難病カルテ―患者たちのいま

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著者 : 蒔田備憲
制作 : 大野更紗【解説】 
  • 生活書院 (2014年3月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865000191

難病カルテ―患者たちのいまの感想・レビュー・書評

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  • 私は難病ではない。でも突然珍しい病気になってしまった。主治医も「難病指定になればいいのにね…」とか言うけど、状態や症状のちょっとした差で線引きされて、Aさんは認定されたのに私は認定されなかった…とかなると、同じ病気や患者会の中でも微妙な空気が流れると思う。

    だからといってタニマー(制度の谷間に取り残された人々)を出さずに、患者が全員認定されると予算なども膨大になるし…他、現在医療補助がある患者さんが「あなたの状態はもう落ちついてきているから自己負担をもう少ししてくださいね」とかなると、それこそ本末転倒だし鬼だと思う。そう考えるととても難しい問題だと思う。

    開き直っている患者さんも、外に出られずに引きこもりがちになっている患者さんも、他者とつながる、話を聴いてもらえる…それだけで気分だって随分と変わる。簡単なことではないけどとても大切なことだ。そして出来る事なら仕事をして生活を支えて自分で生きていきたいと思うと思う。病気になり世話になった分、恩返しだってしたい。読んでいて気持ちが痛いほどわかった。

    明るく振る舞えば「ノー天気だね」と言われ、落ち込んでいれば「なにメソメソしているんだ」と言われる。結局…入院中も家族の前でも、主治医にも開き直った顔しか見せていない。時々…孤独だな~って思う時がある。救いはやっぱり患者会だったかな。心の拠りどころだと今でも思う。

    この本もかなり参考になることが多い。例えば障害年金とか障害者手帳とかみんな混同していて、正直今だってよくわからない。コラムに詳しく書かれているので助かりました。

    大野更紗さん曰く、“「難」と書かれているクジをたまたま引いてしまっただけ…” 蒔田さん曰く“難病は「特別な人」がなるわけではない。「悪い事をした罰でもない」誰しも明日、発症する可能性がある(439ページ)難病に限らずがんなど病気はある日突然やって来る。 “この本は終わりではなく始まりと決意の一冊(440ページ)”と書かれていた。たった数ページなのに涙腺がゆるんだ。

    大野更紗さんの「難病カルテ」の、つかいかた(444ページ)もすごく気合が入っていて心強かった。各地域に格差がある難病相談・支援センター(私は地域格差も知らなかった、統一されたセンターだと思っていた)に、光が当たるだけでも皆うれしいと思う。

    このあと佐賀と佐賀周辺だけではなく、日本各地のセンターにスポットライトがあたりますように。…タイトルに「患者たちのいま」ってあるけど謎でした。取材して本になり、ふり返って集まって対談があるから、この「患者たちのいま」がある。一人一人の声が生きている本だと思いました。460ページくらいあるけどあっという間に読めてしまいました。

    私は自分のこと自分でできるし、歩けるし症状も軽いから良かった…とかそういう意味ではなく、単純に、純粋に読んで良かった…と思える本でした。一人じゃないんだな分かってくれる人がいるんだな…とホッとした。実名顔出して公表された方々に本当にお礼を言いたい。そして色々な方に手に取って見ていただきたいなぁ…と思いました。この本を選んで置いてくれた図書館にも感謝したいです。

  • 毎日新聞の佐賀版で2011年から1年9ヵ月、毎週1人の患者を書いた連載をもとに、追加取材などを加えて本になったもの。連載されていたときには、web版で何度か読んだ。母がいわゆる「難病」になり、私自身もかつては慢性疾患と診断されて、この病気と生きていくのだなーと思っていたので、病気モノの本のなかでも、難病モノは見つけたらわりと読む。ひとごととは思えない。

    なぜ難病患者を取材したのか、ということを著者はこう書いている。
    ▼筆者として最も意識したのは、病気を抱えている人がどのような暮らしをしているのか、患者としての生き方がいかに多様であるかを伝えることだった。そのことが「難病」という分かりづらく複雑な現状について、近づくきっかけにつながりうる、と考えたからだ。(p.7)

    本になったのを手にして、まず目次を見て、母と同病の方のページを読んだ。佐賀の方がお2人、「被災地の難病患者たち」のお2人が同病だった。それぞれの方の「生活のなかにある病気」に、母のことを断片的に思い出す。

    同病の方のページを先に読んだあとは、本の最初から順に読んだ。母は難病友の会や難病連にも参加していて、当時は学生だった私が車を出して同行することが多かったため、同病の方や他の難病の方ともよく顔をあわせたし、同じように難病者のいるご家族と話すこともあった。

    同病といえども「同じような人」はあまりおらず、患者それぞれに進行のはやさや症状はバラエティに富んでいた。どこへ行っても何の病気か分からず、診断がつくまでに長くかかっている人が多かった。母が異常を感じてから1年ほどで確定診断をうけたのは早いほうなのだった。数年かかって、やっと診断がついたという方もいた。

