ウナギとマグロだけじゃない! 日本の海から魚が消える日

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  • マガジンランド
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865460117

作品紹介・あらすじ

養殖と輸入魚に占領される日本の食卓。知られざる日本漁業の凋落を再生に変える喫緊の一冊!

感想・レビュー・書評

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  • 日本の海で魚減少の主原因は温暖化と外国漁船の乱獲とメディアで流布されてるが、 資源量に対し漁獲枠が多過ぎで漁獲管理出来ていない、年々減る一方、題名とおり魚が消える日もありえる。

    輸入に頼らず食料自給率をあげること、養殖も餌が天然資源魚類由来なので乱獲の原因になっていること
    めんどくさがらずITQに取り組んで輸入も養殖も沿岸漁業もバランス良く、漁業先進国のように漁師になりたい若者を増やしてもらいたい。

    なぜ、日本漁業の衰退に国民が興味を持たないのか不思議だ。

  • 日本の水産業の現状と諸外国の紹介。
    日本の水産業の衰退の原因と
    その対策が示されている。
    結論を言ってしまえばITQの導入これに尽きる。
    読んでいると日本の水産業の前近代的な状態に絶望感を覚える。
    農業と一緒で既得権益維持が優先、政治家も票になんなきゃ何もしない。その割に農業報道されて話題になるのに水産業に関してはあまり報道されないのが今だに何も改革が進まない原因の1つだと思う。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB15709453

  • 完全養殖に成功した近大マグロ、ニホンウナギここだけ見れば日本の技術は最先端だ。水産庁はメキシコ断流とラブラドル海流がぶつかる北西対西洋海域(ニューファンドランド島沖)や北大西洋断流と東グリーンランド海流がぶつかる北東対西洋海域(ノルウェー沖)とともに黒潮と親潮がぶつかる北西太平洋海域(三陸沖)を世界三大漁場と呼んでいる。しかし日本の漁業の実態はもはや漁業先進国と呼ぶにはほど遠い。

    日本、ノルウェー、チリ、ニュージーランドという主要漁業国の生産性を比較すると以下の様になる。漁船隻数は順に9万/7千/7千/14百、漁獲トン数は5.7/2.3/3.8/0.6百万、漁業就業者数は21万/1.3万/7万/7千だ。1隻当たりの漁獲トン数は日本の63tに対し順に320/550/417tそして一人当たりの漁獲トン数は日本の27tに対し169t/54t/79tとなっている。(2007〜08年頃の実績)漁業就労者の平均年齢を見ても日本では60才以上が5割を超えるのに対し、ノルウェーでは15%未満で40%は39才以下の若い世代だ。

    ノルウェーも順風満帆だったわけではない。1970年代までに乱獲でニシン資源が90年代前半にかけてはマダラ資源が崩壊した。深刻な危機感を抱いた漁業界と政府は資源管理を徹底しIVQという漁船ごとの漁獲量割り当て制度を導入し他人から漁船とともに漁獲枠を購入した人には漁船のスクラップを奨励した。この結果漁獲量は60年代の1.6倍と安定し金額ベースでは1.8倍に増えている。逆に漁船数は96年に1万隻以上あったのが2010年には6300隻に減り、漁業者数も85年の2万5千人から1万2千人に減少、若者が働きたがる儲かる産業に生まれ変わったのだ。漁船はホテル並に快適で作業自体も日本の漁船の方がきつい。80年代には2千億円を超えていた補助金も90年代に8億円に減額され2006年には一部の減船補助金を除いてほぼ撤廃されている。

    世界の漁業先進国で漁獲割り当て制度でオリンピック方式を採用しているのは今や日本だけである。日本でも98年からTACという総漁獲可能量をマイワシ、スケトウダラ、マアジ、マサバ(ゴマサバ)、サンマ、ズワイガニ、スルメイカに導入しているが世界で採用されているIQ方式(個人や漁船に漁獲枠を割り当てる)のではなく全体の漁獲量が漁獲枠に達した時点で打ち止めになる「オリンピック方式」を採用している。つまり日本では早い者勝ちなのだ。自由競争が原則のアメリカやおとなり韓国もIQ方式を導入しており成果を上げている。早取り競争だと小さい魚でもとにかく先に取り、加工工場では鮮度が落ちないうちに処理をしないといけないため繁閑の差が激しい。IQ方式だと漁獲枠価格の高騰という弊害が一部出て来てはいるが小さな魚は逃がして大きな魚を捕るため売り上げは増加するし加工工場の操業も平準化できる。漁業者にも明らかなメリットがあったため採用が進んでいる。

    日本でIQ方式が進まない理由は新しいことをやりたがらない水産庁と漁獲枠の配分を利益の源泉にしている漁協に大きな問題がある。漁協の多くは既に赤字体質で補助金や補償金で埋め合わせているが公認会計士の監査を受け付けず自ら指定した監査人の監査で済ましている。室戸岬や三崎港など大きな漁港を整備しても入港する漁船が少ない。また倉庫や加工工場を建設するために埋め立てられた造成地は使われないまま捨て置かれている。漁業者の数を減らし漁港数を整理していけば儲かる産業になるのが予想できるだけに補助金頼みの政策のつけが見える。

    養殖も万能ではない。今のところチリやペルーでとれるアンチョビが豊漁なので成り立っているが例えばクロマグロ1Kgを増やすためには餌が15Kg必要で穀物と牛肉の様な関係になっているのだがエサは水質汚染の原因になるしアンチョビが不漁になれば養殖の採算性も安定とは言えない。30Kg未満の本来クロマグロと呼べないマグロをとるよりも泳がせて太らせて穫る方が利益率は高い。

    日本でも新潟県の泉田知事がモデル的に導入したホッコクアカエビ(甘エビ)のIQ制度は政化を見せ始めている。またWEDGEの記事によると日本のサバは価値が低くアフリカでは安いから売れている。日本のサバは資源状態が悪く震災の影響で少し増えたからといってジャミジャミやジャミポロといった1才魚を大量に捕ってしまってはすぐに元に戻るだろう。
    http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4495

    著者の小松氏は元水産庁職員で商業捕鯨再開を目指す捕鯨賛成国の代表として有名な人でこの本でも南氷洋のミンククジラを資源状態良好と指摘している。あくまで科学的な資源量に基づいて漁獲量を決めようと言うのがその主張だ。土地に縛られた農業よりはまだ打つ手がはっきりしてるだけにやりやすいと思うのだが。

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著者プロフィール

農学博士。独立行政法人水産総合研究センター理事。
東北大学卒。77年農林省入省。米国エール大学院卒。農学博士(東京大学)。
IWC日本政府代表代理、FAO水産委員会議長、水産庁漁場資源課長等を経て、05年より現職。
[主要著書]
さかなはいつまで食べられる

「2007年 『さかなはいつまで食べられる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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