「ゴミ屋敷奮闘記」

著者 :
  • 有峰書店新社
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本棚登録 : 65
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870452770

作品紹介・あらすじ

著者が2年間、ゴミ屋敷専門のお掃除業者『孫の手』で働いて見えてきたゴミ屋敷のリアル。

感想・レビュー・書評

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  •  ゴミ屋敷と言っても100人いれば100通りのゴミ屋敷があり、個性豊かですごく面白い。特に蟻地獄のようなすり鉢状になったゴミに囲まれて暮らしていた話が印象深い。本を読んでいて、おそらく仕事場で借りている格安アパートの斜め下がゴミ屋敷化していることに気づいた。アパート経営には憧れがあったのだけど怖くなる。物を集める癖がなくて本当によかった。

  • 文章を読んでいるだけで顔が歪みそうになる良いルポタージュ。
    白黒の写真でもダメな人はダメであろう室内の様子をしっかり記している。

  • ライターがゴミ屋敷清掃会社で働いてみた体験記。本の趣旨とは関係ないが、取材先で働きながらルポするというスタイルは、ライターの働き方としておもしろいかもしれない。

    それはともかく、ここで紹介されている事例はどれもすさまじい。自分もそんなに整理整頓してる訳じゃないが、毎週ゴミ捨ててるし掃除もしている。こうじゃなくて良かった。しかし将来絶対こうならないとは言えない。ボケたら、いやボケなくてもこうなる可能性はある。

    この本とは別の会社が清掃の様子をyoutubeにアップロードした動画も見てみた。それはそれですさまじいし興味深いが、この本の場合、文章からゴミの様子を想像するおもしろさがある。欲を言えば、ごみ屋敷に住む依頼人の人生に少し突っ込んだインタビューも読んでみたかった。ゴミがなくなるのが少しさみしい、という言葉が印象的。少しだけわかるような気もする。

    社会的孤立の問題がこういう形で表れる、というのは他人事でないが興味深い。本書で書いてある通り、地域社会が機能していたら、誰かと一緒に住んでいたらこういう事態にはなりにくいだろう。人は家をゴミ屋敷にできるほど自由で孤独になってしまった。それにしてもゴミの山からオナホを発掘されちゃうのは嫌すぎる。

  • ゴミ屋敷というテーマである点、現場の写真が多数ある点から、綺麗好きや潔癖症の方にはおすすめはできない。

    ゴミ屋敷について外から批判するわけでも、一度の取材で終わらせてしまうわけでもなく、実際に給料をもらって、働きながら取材していくのは、日々アングラな場所へ飛び込んでいるライターならではの発想だと感じた。

    ゴミ屋敷という重たいテーマだが、ふわりとした筆者の毒や小ボケのおかげでスムーズに読めた。

    たくさんの現場を少しずつ載せる形式だったが、個人的には1つの現場にフォーカスしたもっと濃厚なものを読んでみたいと思った。

  • ライターである著者がゴミ屋敷専門のお掃除屋さん『孫の手』にアルバイトとして入社し、実際にゴミ屋敷の清掃を行うルポルタージュ。
    実にさまざまなゴミ屋敷が登場し、写真も多く掲載されている(これを喜んで見る人は少ないだろうが…)。
    最近は多くの特殊清掃系の会社があるが、この「孫の手」の特徴は分割払いを認め、アフターケアもしてくれるという点。時には「お母さん」(社長の奥さん)に「どうしてそうなっちゃったの!」「ちゃんとしなさい!」とお説教されることもある。普段の私なら、仕事でやっているのだから粛々と清掃だけすれば良いのに…余計なお世話だろう…という感想を抱きがちだが、後半の章で述べられる社長夫妻がなぜゴミ屋敷専門の清掃業者を始めたのかのいきさつなどを読み、また酷いゴミ屋敷の惨状をいくつも見せられると、お説教もやむなしか…と思ってしまった。それに、意外にもそれにより依頼を断られたことはないという。
    世の中にはどうしても片付けのできない人もいて、死ぬほど悩んでいることもあることを知った。そうした人たちやまたそうした店子を抱えてしまった大家さんにとって、「孫の手」はまさに救いの手であるだろう。

  • ゴミ屋敷の片付け業のアルバイトを実体験して語るゴミ屋敷の実態

  •  ライター・イラストレーター・マンガ家の著者が、ゴミ屋敷専門の清掃業者「孫の手」で2年間(取材を兼ねて)働いた体験をまとめたルポ。
     著者は「らむ」という可愛らしいペンネームだが、クマっぽい容姿のおじさんである(ちなみに、「村田らむ」は回文)。