    それでも、確定診断がつけばまだよかった。病名もつかないような症状に苦労している方もいた。希少な難病だと、それだけでも大変だと知った。母は母で苦労があったと思うけれど、母の病気は厚生省の特定疾患に指定されていて、医療費は公費負担(母が生きていた当時)、障害者手帳をとり、障害年金も受給できていたのは、病名さえはっきりしない症状で何の助成も福祉もない状況の方と比べると、"恵まれていた"のだと思える。

    この本でも、かさむ医療費に不安を抱えるある患者は、「金がなければ苦しくても、死んでも、構わないというのがこの国がしていることなのかな」(p.294)と現状の制度に落胆している。お金がかかるので、日に3度のむ薬を、1度にしているという患者もいる。

    巻末の「解説」では、大野更紗さんが「治療困難な希少な難病は、「研究」の対象としては助成の対象になっても(研究協力への見返りとしての医療費助成)、「福祉」の対象とはされてこなかった。しかも、研究対象となる疾患は限られており、数千種類もあると言われる難病の多くは、公的な支援を受けられないのが現実だった」(p.446)と書いている。

    母はいつだったか治験に参加したこともあった。ダブルブラインドの治験で、自分が本当のクスリを与えられているのか、それともプラセボ(偽薬)を与えられているのかも分からないものだった。残念ながら母には何の効果も見えなかった。それでも、病気が進行するなかで母は「新薬開発」を待ち望んでいた。

    この『難病カルテ』は、世にある難病をあまねく網羅しているわけではないが、治らない病気を抱えて生きる暮らしの実情と、難病になった生活が今の社会制度のなかでは苦労の多いものになりがちなことを、患者一人ひとりの姿をとおして伝えている。

    患者の就労問題は、母が死んで15年経っても、あまり変わってないなと思う。難病患者の就労問題を研究する春名由一郎さんへのインタビューにこんな箇所がある。

    ▼研究を始めた当時、「病気だから働く必要はない。障害認定があるのだから難病支援は必要ないでしょう」という声が多かった。実際は違います。障害認定を受ける程ではないけれど、疲れやすく、通院が必要な人がいる。症状が悪くなったり良くなったりすることもある。「健常者」でもないし、「障害者」でもない。現行制度の「谷間」に陥る人たちが多く存在することを知り、支援の必要性を考えるようになりました。(p.246)

    ▼就労支援がなければ、難病対策は画竜点睛を欠きます。医療の進歩により就労できるほどの治療効果を得られても、適切な配慮がなく、「仕事に就くと体調を悪化させてしまう」というのでは、元も子もありません。就労支援は、治療の効果を上げるためにも意味があるのです。ですから、高額な医療費のために命を削って働かざるをえないという歪んだ状態は解消したいと思います。慢性疾患患者は世界中で急速に増加していますし、「患者」を排除しては社会が成り立たない。治療と仕事の両立をしやすくすることは、不可欠の課題なのです。(p.250)

    難病患者の治療と仕事が両立できるような社会は、多くの人にとって生きやすいだろうなあと思う。長時間すぎる労働や過労死などと無縁にならなければ、そんな両立はできないだろうから。

    初めて知ったこともある。母も受給していた「障害年金」は、「医師の診断に基づいて「生活上の不自由」があると認定されれば、一定額支払われます」(p.52)というもので、「「身体障害者手帳のような、いわゆる「手帳制度」とは別の制度で、手帳がなくても、受給できることもあります」(p.52)というものであるのは、私はうかつにも知らなかった。母が手帳をもっていたことと年金受給とを私はごっちゃにして認識していた(手帳に等級があり、年金にも1級・2級という等級があるのも混乱のもとだと思った)。

    以下、厚生労働省サイトより
    *障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
    http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3226
    *障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
    http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3227
    *国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(※2014年6月1日から、障害基礎年金、障害厚生年金の障害認定基準が一部改訂されたとのこと
    http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=6761

    本筋ではないけれど、著者が縁もゆかりもなかった「佐賀」に赴任するさい、「イメージするのは吉野ヶ里遺跡くらい」というところは、私もそう思うので、親近感をおぼえた。著者の名は「まきた・まさのり」。患者さんの名前で読みにくいものもあったので、もう少しルビがほしかった。それと佐賀弁が私には分かりにくいところがあって、そこではじーっと前後を読んで意味を考えた。

    (6/11了)

    巻末の参考文献にあげられていた中で、読んでみたい本
    『みぞれふる空 脊髄小脳変性症と家族の2000日』
    『決してあきらめないあきらめさせない―障害者、難病患者の日常を克明に追いかけたドキュメント』
    『わたしは目で話します 文字盤で伝える難病ALSのこと そして言葉の力』

