教育の完全自由化宣言! (人間性教育学シリーズ)

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著者 : 天外伺朗
  • 飛鳥新社 (2007年12月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870318359

教育の完全自由化宣言! (人間性教育学シリーズ)の感想・レビュー・書評

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  • 大脳新皮質シンドローム
    古い脳の抑圧が極端で、新皮質が支配的になると、
    表面的な論理と本質をはずれた言葉が空回りして、
    やることなすことぎこちなくなる。
    これで社会の病理的な様々な現象を説明できる。


    ペーパーテストでいくら大脳新皮質を鍛えても、
    人間性が向上するものではない。
    単に言語と論理を空回りさせて、うまく立ち回れる人間を育てているにすぎない。

    画期的な大プロジェクトをやる際は、優秀な社員を集めるのではなく、不良社員を探し出して全てを任せてしまうのが成功のコツ。

    一般的に、左脳右脳の役割分担はよく知られているが、これはいずれも大脳新皮質における意識レベルの思考であり、
    実際には情動や直感は無意識レベルの比重が大きいため、
    爬虫類時代までに進化した古い脳の関与がはるかに大きいと推定される。

    いじめにみられる生け贄の儀式は人類がほ乳類に進化する遥か以前から、抑圧的状況の中で自らの精神を安定させる為に獲得した行動様式と推定される。



    新技術というのは、技術開発のフェーズだけでなく、発売してから会社を挙げて何年も何年も歯を食いしばってプロモーションに取り組まないとビジネスの柱には育たない。
    CDも何年も何年も赤字が続いた。そして、大赤字を覚悟で初期のモデルの3分の1以下の廉価版を発売して初めて普及にはずみがついた。この時の方法論、すなわち、大赤字を覚悟で安い機器を売り、システムの普及をはかってから収益につなげていく大戦略は、その後のプレイステーションでも受け継がれている。
    テープレコーダーに至っては、何年も商売にならず、全社一丸となって学校教育という市場を開拓してようやく日の目をみた。

    ソニー凋落の原因は成果主義の導入。これも人間や組織が合理的な存在だという錯覚の上に成立している「大脳新皮質シンドローム」。


    日本の単位人口あたりの刑務所の収容人数は、アメリカの15分の1。20代の凶悪犯罪は、1950年代に比して数分の一に激減している。

    劣等感と優越感は心理学的には同じものであり、優越感は劣等感の代償作用である。

    一般に人間は他人の評価、社会や集団による評価によって
    自分の位置づけが決まり、自己イメージが決まる。
    自己の存在意義、人生の目的などもそれに左右される。
    このような借り物の自己イメージの中で発達した自我は自分自身の身体性や情動とも切り離されている。
    そこから首尾よく脱出し、身体性や情動を統合し、深いレベルの本質的な自分自身に接地し、自分は本当に何を感じ、
    何を求めているかが実感できるようになると、人は絶対的な存在感の確立の方向へと進んでいける。
    それをさらに深めていくと、やがて母なる大地、大自然、あるいは宇宙との一体感といった極めてスピリチュアルな感覚に繋がっていく。

    ディープグラウンディングを深めるためには、先ず自分自身の内なる欲求に従って、しっかりと外界(宇宙)に働きかけ、その結果をごまかすことなくちゃんと受け取る事が必要。
    それを数限りなく繰り返す事で少しづつ深まっていく。


    科学というのは未知という巨大な平面に、既知をくくった円を描いているようなもの。科学が進むと既知の円はどんどん大きくなるが、円が大きくなると、未知と接している円周もまた長くなっていく。神秘としか言いようが無い科学では説明できない現象がみえてくる。


    300万年の人類の進化の歴史の中で、言語の原形が出現するのは約10万年前。つまり、言語以前の基礎的な知能の進化に97%の時間を費やしている。従い、言語処理や論理操作のみで人間の知能を定義する事は基本的に誤りだと結論できる。

    「認識」について、膨大な数の記憶パターンは目や頭や身体の動きをちゃんと計算して、この次にはこんなパターンが見えるはずだという次の瞬間の予測データを次々に提供し、入力情報と常に参照されている。そして継続的に予測が的中すると、引き込みという現象が起き、入力情報がその記憶パターンにロックされる。一度引き込まれると、誤差がかなり大きくなるまでロックは解除されない。これが一般に「認識」と呼ばれるプロセスである。

    脳科学的には「何かが見える」事と「実体がそこに存在する」事はイコールではない。物体が存在しようがしまいが、引き込みが起き、ロックがかかり、認識というプロセスが完了すれば本当に見える。見えている記憶パターンは、精密な時系列的な予測データなので、頭を動かせばそれをちゃんと計算して視覚像は変化する。あたかもその空間に実際に物体が存在するように立体的に見えるのだ。