     読んでも何のためにもならない本だし、感動できるという内容でもない。しかし、読み始めると異様な迫力に引き込まれ、最後まで一気読みせずにいられない。

     ゴミ屋敷専門といっても、「孫の手」はマンション等の汚部屋を手がけることが多い(たまには一戸建てもある)。また、部屋の住人に清掃に立ち会わせることを基本としている(捨てるものと残すものの判別をさせるためであり、「掃除のやり方を覚えてほしい」という教育的意味合いでもある)。
     その2つの特徴が、本書に類書にはない独特の味わいを与えている。

     それは、「えっ? こんな人が自分の部屋をゴミ屋敷にしちゃうの?」という意外性であり、清掃に立ち会う部屋の主とのやりとりの面白さだ。
     
     清掃した部屋の写真も随所に載せられており、それらの写真だけでも一見の価値がある。
     天井まで届く勢いで部屋を占領したゴミの山、トイレがわりに小便を入れた(ゲーム廃人がゲームをしながら小便するらしい)ペットボトルの山、一人暮らしの男の部屋から発掘されたトラック一杯のエロマンガ……。いやはや、すさまじい。いわゆる「汚部屋」のイメージをはるかに超えたゴミ屋敷の事例が、次々と登場する。

     テレビのニュース番組で取り上げるゴミ屋敷の住人には心を病んでいる人が多いのだろうが(だから、笑いものにするような取り上げ方には問題があると思う)、本書に登場するゴミ部屋の主の多くはフツーの人だ。

     フツーに会社勤めをしていて、街で会ってもゴミ部屋の主だなどとはとても思えないタイプ。意外に女性も多く、びっくりするような美人もいるという。
     しかし、部屋はすごいことになっている。そういう人たちが、なんらかの事情(工事業者を部屋に入れないといけないとか)で部屋を掃除する必要に迫られる。だが、自分の力ではとてもできないため、やむなく業者に頼むのだ。

     ゴミ部屋の主の一人は、著者たちにこう言いわけをしたという。

    「ゴミがある程度の高さになったらそこにカーペットを敷いて、その上にまた机とかを買い揃えて生活してたんです。三段目がゴミで埋まってしまって、もうこれ以上はさすがに生活スペースが取れなくなってしまいました」

     ううむ……。感覚のどこかがぶっこわれている。普通に会社員として生活していても、やはりある種の病理を抱えたタイプがゴミ部屋の主となるのだろう。

     ゴミ部屋の主になるきっかけには、失恋も多いという。

    《失恋のショックから落ち込んで荒れた生活を続けるうちに、ゴミ屋敷に。一人では片付けられないレベルになって、そのまま放置……というパターンだ。》

     また、ヤンキーっぽい人からの清掃依頼はほとんどなく、「男女問わず、どちらかといえばオタクな人のゴミ屋敷清掃依頼は多い」とか。
     ヤンキー・タイプは部屋に異性を呼ぶから、キレイにしておく必然性がある。それに対し、部屋に人を入れず、趣味の品をどんどん増やしていくオタク・タイプは、部屋を「巣」にしてしまいがちなわけだ。

     「奇書」ではあるが、人の営みの底知れぬ深淵を覗き込むような面白い本。

  • 前半は、興味本位で読む「下世話な本」という感じだが、後半の社長夫婦のインタビュー、筆者の感想が良かった。ゴミ屋敷住民は何らかの精神的問題を抱えており、社長夫婦がもちろん商売ではあるのだが、住民が根本的な問題を解決できるように励ましているのが印象的だった。

  • ゴミ屋敷専門の片付け業者にアルバイトとして働き体験記
    ゴミ屋敷になる原因はいろいろ
    若い女性も意外と多いようだ

  • ごみ屋敷を清掃する業者に潜入した著者のルポである。この本を読んで思ったことは、中の写真がカラーではなくて良かったことである。洋式トイレに盛られた大便や、ゴキブリの死骸や糞の跡、ペットボトルに入った小便など、カラー写真だったら心理的な負担が大きいが白黒だから何とか見ることができた。写真でもそう思うのだから実際にその現場で清掃する人たちには頭がさがる。しかもこのようなごみ屋敷にしてしまう人は、男女ともにおり、かわいい女性やエリートOLなども依頼主にいるというから、人は見かけによらないものである。

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著者プロフィール

1972年生まれ。名古屋出身。ライター・イラストレーター・漫画家。ホームレス、ゴミ屋敷、青木ヶ原樹海などアンダーグラウンド取材が得意。『樹海考』『人怖』『ホームレス大博覧会』など著書多数

「2022年 『東京の怖い街』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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