自然のレッスン

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 462
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872335804

感想・レビュー・書評

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  • ある人に5年前くらいに頂いて、今回IARC文庫に寄付する前に再読。アラスカにここ数年住み、極寒の環境の中で住むネイティブの村を何度となく訪れた後で、この本を読むと、この本は「自然のレッスン」というよりも、「ヒッビー入門」というタイトルの方がしっくりくる気がしました。この本の著者である北山氏は”人間はなるべく自然に寄り添って自然の中で自然の産み出すものを食して生きるべきだ”という主張をされていると思う。たぶん、こういう考え方は東京などの都会に住んでいるとすんなりと賛同し易いのだと思います。しかし、僕が思うのは、人間は自然の脅威から逃れ、安心・安定してより長生きをし、末永く子孫を残して繁栄していく道を選んできたのであり、その歴史を否定して自然に戻れというのは、あまりにも安直すぎる思考ではないかと思います。人間が文明を作り発展してきたおかげで、人間はより人間らしく行きることができたのだと思うから、彼の世界の捉え方や、ひいては自然がなにをおいても第一であるというような他の人の考え方には、きちんとした理由を説明してもらえないと賛同できません。そして、この本の気に入らない部分は、詩の形式で読み易く書かれているのが特徴なようですが、その言葉が自分で考えたものなのか、どこかから引っ張ってきたものなのかの区別がきちんとされておらず、出典が明確でないこともあげられます。自分の考えを示しているのか、アメリカのネイティブインディアンの言葉を提示しているのか、どちらか非常に曖昧であるし、そういう曖昧なやり方だと、なんとなく直感的に良さそうだなという言葉を詩(ここに提示されているのは文学的な意味の詩ではなく、ただの言葉の寄せ集めだと思うが)の形で読者に提示しているだけで、あとは読者自身が何かを感じて下さい、というのでは、あまりに投げやりなやり方だと感じました。そして、どうしても素直に理解できないのが、例えば「食べることと宇宙の愛はどうしようもなくひとつでありまたそうでなくてはならないものです」というようなことは、何となくそうかもしれないと思うけれども、漠然としすぎていて、もっときちんと”宇宙の愛”とは一体何なのか、食べることがどうして宇宙の愛と一つなのか、著者の考察を提示してもらわないことには、はぁ、そうっすか、、、という態度でしか受け取れないです。それから「まきを燃やすのがベストです。北国ならナラの木でもストーブでパチパチと燃やして。<中略>それらにひきかえ電気や電子レンジは最悪です。」とかそういう実用的なことも書かれているけど、まきを燃やすと煙が出て公害です。特に僕が住んでいるフェアバンクスでは、電気代や燃料代の節約でストーブでまきを燃やして暖をとる家庭が最近みられるようになってきたけど、その煙がフェアバンクスのダウンタウンに溜まって公害を巻き起こして問題になっています。なんでもかんでも昔のやり方がいいとは僕個人は全く思わないです。だから、なぜこういう風に考えるのか、こういう生き方がいいと思えるのかを、もっと掘り下げてきちんと説明してくれない限りは、著者の考えに納得できないです。この本を手に取る方々が、盲目的にこの本の内容を信じてほしくないです。

著者プロフィール

北山耕平(きたやま・こうへい):1949年神奈川県藤沢市生まれ。『WonderLand』(のち『宝島』と改称)創刊メンバー。1975-76 年『宝島』編集長。76年『POPEYE』創刊に参加後、渡米。同誌特派員としてアメリカ、ロサンゼルスに4年間滞在。70年代後半の西海岸で「ニューエイジ」の勃興に立ち会い、ローリング・サンダー(メディスンマン)と出会い、ネイティブアメリカンの精神を伝える。著書に、『自然のレッスン』『地球のレッスン』(太田出版、ちくま文庫)、『ネイティブ・マインド』(地湧社)、『雲のごとくリアルに[青雲編]』(スペースシャワーネットワーク)など、訳書に『虹の戦士』(ウィロヤ+ブラウン、太田出版)ほか多数。

「2022年 『北山耕平青春エッセイ集 抱きしめたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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