    この精錬で巧妙なメカニズムの為に、人間は本来観察すべき時にも省エネ計算で間に合わせてしまう事が多い。頭の中の計算処理だけで済ませてしまう。
    つまり、自分の持っている固有のパターン、固定観念、常識などを超えて発想する事が極めて難しい。独創性のある人が少ないのはそのためだ。

    人間のニューロンの演算速度は約5ミリ秒、1秒に200回ほど演算できるが、コンピューターは百億回でき、人間より1億倍早い。この遅さでできる事は戦略的な情報処理のみ。
    残りのあらゆる運動は辺縁系や小脳によって行われている。
    つまり、運動能力の高い人というのは新皮質が運動にちょっかいを出すのを上手に抑制できる人の事。

    セルフ1は新皮質による論理的で理性的な価値判断。
    セルフ2は古い脳による情動を伴った直感的な価値判断。
    セルフ2の古い脳による直感的な価値判断は、35億年の進化の歴史で獲得した目に見えない「宇宙の法則」がぎっしり詰まっており、セルフ1は数万年の歴史しかない論理操作が中心。
    本来の教育は、35億年分の進化の知恵をどうしたらいかんなく発揮できるかを学ぶ事。

    指令、命令を発すると、セルフ2は抑圧されてしまう。
    指令をしないマネジメントは、コーチングで教えているような単なる質問のテクニックで実現できない。重要な事は、マネジメントが人間として徳が高く、チームメンバーから圧倒的な尊敬と信頼を勝ち得ていなくてはならない。
    徳でチームをおさめ、メンバー一人一人のセルフ2を全面的に信頼するマネジメントスタイルを長老型マネジメントという。

    フロー理論のチクセントミハイは、ソニーの設立主旨書「自由闊達にして、愉快なる理想工場」を示し、「これがフローに入るコツだよ」と説いた。

    フロー状態の特徴
    1、行為に集中、没頭している。
    2、浮き浮きとした高揚感。
    3、雑念が殆どない。
    4、時間感覚の喪失。
    5、自分自身の感覚を喪失している。
    6、その場を支配している感覚。自分が有能である感覚。
    7、周囲との調和感、一体感。
    8、アイデアが湯水のように湧いてくる。
    9、どんな難問にもひるまなくなる。正面からぶつかって突破するか、脇道を見つけて解決する。
    10、きわめて短期間にすごい仕事を成し遂げる。
    11、運がよくなる。


    フローに入るための必要条件
    1、目標と能力がほどよくあっている
    2、状況を自分自身で完全にコントロールできる
    3、行為に対する明確で素早いフィードバックがある
    4、内発的動機に基づいて行動している


    給料や地位をぶらさげた成果主義では誰もフローに入れない。

    フロー経営というのは、その根本に経営者や従業員の「意識の成長、進化」を踏まえている。
    単に売上や利益があがり、規模が大きくなる経営ではなく、
    人間としての成長、進化、企業としてのあるべき姿が追求される。

    教育の基本は、意識の成長、進化を援助する事。

    国家主義教育学
    戦前は国民は天皇の臣民と定義され、宗教的枠組みの中で
    「すがる、すがらせる」というメンタリティーが誘導された。これは為政者にとって都合のよい人を育てる手段に過ぎない。社会が健全に進化する為には、大勢に流されず、自分の頭でしっかりと物事をとらえ、必要とあらば国の方針にしっかりと反対できる、為政者にとっては不快な人が育つ余裕が大事。

    人間の本質や深層心理を踏まえた上で教育を論じる事。
    画一的なものではなく、一人一人の多様性を尊重した教育へ変容させる事。


    ガードナーの多重知能
    1、言語的知能
    2、論理数学的知能
    3、音楽的知能
    4、身体運動的知能
    5、空間的知能
    6、対人的知能
    7、内省的知能
    8、博物的知能

    上記はペーパーテストでは測定不能。


    スピリチュアリティの教育
    35億年に及ぶ進化の知恵に到達するという事は、必ずしも今の科学では説明できない。人間の真(サイエンス)善(道徳)美(芸術)の源はこのスピリチュアリティである。

    人間は誰でも心の底のほうでは、自我を超えた絶対的な自然の力、あるいは宇宙のはからいに対するほのかな憧憬を必ず抱いている。その自然な感覚に基づいて、自分の言動や人生そのものを律する傾向をスピリチュアリティという。

