毒書案内

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著者 : 石井洋二郎
  • 飛鳥新社 (2005年12月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870317000

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毒書案内の感想・レビュー・書評

  • 十割、すでにアンテナに捕捉されていた本ばかり。
    しかしこの「偏り」が、よくある書評を並べただけのブックガイドブックとは異なるところ。
    その偏りにうまく合致していたのだろう。
    コンセプチュアルな本だがこのコンセプトには大いに賛同する。

    「死の誘惑」:
    人間失格(太宰治)、若きウェルテルの悩み(ゲーテ)、二十歳のエチュード(原口銃三)、孤独な散歩者の夢想(ルソー)、ヴェニスに死す(トーマス・マン)

    「異界の迷宮」:
    不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)、砂の女(阿部公房)、審判(カフカ)、死霊(埴谷雄高)、ドグラ・マグラ(夢野久作)

    「揺らぐ自我」:
    地獄の季節(ランボー)、マルテの手記(リルケ)、無知の涙(永山則夫)、地下室の手記(ドストエフスキー)、ツァラトゥストラ(ニーチェ)
    「迷走する狂気」:死の棘(島尾敏雄)、金閣寺(三島由紀夫)、わが闘争(ヒトラー)、野火(大岡昇平)、夜の果てへの旅(ルイ=フェルディナン・セリーヌ)

    「性と暴力」:
    われらの時代(大江健三郎)、北回帰線(ミラー)、裸のランチ(ウィリアム・バロウズ)、サンクチュアリ(ウィリアム・フォークナー)、千年の愉楽(中上健次)

    「官能の深淵」:
    鍵・瘋癲老人日記(谷崎潤一郎)、眠れる美女(川端康成)、ロリータ(ウラジミール・ナボコフ)、幼児狩り(河野多恵子)、芋虫(江戸川乱歩)

    「背徳と倒錯」:
    悪徳の栄え(サド)、眼球譚(ジョルジュ・バタイユ)、家畜人ヤプー(沼正三)、ブレストの乱暴者(ジャン・ジュネ)、マルドロールの歌(ロートレアモン)

  • 2005年刊。背徳・自死・性と官能・暴力・異形。人間の深遠には「毒」というべき不定形なものが存在し、活字媒体は、この不可視で不定形なものをこれまで著してきていた。著者は慎重に、かかる書を「毒書」として「読むな」と評するが、それこそが著者の心憎い「罠」であり、ダメだと言われれば読みたくなるという浅はかな人間心理のツボをつくものだ。本書は、決して綺麗ごとでない人間の深遠を垣間見せる書を紹介するもので、本書紹介の「死の棘」「家畜人ヤプー」はまさにそれと実感できるもの。著者は東大大学院総合文化研究科教授。

  • ブクログで紹介しておきながら、そして評価を星5つにしておきながら、安易に人に薦めるのが憚られる本。それほど恐ろしい本だった。それは、単に紹介されている本の内容が「エログロ」だからとか「風紀紊乱を助長するおそれがある」からとか、そういうレベルで怖いのではない。優れた文学というのは、人が信じて疑わない「社会の正統性」や「人間の在り方」といったものを相対化する効力をおしなべて持つものだが、本書は社会的タブーの最たるもの、つまり、生と死・秩序・アイデンティティー・性と暴力といった、一線を踏み越えると社会から抹殺される、もしくは精神が耐え切れず発狂してしまうようなテーマを扱った、危険な書物ばかりを紹介しているからである。

    それでもまだ、第一章「死の誘惑」・第二章「異界の迷宮」・第三章「揺らぐ自我」までは、比較的安穏と読んでいられるが、ところどころに恐怖の落とし穴が仕掛けられているので要注意。例えば、第二章の最初に紹介されている、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』が、世の中の分類・秩序を否定するアナーキー状態を表現しているという分析はまだ面白半分にも読めるだろう。だが、その次の次で紹介されているカフカ『審判』の戦慄といったら!自分の知らない罪によって裁かれるというシチュエーションは、想像するだに恐ろしい。そして、「人間は罪があるから罰せられるのではなく、逆に罰せられるから罪がある」という筆者の言葉は、極めて本質的である。第三章でとりあげられているランボー『地獄の季節』の衝撃もなかなかのもので、確かにその驚異的な詩世界は、彼が何百年に一人かの天才だということを示している。だが、それは本書の中ではコーヒーブレイクのようなもので、読者はここでつかの間の安らぎを得ることができる。

    その後の第四章「迷走する狂気」・第五章「性と暴力」では、麻薬中毒者のおぞましい幻想世界や戦争という極限状態での想像を絶した経験など、個人や集団が生む狂気の極致を仮借なく描いている作品ばかりがとりあげられており、繊細な読者だとこの辺で具合が悪くなる。その中でも三島由紀夫『金閣寺』の、世間でもっとも普遍的な価値の一つである「美」に深い憎しみを抱き、「美」の象徴たる「金閣寺」を全焼させるに至った主人公の思考と行動には、自分の足元が崩れるような感じがして、背筋が寒くなった。

