蒲田の逆襲 (笑う地域活性本)

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  • 言視舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865650662

作品紹介・あらすじ

★都会でもない、田舎でもない「蒲田的」なる文化があります。時代が強いる過酷な環境の変化に果敢に挑戦してきたこのまちは、多様性に満ち、東京でも比類のない多国籍で多文化なまちなのです。でも、誤解が多い。ひどいレッテルも貼られています。それをひっくり返します。
★「汚い」「危ない」「騒がしい」なんて、もう言わせません!
★2020年に向けて、日本が本気で多様性を受けいれるつもりなら、蒲田を見習うべし。

感想・レビュー・書評

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  •  蒲田にもう四年近く住んでいる。蒲田に住む前の蒲田は、ちょっと猥雑な雰囲気がする街だった。
    蒲田は、大田区にある。大田区は羽田空港もあり、池上本門寺があり、田園調布もある。(田園調布は世田谷区だと思っていた)随分と多様な景色を持っている。蒲田のことを知らなすぎるなぁと思って、本書を読んでみた。
     蒲田は「汚い」「危ない」「騒がしい」と言われていたそうだ。それは、誤解であって、蒲田は、多様性があり、多国籍で、多文化であるという。
    蒲田には、羽根つき餃子という名物があり、実に餃子店というか中華料理屋が多い。中国・雲南省で10年近く住んできたことがあって、なぜか中華料理屋のある方が嬉しい。中国人は福建省の人が多い。立ち飲み屋もたくさんあって、なんとなく勤労者の街という感じである。
     蒲田は、長い歴史の中で、さまざまな顔を持つようになったという。
    蒲田といえば、松坂慶子の「蒲田行進曲」を思い出す。この映画は、京都で作られたようだ。
    1920年に、松竹キネマ合名会社が作られ、「東洋のハリウッド」を目指し、「松竹キネマ蒲田撮影所」(1936年に閉鎖)が開設された。場所は、現在のニッセイアロマスクエアだという。ふーむ。キネマ通りと違うのだ。小津安二郎、木下恵介、田中絹子、高峰秀子らが活躍した。1200本もの映画を撮影した。結局、騒音のために1936年に鎌倉市大船に松竹大船撮影所に移転した。
    なぜか、「東洋のハリウッド」の痕跡もないのが、残念だ。
     蒲田を有名にしたのは、池井戸潤(著)の「下町ロケット」。蒲田が下町というのはその風情がない。東京で下町といえば、神田、浅草、深川をさす。それに私のいる蒲田界隈は、マンション、商店街、飲食店があって、町工場もない。色々な物語があって、蒲田という街は作られている。
     電気機械金属加工は、糀谷、羽田、大森。精密機械は、下丸子、武蔵新田、矢口渡に。埋め立て開発エリアが、城南島、京浜島に大規模な工場がある。「ものづくりのまち大田マップ」265社が載っている。住宅街に溶け込むように町工場が存在する。「おおた工業フェア」をみに行った事があるが、確かに町工場技術が先進的であることがよく理解できた。ただし、製品を作らず、部品を作る会社が多かった。
     蒲田は、殺人現場としてもよく登場する。松本清張の「砂の器」も昭和35年の国電蒲田駅の横丁のトリスバーでの話から始まる。死体は蒲田操車場で発見される。なぜか、蒲田は殺人現場がよく似合う。蒲田ならありうるということだ。高村薫の『レディ・ジョーカー』の半田修平は蒲田署だった。
     呑川には、シンゴジラが海から遡ってきた。その近くの銀行では、福山雅治が集団左遷されている。やはり、騒々しいところかもしれない。京急蒲田駅とJR蒲田駅が離れていることで、その間を徒歩で歩く人が多いのも、特徴だ。不思議な活気がある。
     時代を遡ると蒲田は梅園で有名だった。安藤広重の名所江戸百景「蒲田の梅園」が描かれ、梅屋敷では、高杉晋作、岩倉具視、大久保利通、伊藤博文が会合に使った。梅の木が90本植った聖蹟蒲田梅屋敷公園があるそうだ。行ったことがない。また、横浜植木が、1903年に約1万坪の菖蒲園を開設した。それも、今は「あやめ橋」となっている。菖蒲園の面影はない。横浜植木は、その当時球根で有名なのだ。蒲田は、歴史があるが、それがたち消えてしまうところに特徴がある。
     大田区産業プラザは、コミックやアニメ文化の催しが開かれている。蒲田こそコスプレ発祥の地だという。なんと言っても、大田区は、OTAKUだからだそうだ。また外人も多い。中国、韓国、フィリッピン、ベトナム、タイ、ブラジルなど、アジア系のるつぼで、2万人を超えるという。
    蒲田の飲食店は、新宿に次いで2番目に多い。
     JR蒲田駅西口にあるユザワヤは、確かにすごい。趣味が集まっている。私は絵の道具などは豊富でユザワヤで買う。日本工学院、黒湯、OKマート。便利さが勝る。
    そうだ。大田市場がある。鉢花ではFAJがある。足洗池は、日蓮上人が足を洗ったということからきている。ふーむ。名跡も多い。足洗池の畔には、勝海舟が住んでいたという。
    ふーむ。蒲田を捉えるには難しさがある。この多様性は、ごちゃごちゃしていて、異質が混じり合っている。そうであるが故に、住みやすいのかもしれない。蒲田の特徴は、連続性がないようにも思える。蒲田の解説本として優れている。ただ、なぜ逆襲なのかよくわからない。逆襲シリーズとなっているらしい。

  • 蒲田の歴史や蒲田のお店など、様々な側面から蒲田を語った本。

  • ブログ更新:『蒲田の逆襲 多国籍・多文化を地でいくカオスなまちの魅力』
    http://earthcooler.ti-da.net/e9295465.html
    「危ない」「汚い」「騒がしい」というネガティブなイメージをもたれる蒲田を、地元愛溢れる著者が「そうではなく、こんなに魅力的なのです」と「逆襲」していく。そしてそれは成功している。丹念なリサーチによって、地元の私でも「え、そうだったんだ!」と初めて知る驚きの情報もあり、カオスな地域性はわかってはいたものの、その深さが豊饒さであることに気づかされる。

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著者プロフィール

1981年、東京都大田区生まれ。大学院修了後、会社勤めをしながら、ラジオドラマを中心に時代物、ファンタジー、ヒューマンドラマなど幅広く脚本を執筆。2009年NHK名古屋ラジオドラマ脚本賞佳作受賞、2013年NHK中四国ラジオドラマコンクール佳作受賞。NHK-FMシアターや青春アドベンチャーにて脚色、オリジナル脚本を執筆。KBC「ミヤリサン製薬Presents北方謙三水滸伝」脚色。その他、舞台の脚本、書籍、雑誌記事の執筆も行なう。

「2019年 『増補改訂版 蒲田の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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