    7つの提言
    1、教育の最も基本となるのは、「意識の成長、進化」をサポートする事。「ディープグラウンディング」をしっかり確立さえることが重要。教師自身もディープグラウンディングが確立できていなくてはいけない。

    2、人間の本質や深層心理をしっかりと踏まえた上で、
    教育システムを設計すること。

    3、知識だけを切り離して無理矢理頭に詰め込むものではなく、自らの行動を通じて身体性、情動、感動を伴った把握を心がける。

    4、フローに入る事を大切にする。

    5、自ら学び、自らを正し、自ら成長する力をしっかりと持っている事を全面的に信頼した教育。

    6、自由に教育内容が選べるようにする。一人一人の人間性や個性を重視する。

    7、人間の真善美の源であるスピリチュアリティを大切にする。

    モンテッソーリ教育学
    1、適切な環境と雰囲気が整えば、ひとつの作業に集中的に取り組む事(フロー)がある。

    2、集中が妨げられずに作業が完遂できると、子供は深い満足感が得られ、劇的に態度が変わる。これを「正常化」という。

    3、子供がみんな「正常化」を達成すると、先生は不要になる。集団としての秩序が保たれ、他の子供の邪魔をすることなく、深い共感、愛情、好意を保って相互援助に満たされた
    連帯意識による社会が自然発生的に成立する。指示命令では不可能。

    4、集中が起きる為には子供たちに完全な自由を与えなくてはならない。つまり、いつ、どこで、なにに取り組むかに関して、一切を子供の自主選択に委ねる。子供の居場所を束縛してはならない。結果として、様々な年齢の子供が同じ場所で学ぶのが自然な状態になり、お互いにいい影響を及ぼすようになる。

    5、子供に指示命令する事は御法度。
    同様に間違いを訂正する事もほめる事も集中の妨害になる。

    6、子供は集中に達すると「内的動機」が満足するまで、
    何度でも同じ作業を繰り返す。その途中で妨害が入ると、意識的に悪い事をして鬱憤をはらす。それがたびたび起きると行儀が悪く、気まぐれで不注意で、不機嫌な子供が育つ。
    それに対して罰則で対処すると非行に走る。
    教育の場に規律の欠如や無秩序が観察されたら、その原因は大人の側にあり、子供に責任はない。
    指導者がどこかで子供を奴隷として扱ってないか疑った方がいい。

    7、大人であっても決断力や忍耐力が欠如していたり、怠惰、優柔不断な性格で、恐怖や不安を抱いている人は、子供時代にひんぱんに集中の妨害を受けていた可能性が高い。

    8、子供は自らを成長、発達させ、自己形成を遂げようとする強力な力と衝動を内側に秘めている。

    9、その成長のエネルギーは特定の領域毎に特定の期間だけ強くなる。
    その期間を敏感期という。
    (最新の発達心理学では、領域特定的な学習の枠組みをモジュールと呼び、空間、物理、心理、生物、数、音楽、言語などのモジュールが独立に存在する事が知られている。モジュールは成長の特定の期間にだけ現れ、それを臨海期と呼んでいる。モンテッソーリの説はそれを含むが、歩行などの運動機能も同列に扱っており、少し範囲が広い。また、敏感期における学習したいという強烈なエネルギーに着目している。)

    10、敏感期にその領域に取り組む事により、子供は集中に入りやすく、喜びとともに極めて容易に学習する。

    11、教育とは教える事ではない。子供たちの生命に対する援助だ。また、宇宙全体の成長、進化の偉大な計画が子供たちの内側に存在する事を知り、それを注意深く観察し、愛し、それに仕える事だ。


    シュタイナー教育学の要点
    1、教育の目的は、子供たちが「自由」を獲得する事。「自由」とは自分で自分をしっかりとらえ、自分の内部のもっとも深いところから発する欲求をしっかりと認識し、それに基づいて行動できるということ。

    2、教育は芸術だ。知識や技能を教え込むのではなく、
    単に知能を伸ばすのでもなく、子供のそれぞれの発育段階に応じた「心の糧」を与え、次の発育段階の準備をサポートする事。

    3、誕生から7歳までは模倣により学ぶ。子供は嫉妬や高慢といったような大人の内面的な精神状態までそっくり模倣する。教師や親は模範的存在であってほしい。この時期は「意思(決断力、行動力)」が育つ。この時期に知識を与えすぎたり、論理操作を訓練しすぎると「意思」が発達せず、弱い人間に育ってしまう。

    4、14歳までは愛する大人、尊敬する大人に従う、という形で学ぶ。教師はごく自然に権威ある存在になる必要がある。したがって、小学校入学から8年間は同一の教師が担任する。その最後の段階で、子供たちは教師の短所を発見し、
    あら捜しをし、権威性に疑いを持ち、反抗し、乗り越えて行く。この時期は豊かな感情が育つ。従って、全てを芸術のオブラートに包んで与える。

