恐怖の地政学 ―地図と地形でわかる戦争・紛争の構図

  • さくら舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865810769

作品紹介・あらすじ

なぜ戦争が起き、なぜ紛争が絶えないのか!

地形は、そこに暮らす人に大きな影響を与えてきた。地政学とは、国際情勢を理解するための地理的要因に注目する。今、日本にとって重要なのは中国、ロシアの地政学である。中国はなぜ海洋に進出しようとするのか(中国の動向に関しては大半の章で触れている)。ロシアはなぜクリミヤを侵略したのか。アメリカは200年以上にわたり、非常に有利な地理的環境で利益を得てきた。しかし、今、なぜアメリカの時代は終わったと言われるのか。

本書は20枚の地図(地形もわかる)で地球上の危機と平和を考察している。イギリスベストセラー初翻訳!

感想・レビュー・書評

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  • 世界の現在の政治の状況である。よく書かれている。原題はPrisoners of Geographyであるから、地理学の囚人たちという意味である。恐怖という意味はない。地政学というのは作ったタイトルであり、英語ではGeopoliticsであるので翻訳しすぎである。
     ただ、世界の情勢がよくわかる。しかし、2015年の出版で2016年の日本語版出版なので、9年近く昔のことなので、第二版が翻訳されれば学生が世界情勢のことを知るのに役立つであろう。

  • これも学校の授業でやるべし!!
    難しかったけど、『だいたい』の感じがわかりました。
    地政学、勉強になるわぁ。
    (まだまだこれからやけど。)

  • 国際政治(「国際関係」という今どきの中性的な用語は敢えて使わないでおく)を考える上で、国家が直面する地理的条件を踏まえることは当然の前提だ。高坂正堯が国際政治を学ぶには地図と百科事典を手元に置いておけと言っていたのを思い出す。近年ようやくそうした当たり前の常識が見直されつつあり、「地政学」や「地理」という言葉を冠した本が書店でかなりのスペースを占めるようになった。遅まきながら冷戦というある種の「平和ボケ」から目覚めたということかも知れない。

    玉石混交と言えばその通りだが、この手の本は学者が書いたものはあまり役に立たないし面白くもない。本書のT・マーシャルもそうだが、数年前に出た名著「地政学の逆襲」のR・カプランも元々はジャーナリストだ。特に本書にはマッキンダーがどうした、スパイクマンがこうしたという学者好みの講釈はない。地図を片手に世界中を歩いて集めた情報が満載だ。国境線を引いただけの平面地図ではなく、土地の起伏がわかる地形図が掲載されているのも、地理に対するまっとうなこだわりを感じる。自然の要害である山岳地帯や砂漠、食料生産と居住空間のための平地、交易インフラであるとともに有事の補給の鍵を握る河川(水の供給源でもある)、道路、大型船が寄港できる水深のある海岸、天然資源へのアクセス等が重要だが、これらを巡って国際紛争は起こってきたし、今後も起こり続けるだろう。

    通読して感じるのはやはり中国の瞠目すべき海洋進出だ。尖閣や南沙諸島といった近海への張り出しは勿論、パキスタンの港湾を租借してパイプラインと道路でインド洋への出口を確保するかと思えば、パナマ運河を凌駕するニカラグア運河建設に投資する。またアフリカ各国へは惜しみない援助で天然資源と国連票を押さえにかかる。安倍元首相どころではない文字通りの「地球儀を俯瞰する外交」だ。潤沢な資金をバックに大陸国家の制約を克服し、着々とシーパワーとしての地歩を固めつつある。当面アメリカの海軍力には及ばないだろうが、拮抗するのは時間の問題と考えた方がいい。いたずらに危機を煽る必要はないが、日本として冷静な危機感は持つべきだ。

    地政学は図式的な決定論に陥りがちなために忌避されてきた面もある。この点著者は「人類の歴史は、食うか食われるかのゼロサムゲームだった。地理的決定論と人間の本質を結びつけて考えると、ゼロサムゲーム以外の歴史が生まれることは難しかったと断言できる」と指摘するが、こう付け加えることも忘れない。「しかし、科学技術が地形の牢獄から私たちを救い出した例がいくつもある」これは逆に言えば、科学技術が地形による庇護を我々から引き剥がす場合もあるということだ。蒸気船が鎖国をこじ開けたように。ともあれ本書は、我々を取り巻く現実を直視し、悲観でも楽観でもなく、リアルに国際情勢を認識し、国家戦略を構想する上で欠かせない視点を提供してくれる。

