ラインズ 線の文化史

  • 157人登録
  • 3.68評価
    • (4)
    • (7)
    • (6)
    • (2)
    • (0)
  • 8レビュー
制作 : 工藤 晋 
  • 左右社 (2014年5月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865281019

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェームス W....
トマ・ピケティ
J・モーティマー...
國分 功一郎
クリス・アンダー...
山本 貴光
森田 真生
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印

ラインズ 線の文化史の感想・レビュー・書評

  • 特定のひな型、スタイル、理論への適合を強制することなく

    いつもの道をはずれて、外に出てみるといい。あるいは自分の習慣をよく見直して、それによって差してくる光のもとで、たとえば本の森を見直してみるといい。

    人は誰も自分一人で考える力はない。すべての思考は他の人がこれまでに試みた線を引き継ぐものだ。痕跡を見つけ、それをたどり、延長し、糸をみつけ、それを利用し、、、

    きみだけがもつ数々の線の並びと、それぞれの線の延長を。その線が、きみのまったく知らない誰かの線とつながるとき、何かが始まる。

    見つけた線を延長し、または捨てていい。そんな風にして自分の人生の線にほんとうに役立つ者を探し、また次の一歩を探ればいい。

  • 訳者自身があとあきで「要約できないし、要約すべきでない」と書いているが、線形(Liner)に喩えられるものをいろんな角度、視点の高さから捉えて語っているので、まとめようとしても「ラインズ(Lines)」としか言いようのない本だった。

    刺繍の糸、時間、散歩、旅、書道、絵画、建築等々……議論を積み上げて大きな命題を証明するというシロモノではなく、個別のディテールを言語化して編むということそのものに力点がある。

    文化人類学って、ざっくりそういうものなのか。

    売れ線の「一点突破の結論キャッチコピー」をタイトルに据えた啓発本とは対極に位置する本。一本筋は通っているが、対象はあっちこっちに飛ぶので読みにくいのは読みにくいけれど、読書体験としては豊かな感じがしないでもない。

    個人的には「樹形図またキタ!」って思った。あとは王羲之が雁の首をしなやかさに霊感を得て、筆の運びに取り入れたとか……あとはブルース・チャトウィンのソングラインとか。

    マスな社会的インパクトという視点を除けば、語るに足る対象や切り口は、いまだ溢れているなと再確認。

  • 推薦者 共通講座 准教授 春木 有亮 先生

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB50106295&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 「線」という究極に包括的な概念を切り口に、人類の文化誌を探っていこうという試み。

    まずは、「歌うこと」、「語ること」から、それを記述する「表記法」までを取り上げて、人間が一つの歌や物語を語ることとそれを記述することが、歴史の中でどのようにして分化してきたのかを探っている。

    その中で見えてくるのは、記述自身の持つ多様な性質である。記述自身が作品として扱われる文学や絵画に対して、音楽やある種のテクスト(修道士にとってのネウマや能楽の奏者にとっての運指)は、その上を彷徨することのできるある種の風景であって、そこから物語を拾い上げ世界を紡ぎ出していくものであるといった差異である。

    人間が様々な物事を「表記」してきた中で、この差異は明示的に捉えられることは少なかったが、確かに存在していた。そして、その差異を掘り下げていくうちに、すべての記述は「ライン」によってなされており、そのラインは何らかの「表面」に記されているということ、そしてラインと表面の関係性のなかに多様な世界が広がっているという次のテーマに繋がっている。


    表記におけるラインと表面の関係の視点から様々なラインの形態を分類すると、「糸」、「軌跡」、「切れ目」など、さまざまなラインが存在する。

    人類学の真骨頂だが、筆者は世界各地の民族の事例を挙げながら、それらの様々なラインが、それが記される表面と相まって、歴史を物語ったり、迷路を形成して魔除けの力を発揮したりと、様々な役割をはたしていることを紹介している。


    一方、ラインは、「点と点をつなぐ」、「方向を指し示す」、「領域を示す」といった機能的な側面での性質も持っている。本書では、そのようなさまざまなラインの使われ方が人間の文化にどのような影響を与えたのかも分析している。

    その中で筆者は、「何かに沿って進んでいく」ラインとしての「徒歩旅行(wayfaring)」と、「何かを横断していく」連結器としてのラインである「輸送(transport)」の二つの様相に着目している。

    徒歩旅行は常に移動しており、その移動の過程である踏み跡(trail)自体が意味を成すのに対して、輸送は出発地と目的地が繋がれていて移動が完了すること自体が本質であり、その間のラインは路線(route)である。

    人類の文化史の観点からはこれら2種類の形態はどちらかが完全に先行するというものではなく、狩猟民族の中にも狩りの移動は徒歩旅行的な形態だがその獲物を保管地に運ぶ移動は輸送的な形態をとるといった共存が見られる。

    それは、現代の都市生活でも同様である。現代の都市生活では、移動自体に意味が持たせられることは少なく、目的地までのスピードが求められる。しかし、ある場所からある場所へ瞬間移動することが不可能であるのと同様に、移動の前後で我々が精神的に全く変化しないことは在りえない。つまり、すべての移動は何らかの徒歩移動の性格を含んでいる。都市空間が徒歩移動のための豊かな「表面」を提供していなかったとしても、我々はその都市空間を侵食し、様々な「踏み跡」をその上に残しながら生活をしている。


    徒歩旅行と輸送のように、「線描(drawing)」と「記述(writing)」もそれぞれが異なる性格をもちながら、我々の文化の中に共存している。

    線描が何らかの運動性を持っており作品性を持っているのに対して、記述は発話や身体動作といったものから徐々に離れて技術的な要素を強め、発話の音声を表記する必要性に基づいて行われるようになる。しかし書道のように線描と記述が絶妙なバランスをもって共存している場合も存在する。

    人間は図示によって音声や動きを描写するが、その線描は次第に簡易化され、図示の線状化が進んでいく。そのことにより元... 続きを読む

  • 楽譜に書かれた線と本に書かれた線(文字)との違いから始まり、線の定義、内側へ向かう記述と外側へ向かう記述、歩行者と海洋測量、技巧と芸術の分離、というような、線にまつわる著者の思想本。知を見つけては切り開き歩んでくという進化と、既にある知と知を結んでいくという学習との、根本にある違いはとても興味深い。
    全体的に、読み進める内に、序章や1章で著者の示した思想がおぼろげに分かってくる構成で、1度ではなかなか理解できなかった。

  • 【読前メモ】まずタイトルにぐっと心引かれる。「線」だなんて、そんな森羅万象あらゆるものを構成していてまた人類も太古の昔から当たり前のように扱ってきたモノで果たして文化を切り取ることができるのか。そしてそれはどんな切り口を見せてくれるのか。興味をそそられる。

全8件中 1 - 8件を表示

ラインズ 線の文化史に関連するまとめ

ラインズ 線の文化史を本棚に「積読」で登録しているひと

ラインズ 線の文化史の作品紹介

人類学とは、人間がこの世界で生きてゆくことの条件や可能性を問う学問である! マリノフスキーからレヴィ=ストロースへと連なる、未開の地を探索する旧来の人類学のイメージを塗り替え、世界的な注目を集める人類学者インゴルドの代表作、待望の邦訳!
文字の記述、音楽の棋譜、道路の往来、織物、樹形図、人生…
人間世界に遍在する〈線〉という意外な着眼から、まったく新鮮な世界が開ける。知的興奮に満ちた驚きの人類学!
管啓次郎解説・工藤晋訳(原著LINES a brief history, Routledge, 2007)

ツイートする