    第六章「官能の深淵」では、洗練されたエログロとでも言えばいいのか、フェティシズムとかロリコンとか、普通に読むと「気持ち悪い」描写が多い。それらも、人間のタブーに挑戦しているから感じる気持ち悪さなのだ。

    第七章「背徳と倒錯」は、社会的タブーを最も先鋭的に描き出している、いわば文学の極北とでもいえる小説ばかりがとりあげられており、「読んではいけない」の最右翼である。特に、サド『悪徳の栄え』とバタイユ『眼球譚』はあまりにエグく、正直あらすじでさえまともに読んでいられなかった。読んでいる途中に眩暈を感じたほどである。前者は、善を軽蔑し悪を称揚するという、人間が決して踏み越えてはいけない最大級の価値の転倒を目論んでいるし、後者は、人間が価値を感じるものすべてを冒涜する究極の背徳を物語にしていて、酸鼻を極める。これらの本に万一シンパシーを感じて、何らかの行動を起こしてしまったら、人生が崩壊しかねないと真面目に忠告しておく。

    さすがはフランス文学、特にロートレアモンの研究家として名高く、現在は東大の教養学部長を務められている石井洋二郎氏のナビゲート、文学の意義と底知れぬ恐怖を味わえる、貴重なブックガイドである。ただしあまりにドラスティックな内容のため、万人には薦められないので、文学がどういうものなのか知りたいけれど、本書を読むのは怖い、という向きには、許光俊『世界最高の日本文学』(光文社新書、2005年)を推薦したいと思う。

  • なにげなく読んでいた本もあったが、危ない本だったかもしれないと思わせられる。

  • ここに出ている本は全て名作。太宰、ニーチェ、カフカなど。このくらいで人生狂ったりはしない。安直なタイトルに騙されてはいけない。

  • 朝日新聞の書評記事で見かけて、気になって読んでみました。
    だって、「人生を狂わせる読んではいけない本」「読まれる方はくれぐれも自己責任で・・・」
    って、そんなこと言われたら、余計に読みたくなるじゃない!

    紹介されている本のうち、読んだことがあったのはわずか7作。ほとんどが未知のものでした。
    読んだら、どうなっちゃうのかしら?
    うーん。読んでみたい・・・。
    すっかり作戦にハマっちゃってるみたいです(汗)

    * * * * *

    「死の誘惑」:人間失格(太宰治)、若きウェルテルの悩み(ゲーテ)、二十歳のエチュード(原口銃三)、孤独な散歩者の夢想(ルソー)、ヴェニスに死す(トーマス・マン)
    「異界の迷宮」:不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)、砂の女(阿部公房)、審判(カフカ)、死霊(埴谷雄高)、ドグラ・マグラ(夢野久作)
    「揺らぐ自我」:地獄の季節(ランボー)、マルテの手記(リルケ)、無知の涙(永山則夫)、地下室の手記(ドストエフスキー)、ツァラトゥストラ(ニーチェ)
    「迷走する狂気」:死の棘(島尾敏雄)、金閣寺(三島由紀夫)、わが闘争(ヒトラー)、野火(大岡昇平)、夜の果てへの旅(ルイ=フェルディナン・セリーヌ)
    「性と暴力」:われらの時代(大江健三郎)、北回帰線(ミラー)、裸のランチ(ウィリアム・バロウズ)、サンクチュアリ(ウィリアム・フォークナー)、千年の愉楽(中上健次)
    「官能の深淵」:鍵・瘋癲老人日記(谷崎潤一郎)、眠れる美女(川端康成)、ロリータ(ウラジミール・ナボコフ)、幼児狩り(河野多恵子)、芋虫(江戸川乱歩)
    「背徳と倒錯」:悪徳の栄え(サド)、眼球譚(ジョルジュ・バタイユ)、家畜人ヤプー(沼正三)、ブレストの乱暴者(ジャン・ジュネ)、マルドロールの歌(ロートレアモン)

  • うーん。読んだことがあるのは紹介されている本の3分の1。いいのやら、わるいのやら。

  • 川端、谷崎、大江あたりを読まねば。

  • 自己責任で「読んではいけない本」を読みたい。あたしの自我は崩壊するかもしれない

  • これに載ってる本の半分以上を読んだことがある人はお友達になりましょう。

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毒書案内の作品紹介

『人間失格』『不思議の国のアリス』『ロリータ』…。名著と言われている作品は読者を「異常の世界」へ引き込む危険な本だった!東大教授が35冊の名作をとりあげ、そのアブなさを徹底解説。

毒書案内はこんな本です

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