    5、14歳以降は教師を長所も短所もある人間として客観的に見る事ができるようになる。抽象的な思考操作の能力が発達し、知性が育つ。

    6、教科書は一切使わない。年齢毎に何を教えるかは大まかに決まっているが、カリキュラム、内容、方法は教師に任される。

    7、テストは一切行わない。保護者に対する通知は散文で記述。年度末にはそれぞれの生徒の長所と課題を歌い込んだ詩を渡す。その後1年に渡ってその子は皆の前でその詩を暗誦する。

    8、落ちこぼれの子には食事や運動の指導をする。例えば読み書きが苦手なら、肉、卵、小麦粉を減らし、野菜を増やす。それでもだめなら空腹で学ばせる。計算が苦手な子はオイリュトミー(宇宙と共感する踊り)や体操の体験を増やすようにする。

    9、エポック授業(毎日二時間ずつ、3,4週間連続で同一教科を学ぶ)で生徒が作成したエポックノートに教師が書き込みをし、子供や保護者とのコミュニケーションのツールにする。

    10、従来の教育は、知識を一度だけ教えた後はひたすらそれを忘れないようにすることが求められるがこれは間違い。
    繰り返しが数多く行われ、子供がそれを正しいと思えた時に、初めて感情や意思に働きかけられる。知識そのものに意味があるのではなく、忘れる事がとても大切。忘れた時に初めてそれが深層意識に定着し、生命と融合するのだ。

    12、子供たちが悪巧みをして集団で悪質ないたずらに走り始めたら最高の教師でも止められない。処罰は子どもに恐怖心を与えるので厳禁。リーダー的な子どもを含めて数人で話し合い、判断を押し付けずに感情に訴える。

    13、ペンタトニック(ソラドレミの5音)の笛やライア(小型のハープ)、オイリュトミー、フォルメン(線画)、にじみ絵などの芸術的要素をすべての教科に生かす。

    14、校長はおらず、一人一人の教師が全権を担う。
    教師の給料は必要なだけ。生徒の授業料は払えるだけ。





    ニイル教育学
    創造力は無意識に属する。その発揮には自由が必要。



    人間性教育学のルーツ
    ジャンジャックルソー
    それまでの教育は国家や社会の為に尽くす人材作り。(国家主義教育学)


    国家主義教育学
    16世紀のフランシスベーコンは「知は力」の発想の下に教育学を構築。一時期、彼の秘書を務めたトーマスホッブスは教育を国家の強化の為の手段と位置づけ、「教育は国家の重要な道具であり、国家は教育の期間と体系を定めて子どもを教育すべき」と説いた。この流れをくんだのが18世紀のフィヒテ。ナポレオン占領下のベルリンで激しい愛国主義に
    駆られて教育学を練り上げた。これがその後各国で導入される。

    問題は、この国家主義教育学があまりに長く継続したため、それが本来の教育と信じ込み、それ以外の教育があるとは
    信じようともしない人があまりに多い事。

    長老型マネジメントとは、それができるレベルに成長する為の意識の成長、進化の目標である。

    過去の日本の繁栄は、善良で勤勉で国や企業の発展に献身的に貢献する人に支えられてきた。
    そういう人達を大量生産できたのが今の教育学。
    だが、これは同時に個性や独創性に乏しく、自分自身の考えが希薄で一つの方向に向かって元気よく走り出す洗脳された戦士である。

    Educationの語源は、educatio(引き出す)である。

  • こんなに書いてあることに共感し納得した本は他にない。何度でも読み返したい本。教育の本当の目的は何かを考えさせられる。

  • 現代日本の教育制度が、如何に効率が悪く、人としての成長を阻害しているのかがよく分かる。
    一刻も早く改革すべき。

  • 著者が文科省で講演したと聞いてはじめはなぜ?と思いながら読み進めたが、画一的な授業を子どもたちが受動的に受ける教育の現状の問題点を指摘しながら、「教育の完全自由化ー学習指導要領、標準カリキュラム、教科書けんてい、教員免許、教育委員会などを全廃する」という結論にいたりなるほど。公教育の解体、市場に委ねるという主張において、規制緩和論、小さな政府論と重なるわけかと納得。
    様々な教育論を概観させてくれる点は興味深く読んだけど、『完全自由化』が指摘する問題群を解決する処方箋となるという結論には大きな飛躍があると感じる。

  • 2013-9-19 のぶぅさんお勧め

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