  • 地形という物理的要因が文化だけでなく政治・軍事、戦争、紛争に影響を与えているかという地政学のもと、世界の地域や、そこにある問題を丁寧に解説している。

    川や海があっても、人間が利用しやすいような地形でない場合は天然の要塞や陸の孤島となり、人が住める場所においては、資源をめぐる紛争や宗教上の対立などが起こることが様々な例から分かった。

    他国の地形、文化を考えずに先進国が勝手に国境線を引いたり、敵の敵は味方だったり、争いの絶えない中東・アフリカの状況や、あまり馴染みのない南米の状況についても、知ることができた。中国が、本で紹介される、どの地域にも絡んでくるのが印象に残った。

    北極圏や、ひいては宇宙空間においても、各国の思惑があり、競争の場となりうることに、争いの火種はどこにおいても常に存在し続け、終わりがないように感じた。

  • もはやロシアとウクライナは戦争状態なわけだが、世界が地理的にいかに緊張状態にあるか明快にわかる。

  • 本書は各大陸・地域について地政学的な観点から網羅的に概観している書籍です。

    第一章の中国から始まります。北側はゴビ砂漠を挟んでモンゴルと国境を接し、東側にはロシアがあるが山岳地帯で隔てられており、南側に向かうと黄海、東シナ海、南シナ海と海岸線が続き、さらに移動するとベトナム、ラオス、ミャンマーとぶつかります。さらに北に行くとヒマラヤ山脈が国境線上に出現し、チベット自治区、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタンと非常に多くの国家と国境を接しています。砂漠や山脈、ジャングルなど自然の境界で隔てられている地域もあれば、簡単に国境を越えられる地域もあります。

    第二章からは、ロシア、日本と朝鮮半島、アメリカ、西ヨーロッパ、アフリカ、中東、インドとパキスタン、ラテンアメリカと続き、最後は北極圏です。現在の世界が西洋的な構成であり、国民国家の概念が馴染まない地域で紛争が絶えない現状への理解を深めることができました。

  • 購入して読み。
    『紛争でしたら八田まで』でもこの本が紹介されていたので興味があったのだ。

    まだパラパラめくってる段階。タイムリーなのでロシアの章をざっと眺めたり。

    ・p57「プーチン大統領は、元大統領ミハエル・ゴルバチョフを毛嫌いしている。ロシアの防衛力が弱まったのはゴルバチョフの責任だと非難し、1990年代のソビエト連邦の崩壊を「今世紀最大の地政学的惨事」と呼んだ。」
    →プーチンってこんなことを考えてるんだなあ。

    ・ソ連がバラバラになった時、十五の共和国が誕生。地形による論理的な国境線が生まれた。例外はスターリンによって国境を定められた国(タジキスタンのように国名に「スタン」がついている国)。(p63)

    ・p64あたりはウクライナ、ジョージア、モルドバの悩ましい立場がよくわかるなあ

    ・p294 北極海にマーカーをたて「ロシア海」を主張している話。さすがというかなんというかおそロシア

    ・おわりに の中で宇宙についても触れている。そうか宇宙が地政学の研究対象となる時代がもう来ているんだな。
    (20220718読了)

  • 世界の地政学的状況がほぼ全方位的にレビューされており、刊行から6年以上経た今でも基本的な枠組みはそのまま通用する。ロジック的にジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」の延長線上に近いものが見受けられる。
    カプランの「地政学の逆襲」と読み比べると、解釈者の視点による違いが楽しめるだろう。

  • SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/688285

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著者プロフィール

1959年イギリス生まれのジャーナリスト。コソボ紛争、アフガニスタン侵攻、アラブの春の反政府デモ等、世界各地の紛争地域で取材を重ねる。著書に『恐怖の地政学』など。

「2020年 『地政学でわかるわたしたちの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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