からりと晴れたら町に出て、風邪をひいたら本を読む。銭湯、寄席、銀座のバアでも商店街でも、いつもなにかに手をひかれ、かならずだれかとめぐりあう…。ありきたりな日々の、ゆたかな時間を綴るエッセイ。
    +++

    いつもながら、興味の向う先、その切り取り方に著者らしさが現れていて魅力的である。目線の先にあるものへのまなざしのあたたかさ――ときには辛辣さ――が飾らなくてとてもいい。どっぷりと中心に浸るのではなく、やや斜めから、外側から観察するように向けられる視線がたまらない。言い切りがいつもよりもやさしく感じられるのはわたしだけだろうか。寄り添ってともに歩いているような心地の一冊である。

  • ゆったり感が素敵。。。

    幻戯書房のPR
    「まちの風景と自身への、ゆるやかで確かなまなざし。なにげない日常、ひとりで過ごす自在さ、本読みのゆたかな時間を綴るエッセイ

    はじめての学芸会は、「てぶくろ」という絵本のきつねの役だった
    いつもなにかに手をひかれ、かならずだれかとめぐりあう

    本書で語られるエポック
    ◆街の記憶・旅の記憶
    ・駒場での時間の潰し方
    ・作家のアシスタント時代の神保町
    ・本屋だけでない神保町
    ・夜の神保町でのもどかしい思い
    ・肉屋の惣菜に八百屋の旬の野菜たち
    ・踏切脇の夏草/九州の鉄道/海外旅行
    ◆生い立ちの記憶
    ・マネキンが恐くてデパートが嫌いだった
    ・家族での銀座の思い出
    ・荒れた公立中学から女子高にはいってから
    「オリーブ」はバイブルだった
    ◆カルチュラル・エッセイ
    ・お気に入りの本(『アルプスの少女ハイジ』
    『いじわるばあさん』など)の思い出
    ・朝日俳壇選評記
    ・柳家小三治落語会」

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