- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784871541541
感想・レビュー・書評
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84年に書かれたフェミニズム理論。
著者のベル・フックスは黒人であり、そのことはこの本の主張でとても重要と思われる。
フェミニズム運動と人種差別は関係ないのか。そんなことはない。白人女性のフェミニズム運動が陥っている問題に触れながら、フェミニズムが決して男女間だけの差別を取り扱うものではないことを示していく。男女間の支配構造をなくすのではなく、あらゆる支配構造をなくすことを目指すのがフェミニズム運動なのだと感じた。
フェミニズムを誤解している人こそ読んでほしい一冊。 -
ジェンダーについて考えるにあたって、参考図書として、読んでみる。
原著の出版は1984年。フェミニズムが、女性差別ということにフォーカスする一方で、人種差別、資本主義における階級差別という問題を切り離したものになっているという伝統的(?)な「ブルジョワ階級的」フェミニズムに対する批判。
男性中心社会を批判するあまり、結果として、男性中心社会の論理を強化することになったり、女性の共感が低下していったり、男性を嫌悪するあまり、リズビアンじゃないフェミニストは居心地が悪くなったり。。。。
こうした批判が現時点でも意味のあるものかどうかはわからないけど、ここでの議論はとてもよくわかる。いろいろなところで似たことが起きているな〜と。
なんらかの客観的事実というより、社会を変えていくための運動としてのフェミニズム。
客観的事実というものがないなら、それは政治的な意図をもったアクション・リサーチ的なものになるんだな〜。なんとなく社会構成主義に通じる議論だなと思った。
そういえば、最近、ヴァージニア・ウルフの作品をすこしづつ読んでいるのだけど、彼女の主張とか、ここで批判の対象となっているブルジョワ・フェミニズム以外のなにものでもないな〜。
が、ウルフの本を読んでいる時には、なるほどと納得しちゃうんだよね。それなりに。。。
まだまだ、この問題については、わたしは、素人だな〜と思った。 -
実はきちんとフェミニズムの本を読んだことがなかった。私がしばらくフェミニズムから離れた理由(日々を暮らすことで手一杯、何も実践できないという申し訳なさ)と、その間に気づいたことに近いことが書いてあり納得。
3章 シスターフッド、4章 男性、5章 パワーは特に。黒人女性からの目線なので、若干日本の事情への読み替えが必要だけど、大枠の構造は変わらない。
フェミニズムの目指すものは性差別主義的な社会を変えていくこと。
そのために必要なことは何か?教育と富を持つ「階級」の女性だけが得られる、男性との経済的・社会的な平等?それで社会は変わった?(違う)男性を敵にするだけで変わった?(違う)
フェミニズムもその担い手も70年代80年代のフェミニズムからは変わる必要がある、フェミニズムの担い手は「女性」に限らない、なぜならば…という内容。
30年前に書かれたものなので、書かれた通りにゆっくり動きつつある分野(教育や子育て)もあるし、まったくそうでなく今現在に当てはまる状況もある。例えはTwitterのトランス排除とか。(トランス差別の自称フェミニストが書いてることは真っ向からきっちり批判されている。)
迷った時には何度も立ち返りたい。
ただ、経済に関してだけは、私はずっとフェミニズムを恨んでいる。
私は資本論もちゃんと読んでないので(だから余計に)、搾取される労働者と搾取する資本家の「二元論」のなかで、搾取される側としてしか自分を位置付けられず、経済に無知で不利な人生を生きてきた。
その辺もとても「フェミニズム」っぽい。
経済についての捉え方も、フェミニズムが乗り越えないといけない領域の一つだと思う。(そういう理論の提唱もあるのかもしれない。経済にも経済学にも「女性」はどんどん立ち入って男性優位=合理的な人間像を上書きすべき。)
経済や経済学はあくまでも道具でしかない。教育の話で識字が出てくるのと近い。
経済学や会計など、道具の使い方を知ると、資本家や経営者を評価する側になれる。それを使って自分の要求を通したり相手の要求をはねのけたりすることもできる。しかもこれは非営利の場合でも有効なツールで、行動経済学や開発経済学は女性のエンパワメントを助けたりもしている。この道具は破壊すべき対象ではなく、階級を破壊するために使える道具。道具に誰かを抑圧したいという支配欲などない。
そして、余談。
やはり最近のアメリカのドラマがこの辺りのフェミニズムを踏まえてるなと思った。
『ゲームオブスローンズ 』は「パワー」と「暴力」、『ハンドメイズテイル』は「シスターフッド」と「パワー」、『ウェストワールド』は「男性」と「パワー」「暴力」。