    *意味がよく分からなかったところ
    p.22 酸素ボンベを歩いて外出することに →ここは酸素ボンベを「提げて」とか「持って」ではないのだろうか。

    *読みにくいだろうと思うところ
    p.168 外連味無く話す →ここはルビを振るか、あるいはかなに開いたほうがよかったのではないかと思う。(外連味=けれんみ)

  • 難病を抱え、生きている人々への支援ととりまく環境について考えさせられる本です。当事者・家族の思いを知ることで、相手自身やその立場を理解することに役立つと考えられます。実習や臨床で実際に患者さん・家族と接する前に読んでおくと、自分にできることは何か、より深く考えることにつながると思います。

    地域保健学域 4年生

  • 2016.4.13

  • 聞いたこともない難病もあったが、それでも認定されているうちの一部であり、いまだ認定されずに苦しんでいる人も沢山いるのだろうと思う。
    たとえ、今発病していなくても、いつ自分の身に降りかかるかも知れないのかと思うと、他人事でなく考えさせられる。

  • 時間の都合で知りたい部分だけをまず斜め読みしただけなので、おおざっぱな感想です。
    カルテとあるように、色んな難病患者さんの記事です。紹介されているのはほんの一部なのでしょうが、世の中にはこんなに多くの難病があるのかと驚かされます。
    そしてコラム部分には関連の情報もあり、2014年3月発行なので比較的新しい情報としてかなり参考になるのでは。
    余裕がある時、改めてしっかり読みたい一冊です。

  • 正直、評価できるほど知らない。そんな気持ちで読み終えました。自分に何が出来る・この分野で何かしたいとまでは…二の足踏んでしまったけど、持ち歩きながら人生歩んでいきたいなと思いました。今自分の周りにいる難病や障害と向き合う人たち、いつか自分が出会うかもしれない誰かや、自分に起こるかもしれないコトのために。

    とても勉強になり、考えさせられる一冊でした。答えは出ないけれど、気持ちが沈んだり、もうどうしようもないと思ったりはしない。決して面白おかしく書いてあるわけではないけれど、ひとって何がどうなってもそのように私には映るんだなとも。

  • 世の中には、こんなにも難病と闘っておられる方がいることをこの本で知った。
    病名すらも初めて知る難病もあるし、身近な耳慣れた病気もある。
    この本は、難病患者の今をそれぞれの当事者からの視線で、毎日の暮らしをクローズアップさせている。
    現実に難病をかかえて「今」をどうやって生きているかを伝えているだけではない。
    これからの医療や障害者支援、就労支援など様々な問題点に対して、当事者だからこそ感じている、支援や体制はどのようなことが必要とされているかが、まとめられている。
    何気なく普通に日々を暮していることが当たり前の日常であったかたがある日、突然、難病の”くじ”を引いてしまうことは(大野更紗さんの言葉でも紹介されていたけれど)、誰もいつ起こり得る事か分からないとすれば、他人ごとだと思えないと思って読む方が多いのではないかと思える。
    難病指定はされていない病気を抱えているので、当然、自分の気持ちと重なる部分が大きかった。
    難病だけど一生懸命頑張って生きているその姿が、励みになるという感情に訴えると言う側面もあるけれど、それだけではなく、具体的にどんなことに困っている「今」があるのかをまとめている著書だったので、これからも続編を期待したい!!

  • 難病カルテ 患者たちのいま / 蒔田備憲 / 毎日新聞記者 | SYNODOS -シノドス-
    http://synodos.jp/welfare/8466

    生活書院のPR
    http://seikatsushoin.com/bk/119%20nanbyokarute.html

  • 先月、難病法が42年ぶりに改定された。新聞報道によると、「助成対象となる疾患は(1)患者数が人口の0・1%(約12万人)程度以下(2)発症の原因が不明(3)治療法が未確立-などが条件。具体的な対象疾患は第三者委で決めるが、現行の56疾患(約78万人)から約300疾患(約150万人)に拡大する見通し。」らしい。全人口の1%以上で、100人に一人は該当するという計算になる。いつ自分が該当者になってもオカシクない。が、こういうマイノリティーのニーズというのは票にならないので政治は動かない。人々も身内にでもいない限り自分に関係ない話になってしまう。が、明日はわが身という感覚をもって関心を持つ必要はあるんだろう。決して他人事ではない。本書には多数の体験談が掲載されており、いろんな苦労を知る事ができる。

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難病カルテ―患者たちのいまの作品紹介

パーキンソン病、ALS、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症(MS)…難病の「いま」が、ここにある。すべての難病当事者、支援者のための画期的「使える」ツール誕生!!難病は「特別な人」がなるものでも、「悪いことをした罰」がもたらしたものでもない。治らない病気を抱えて生きるその日常を描いて全国的な反響を呼んだ毎日新聞佐賀県版連載に、大幅な加筆・修正を加えて待望の書籍化。

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